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今週の一本

●TPP大筋合意、水産業界への影響は  井出万寿男 (週刊水産タイムス:15/10/19号)

水産加工業、発効後に不安感

畜産品の台頭による「魚離れ」懸念

 大筋合意に至った環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)。これまで農林水産物・食品の中では比較的、関税が低く抑えられてきた水産品だが、締約国内の関税の引き下げや撤廃でどのような影響が出るのだろうか。

 輸入原料に頼る水産加工業界はTPP発効後に関税が撤廃、あるいは引き下げられれば、原料調達コストが下がり、理屈上は追い風になる。ただ、あくまで恩恵があるのは締約国から原料輸入している品目。
 例えばアジ、サバの関税(7〜10%)は今回の合意で16年目(米国は12年目)に無税となるが、日本の食卓に馴染み深いアジ開きやサバ文化干は、原料の大半がノルウェーやオランダといった欧州のため、今回の関税撤廃の範囲外。「むしろ量販店などで安くなった畜産品が増えていけば、結果として魚離れを加速することにもなりかねず、そうなったらかえってマイナス」(水産加工業界)と懸念する声も。
 水産ではエビ調製品(4・8〜5・3%)が即時無税、うなぎ調製品(蒲焼き)が9・6%から段階的に11年目に無税となるが、結局は締約国からどれだけ輸入されているかが問題。
 海外加工を行う水産会社の担当者は「調製品の関税が撤廃になれば、TPP加盟国ではないタイなどから、ベトナムなど加盟国へ加工拠点を移す動きが加速度的に進む可能性がある」と指摘する。
 米国産スリミを原料に使うことが多い水産ねり製品業界はどうか。
 今回の合意では米国産スリミ(スケトウダラのスリミ)の現状4・2%の関税が即時無税となる。関税がなくなれば、その分、原料の調達コストが減少するわけで、それ自体は歓迎すべきことだが、「それ以上に為替変動による価格のブレが大きい品目。すんなり価格が下がるかも疑問。むしろ量販店サイドから『スリミの関税がなくなるのだから、製品価格も下げるべき』との要求が先に来てしまうのが怖い」(ねり製品メーカー)と不安感の方が強い。
 一方で、北米スケソウスリミを輸入する業者は「米国のスリミ生産者が、関税撤廃を理由に、さらなる値上げを要求する可能性もある。すでに米国産スリミの関税が撤廃されている韓国ではそのようなことが起きている」と懸念する。
 水産加工業界では、原料調達の恩恵が今一つ見えにくい一方、畜産品の台頭によるマイナス面を懸念しているようだ。

水産庁、TPP協定で説明会
 
 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の大筋合意を受け、水産庁は都道府県の水産担当者向けの説明会を16日、農水省内で開いた。佐藤一雄水産庁長官が挨拶。廣山久志水産物貿易対策室長が合意内容を説明し、松原明紀漁政課長は今後の対応に関する基本方針を説明した。質疑応答も行われた。

佐藤長官「健全な漁業への体質強化を」

 佐藤長官は漁業補助金に関する合意について「過剰漁獲やIUU(違法・無報告・無規制)漁業など、資源に悪影響を及ぼす漁業に対しては禁止されたが、持続的な発展を図る日本の漁業補助金は禁止に該当せず、我が国の政策決定権を維持できた」と説明。市場アクセス交渉の結果についても「即時撤廃の流れから段階的な長期的撤廃となり、海藻類は関税の15%削減にとどまるなど、現場に対する配慮がなされた。漁業への影響について不安があると思うが、水産庁としては、そうした不安を少しでも払拭し、健全な漁業経営に向けた体質強化へ有効な施策を講じていきたい」と述べた。

 松原漁政課長は今後の政策対応に関する基本方針について、@TPPの活用促進による新たな市場開拓ATPPを契機としたイノベーションの促進・産業活性化BTPPの影響に関する国民の不安の払拭――を挙げ、「意欲ある漁業者が希望を持って経営に取り組み、再生産が可能となるよう努める」と述べ、TPP協定の実施に伴い生じる諸課題の対策に必要な経費の扱いについては「予算編成過程において検討する」との方針を示した。

 水産業界では、TPP協定発効後に安価な農畜産物の輸入量の増加によって、水産品の需要に影響するとの懸念がある。廣山室長は「需要面では競合しており、水産品から農畜産品への需要シフトを招く可能性は理解しているが、定量的な把握が難しい。ただ、今後の対策を進める上で、その点は念頭におくべき」と語った。

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