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今週の一本

●2013年の冷食業界、10年後のために「いま」  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:13/01/01号)

生産基盤を整え、次の飛躍準備を

海外市場攻略も大きな課題
(写真は仏「ピカール」と並んで欧州を代表
する英国の冷食専門店「アイスランド」)
 2013年(平成25年)の冷凍食品業界は10年後、20年後を見据えた事業戦略が一段と進む。

 メーカーは、大手を中心として、懸案となっている生産体制の再構築に本格的に取り組むとともに、販売、物流、あるいは商品提案の仕方にも改革のメスを入れ、10年後、20年後の市場に対応できる基盤構築を急ぐことになる。

 流通は大手を中心とした市場競争、シェア競争の中で、中小、地域卸が生き残りをかけて挑戦する構図が今年も続くと見られる。

 小売店、業務用ユーザーも変革の波に挑む姿は流通同様。さらに卸以上に過酷な競争を強いられているのが小売店、末端業務用ユーザーであり、価格、メニュー(品揃え)を含め、同業間の競争に勝ち残りをかけて立ち向かう。

工場の老朽化対応は急務

 わが国の冷凍食品工場はいずれも老朽化が進んでおり、工場のリニューアルは各社緊急課題となっている。

 わが国の冷凍食品メーカーは1970年代初期の、71年(昭和46年)、72年(同47年)に参入したところが非常に多く、各社の主力工場もその当時建設、竣工、操業開始したというケースが多い。

 有力メーカーの冷食事業開始時期を並べると、次の様になる。
 ▽アクリフーズ(旧雪印乳業として)昭和46年▽味の素冷凍食品(味の素)昭和47年▽キユーピー(三英食品販売)昭和46年▽ケイエス冷凍食品(ユニチカ三幸)昭和47年▽昭和冷凍食品(昭和産業)昭和48年▽日清フーズ(日清製粉)昭和47年▽日本製粉昭和48年▽不二製油昭和48年

 厳密にいえば、事業開始と工場竣工・操業開始時期には多少のずれがあるが、少なくとも70年代初期(昭和46、47年、48年)に多くの冷凍食品工場が立ち上がったことは間違いない。

 この70年代初頭の参入ラッシュ前から、ニチレイ、日水など水産大手会社とテーブルマーク(当時加ト吉)、日東ベスト(ベストフローズン)、ヤヨイ食品(弥生食品)など一部の有力メーカーは冷凍食品を手掛けていたが、それも事業開始からいまや40年以上の歴史を重ねていることは各社同様。

 40年の歳月がたてば、工場の立地環境も事業環境も大きく変わる。竣工当時は何もなかった工場周囲に住宅地が迫り、汚水処理、臭気対策が重要な仕事になった。省エネ、環境保全対策も不可欠。

 産地立脚が当然だった工場立地条件は消費地に近い方が有利に変わり、大震災の経験から、海辺を避ける、一極集中の生産体制はリスク分散のため複数工場に商品を振り分けるべし――など、工場に対する基本的認識を一変させる動きが次々に見えている。

中国に投資、国内は手薄

 設備投資の方向もこの40年間に大きく変わってきた。

 経済成長が続いていた70年代後半(昭和53年前後)からバブル崩壊までは、作れば売れるという冷凍食品のバラ色期。第2工場建設、ライン増設も相次いだ。

 しかしバブル崩壊と、米国に突き付けられた「内外格差是正」の圧力により、冷凍食品でも価格是正の動きが顕著に表れ始め、大幅なデフレ現象、値下げ要求につながった。

 値下げ要求に対応し、低価格化を実現する最大の力となったのが海外生産、特に人件費が安く、日本と同じような原材料が安く、潤沢に入手できた中国での生産拡大は必然だった。

 数千人もの若い労働力を工場に抱え、日本国内では不可能となった手作り生産を実現。安さ競争の中で、中国に対する日本の冷凍食品業界の投資が相次いだ。

 この20年もの間、メーカーはもちろん、中間流通も小売店・業務用ユーザーも中国など海外生産拠点に注目し、海外工場の重要性はますます高まった。設備投資も海外が優先され、どんどん作って日本に持ち帰ってどんどん売る、という事業構造が定着した。

 しかし、海外が注目された一方で、国内の工場は、天洋食品事件が表面化するまで注目されることなく、投資の優先順位も低かった。

生産環境、機器様変わり

最新の技術と工夫が求められる(写真は
味の素冷食のタイ・ABSとんかつライン)
 海外に注目し、海外工場に優先投資をしてきたこの20年間に、国内工場は老朽化が一段と進んだばかりでなく、冷凍食品生産拠点としての各種環境、条件も変わった。

 フロンの製造が中止される2020年までにノン・フロン化を進めなければならなくなったのは、変化の象徴的な例。

 中国など海外に目を奪われている間、日本の製造・加工技術は一段と進み、関連機器の性能は急激に向上した。バブル崩壊後、現在まで動きが続いている低価格化に対応し、コスト高が進む海外生産と、収益性の低下というリスクを埋めるため、メーカーは生産性向上と無駄をなくす生産体制の構築を急いでいるが、これをカバーしてくれるのが最新の機器類。

 多少の生産性改善は既存ラインでも頑張れば不可能ではないが、5〜6割の大幅アップを実現させるためには製造ラインの大改革、入れ替えと最新機器の導入が不可欠。あるメーカーでは「機械を修理しながらだましだまし回していたが、全部入れ替えたら5割アップになった」と証言する。

工場の新増設が相次ぐ

高生産・高収益をめざした未来型工場
(「やわらか若鶏から揚げ」をフル生産する
味の素冷食のアユタヤ新工場)
 昨年から今年にかけて、有力メーカーの冷食工場の新増設計画が相次いでいる。

 対象とした13社23工場のうち、10工場は海外案件だが、かつての海外工場ラッシュ時に比べれば、国内工場が注目されているのは明らか。海外は中国、タイが中心。現地の人件費高などコスト高の環境は厳しくなっているが、日本ではもはや作れない商品を中国、タイに頼るという構図、必然性と位置づけは変わらない。

 23工場のうち、チキンと冷凍野菜の工場が4つずつ。また年間生産能力が1万t級の大型工場が8工場と多い。海外10工場は日本向けを中心としながら、現地内販市場も視野に入れているのがこれまでと異なる動き。これ以外に、大震災で被災した三陸で工場の再建が進んでいる。

 さらに、マーケットは国内だけではなく、海外市場の深耕も大きな課題となってきた。

 天洋食品事件から5年。大震災から2年。様々な困難を乗り越えてきた冷凍食品業界。10年後、20年後を見据えた業界関係者の努力は2013年の今年も続く。

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