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今週の一本

●大地震の教訓、工場立地の再考迫る  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:11/04/05号)

沿岸部より内陸部
大型より小型で分散化へ

被災地では支援活動が行なわれている
(写真は東京から石巻港に着き、
救援物資を陸揚げする
鯨類捕獲調査船「日新丸」)
 東日本大震災は冷凍食品業界にまだ大きな影響を残しつつも、復興に向けた動きが確実に始まっている。未曾有の災害は、冷凍食品産業のこれまでの“常識”を書き換えさせる強い力も示している。

 大震災で起きた様々な問題を機に、冷凍食品業界は多くのことを学び、それにより、業界がこれまで正しいと信じてきた常識は否定され、ビジネスモデルの書き換えを迫られている。
 水産加工工場は原料の集積地である港の近くに多くが立地し、水産資源に恵まれた東北の沿岸部に特に集中していた。しかし過去の教訓や常識を打ち破る大規模な津波が現実に押し寄せ、沿岸部の工場は軒並み大きな被害を受けた。
 原料の近くに工場を置くことはこれまでの常識。原料が近いほど工場は調達しやすく、物流コストも軽減できる。心理的にも水産工場は海に近い方が安心感がある。これが歴史的にも沿岸部に工場が多い背景。
 ところが、道路網が発達し、冷凍物流など品質管理技術が飛躍的に高まったいまでは、内陸部でも食品加工に問題はなく、災害リスクは沿岸部より少ない。
 大型生産拠点に集中するより、小型工場に分散すべきではないか、というリスク分散論も出始めている。
 また在庫を極力なくすという考えも震災で明らかに否定された。いま一番求められているのは安定供給であり、応えるためにはある程度の在庫が必要となる。
 生産性追求から安全安心に軸足が移り、いま再び事業モデルの見直しが迫られているのは間違いない。

地域との絆、無視できず

 では沿岸部の工場立地はリスクが大きいから内陸部に――と、簡単には切り換えられない事情もある。
 大被害を受けたマルハニチロ食品の石巻工場や日本水産の女川工場、ヤヨイ食品の気仙沼工場はいずれも地域を代表する大手企業。「あけぼのさん」と古くから市民に親しまれ、「ニチロ石巻」に勤務することは地元の誉れ。女川、気仙沼も同様に地域と工場のつながりが歴史的にも深い。
 従って、災害リスクを避けるという理由で土地を離れる選択は大変しづらい。加えて、工場を立て直すことで地域の復興を底支えするという地元からの期待も大きい。
 非常に難しい決断になることは間違いないが、リスク分散を考慮し、内陸型工場の整備を進めると同時に、沿岸部ではあっても、防災を再優先した設計で工場を同じ場所に再度立ち上げることになろう。それが家屋も家族も、仕事も失った従業員に対する企業の責任であり使命でもある。
 ただ、同じ沿岸部に再建する場合、コスト高は避けられないが、防潮対策など防災設備の強化は不可欠。

停電に弱かった全自動情報処理

 震災の発生直後の停電とその後の計画停電による混乱は、被災地だけでなく、関東の広い範囲でも冷凍食品業界に大きな影響を与えた。
 物流網の寸断、燃油不足と消費者の不安感なども加わり、関東を中心にモノ不足が深刻になったが、被災していない工場は操業を続け、冷凍倉庫には商品在庫があった。それでも商品を顧客に届けられなかった最大の理由はコンピュータによる情報処理が機能を失ってしまったため。
 冷凍倉庫では停電の間、庫内温度を保つため扉の開閉をストップしたが、「届けてくれ」という顧客の悲痛な求めに応えようとすれば、モノはあった。しかしコンピュータの出荷処理が止まり、1品も出すことはできなかった。
 全自動の機能を持たない地域卸店規模の冷凍倉庫は商品を取り出すことはできたが、計画停電で出荷伝票が発行されず、やはり商品供給は止まった。「懐中電灯を使って商品をピッキングしてみたが、暗くて仕事にならなかった」と北関東の業務用卸店は証言する。
 ここで活躍したのがベテラン社員。コンピュータ処理以前の手書き伝票処理を覚えていたベテランが若い社員に指示し、病院、高齢者施設など緊急性の高い顧客向けに商品を供給した。
 工場では操業を再開するところが増えているが、原料資材の調達難など新たな問題が起きている。そこで、包材対策として印字用プリンターが注目されている。プリント済包材でなくとも出荷できる商品はこれで細かな対応ができ、供給責任を果たせる。
 大災害は多くの新たな教訓を残し、事業モデルの進化、改革をいま求めている。

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