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今週の一本

●「作り過ぎない」が新潮流  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:09/07/07号)

より「ていねい」なモノづくりへ

売れない時代の事業戦略
 冷凍食品メーカーの間でいま「作り過ぎない」ことがキーワードとして注目され、様々な議論が沸き起こっている。冷凍食品が、方法はともかくとして、売れた時代の事業経営理論では通用しなくなったことを「作り過ぎない」は示唆している。

 冷凍食品はこれまで、生活様式の変化に合わせて、完全調理済、レンジ調理対応、あるいは小分けトレーなど次々に便利さを増したことに加え、技術の研讃に伴う品質レベルアップが進んだことで、消費者やユーザーの支持を広げ、需要を大きく伸ばしてきた。
 悪しき手法とたびたび指摘されながら、蔓延してきた値引き販売も、冷凍食品の市場拡大にはプラスに作用してきた。四割引き、五割引きを機に使ってみた消費者が冷凍食品を便利で価値のあるものだと認めれば、リピーターとなって冷食需要を広げる。
 こうした各社各層の努力の積み重ねにより、冷凍食品は1兆円産業にまで発展拡大してきた。しかし内情は、いずこも収益性に乏しく、それが業界再編を促す最大のきっかけにもなった。
 そこで、収益力を高めるため、メーカーはコストダウンに努めるとともに、生産効率を高めることを最重要課題と捉えてきた。
 1日10時間の稼働で2万個なら15時間動かし3万個作る。1分間40ショットなら、50、60ショットにアップして生産利益を生み出そうとしてきた。磐石な生産体制を背景に、他社より安く商品提供できたメーカーが、確かにこれまでは業界をリードし、いかに稼働率を高めるか、生産性を上げるかの競争が長年続いてきた。
 
無理無駄なくすためにも
 「その事業哲学が否定された」ことをニチレイフーズ、味の素冷凍食品は指摘する。
 きっかけは、相次いだ事故、事件であることは間違いないが、中には生産現場の「うっかりミス」が商品回収につながり、消費者の信頼を失うケースもあった。
 製造しただけ売れ、数量を伸ばすことが収益確保の近道だと、操業度と操業時間をいかに高めるかの競争をしてきた冷食業界が「作っても売れない」局面に立ち向かうことになった。これまでの経営理論なら工場で大量生産し、値引きで売上げを稼げば、工場の生産利益で何とか事業を継続できた。それが、天洋食品事件以降、安売りしても消費者が容易に冷凍食品を買わなくなった。 
 経営思想の根本からの革新が絶対に必要になってきた。生産量を増やすために、それが安全安心品質を担保する上で危険と知りながらも、資材・購買部門は原材料、資材類を「無理して」調達してきた。数量を「無理に」増やせば、実は製品ロス率も高まるため、廃棄処分も増えていた。
 しかし、食品資源の世界的な需給構造変化に伴い、食品原料は基本的にタイト。大事な原料を生産ミスで廃棄するわけにはいかない。しかも生産量の拡大は残業増加に結びつき、労務コスト高と深夜作業による製造ミスも生みだしていた。
 行き着くところは「作り過ぎ」たことから派生する無理無駄であり、製造ミスが多いという意味では品質的にも喜べない。
 求められるのは「売上げが伸びなくとも収益を確保する構造」に早く転換させること。
 「無理に作り過ぎない」ため、ニチレイFは工場長に計画以上の生産量を求めないことにした。作業を平準化させることで、製造ミスをなくし、廃棄ロスを減らし、クレームを半減することで、工場が生み出す製品の品質を高めようと意識の大変革を進めている。
 「ていねいなモノづくり」は味の素冷食も同じ。
 いまこそ製品の品質を高めれば消費者、市場の理解と共感を得て、新しい需要に結びつく、と両社は考えた。科学的根拠に基づく判断基準を示しながら、中国産品も正面から打ち出す。自営工場と管理原料による安心安全品質の担保力も相当高めた。
 70年代からの「売れない」長い時代を経て、2000年代に初めて「売れる」経験をした冷食業界。しかし「売れない」時代の技術の研讃と普及啓蒙努力があったから「売れる」時代を迎えた。再び「売れない」時代になったいま、改めて「ていねいなモノづくり」の原点に返れ、ということを「作り過ぎるな」のキーワードは教えてくれている。

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