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今週の一本

●人手不足をチャンスに変える  去石誠一 (週刊冷食タイムス:17/01/01号)

人口減少、24時間営業の撤退

冷凍食品の出番多彩に

 冷凍食品業界を歩いていると「人手が足りない」という話に直面する。工場を新設したが「想定していた人数が集まらず、騙しだましの操業」、問屋に行けば「まだまだ仕事は取れるが、人手(ドライバー)が足りず、断っている状態」など限りがない。人口の減少が過去最多となり、いよいよ本格的な人口減がスタートした。ただし冷凍食品業界にとっては「新しいチャンス」でもある。これまで当たり前だった24時間サービスが減少し、レストランやコンビニエンスストアが早々に閉まれば、保存がきき、調理の簡単な冷凍食品が重宝されるのは間違いない。「人手不足」をキーワードに、可能性を探った。

 人口の減少は、あらゆる産業に影を落としている。

 スーパーのセルフレジ導入が始まったのは2000年代に入ってからで、まだ歴史は浅い。買物客が自分でPOSレジスターを操作し、商品をスキャンして支払う仕組みで、会計時の混雑緩和の他、人手不足対応という事情もある。最近では、さらに進んだ「完全レジなし店舗」を米国アマゾン社が発表し、大きな話題となった。

 ファミリーレストランのロイヤルホストが今月中に24時間営業から撤退する。生活習慣の変化で深夜の利用客が減っていることに加え、人手不足で深夜賃金が上がり、売上げがコストに見合わなくなっているのが理由。早朝や深夜の営業短縮を進める他、定休日の導入も検討している。従業員に長時間労働を強いる24時間営業の自粛が、外食で広がるという予測もある。

 コンビニエンスストアも事情は似たようなもので、収益性をとって24時間営業を廃止するか、利用客の利便性を考え継続するかの決断が迫られる時期にある。買物客にとっては「買い置きが必要か否か」の判断となるだけに、その影響は少なくない。

 日々の暮らしが便利になったシワ寄せが、こうした様々な形で産業界に表れ始めており、2017年はその変化への対応の年とも言える。

急げ!生産体制の効率化
求められる調理の簡便性

 冷凍食品業界に限ってみても、人手不足は深刻。都市部のみならず、地方も人手不足は同じ。工場の建つ立地は決して人材が豊富という訳ではなく、慢性的な人手不足と言われる。人手はあっても「面接に現れるのは高齢者ばかり」という状況で、「需要があっても生産量は増やせない」という工場もある。

 生産した商品を運ぶ物流会社や問屋も「人手不足」が著しい。慢性的となったドライバー不足で、「突発的な仕事を受けるのはかなり難しい」という。無理して受ければ事故の誘発につながり、元も子もない。

期待が高まる冷凍食品産業の近未来

 メーカー各社が考えるのは効率的な生産体制の構築であり、限られた時間内でいかに量産するかが課題。中長期的な生産体制を考える場合、機能の集約による効率的な生産が求められ、詰まるところ「できるだけ人手の掛からない工場」が望まれている。

 その半面、スーパーの惣菜売場は調理人不足で、食品メーカーに求められるのは簡便調理。長期間冷凍保存ができ、味のブレがない冷凍食品の活躍場面でもある。惣菜売場からは「どんなアルバイトでも、きちんと料理が再現できるようキット商材にして欲しい」といった要望が多い。

 また女性の積極的な社会進出に伴って、普段の食事は手軽に用意したい、という要望が強まっている。人手不足は社会生活だけに限らず、家庭内でも起きている現象。時間を節約しながらも、きちんとした料理が提供できる冷凍食品産業の将来は明るい。 

家事の外部化が進む
スーパーは惣菜や即食強化

 2017年のメガトレンドは一体どんなものか。各種の調査機関から「人手不足」、「女性の社会進出による家事の外部化・簡便化」、「健康志向の高まり」、「スーパーの惣菜・即食強化」など様々な予測が発表されている。食品業界から見れば、どんな食品が、どんな消費者層に、どれだけ受け入れられるかが気掛かり。その中で冷凍食品の立ち位置はどうあるべきか。気になるキーワードの中から2017年を探った。

 三菱食品は2017年の消費のキーワードについて、@シニアの多様化A低糖質・糖質制限B生活者の楽しさ追求Cコスパ(安さ+○○)D「売らない場」の進化が加速EAI元年から普及へ――を挙げている。

 【シニアの多様化】2017年は団塊世代が70代に突入する。厚生労働省によれば、平均寿命から健康寿命(日常生活に制限のない期間)を引いた差は、男性が9.13年(平均79.55歳、健康70.42歳)、女性は12.68年(平均86.30歳、健康73.62歳)。当然、個人差があり、シニアは「健康シニア」と「フレイル(筋力や心身の活力が低下した)シニア」に分かれ始める。生活者の動向を捉える場合、シニアを一律に定義づけると間違いが生まれる。

 【低糖質・糖質制限】2016年は低糖質を訴える食品が数多く誕生した。2015年に江崎グリコが糖質を30%抑えた冷凍麺「糖質オフキッチン」シリーズで家庭用冷凍食品市場に参入し、業界内外から注目を集めたのも記憶に新しい。健康志向の高まりを背景に糖質をコントロールした食品が続々と誕生したが、いまひとつおいしさに欠けることから、定着率は低い。

  国際糖尿病連合は「世界の糖尿病人口は爆発的に増え続け、2015年現在で4億1500万人と前年よりも2830万人増えた。有効な対策を施さなければ2040年までに6億4200万人に増加する」と警告している。20〜79歳の有病率は8.8%、11人に1人が糖尿病有病者と推定されている。日本の成人の糖尿病人口は720万人で、世界第9位に位置する。

 低糖質に関しては、30〜40代男性の関心が高い。2017年はおいしさを損なわずに低糖質化を実現した企業が大きな注目を集めるのは間違いない。

低所得=節約は×安さプラスが必要

 【生活者の楽しさ追求】三菱食品の調査では、2020年までに世帯年収400万円未満の「ニューエコノミカル層」が6割を占めると分析している。このボリュームゾーンを対象とした商品開発が不可欠になっている。

 しかし収入が少ない低所得者だから「節約志向が強い」という思い込みは危険。可処分所得内通信費の構成比が中所得者よりも高く、調理の楽しみが「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)への投稿」という比率が高い。

 生活の中に楽しさを見出そうという姿勢を捉え、食品の開発に力を注ぐ必要があるのは言うまでもない。
 【コスパ】「ニューエコノミカル層」は安さを求めるものの、求めている価値は安さ+「こだわり」、「子供と一緒に楽しむ」、「栄養バランス」、「美容」と様々。こうした価値の創出と演出がなければ、消費者の目にはとまらない。

 メーカーの新商品発表では「安さ」を引き合いに出す企業は少ないが、これは上限価格ありきの商品設計からみて当たり前。これにプラスして「当社のこだわり原料を使用」や「子供と手づくりが楽しめる」などの価値提案が増えている傾向があるのは明らか。

 【「売らない場」の進化加速】最近耳にする「売らない場」は、イートインコーナーや体操教室などのイベントを意味したもの。小売店にとって直接的な売上げ増にはならないが、「来店の動機付」となる。イートイン利用率は設置率と比例して増加傾向にあるという。

 【AI元年から普及へ】AI(人工知能)は、人間の脳が行う知的な作業をコンピュータで模倣したシステムであり、膨大なデータから複雑な事柄を予測設計する。こうした技術を取り入れることで、データの集積が進み、新たな実用段階に入ったと言われる。

 この他にも、「減塩商品の拡大」、「機能性表示食品の増加」、「スマイルケア食(介護食品)の普及」、「インバウンド需要の拡大」、「2020年東京五輪に向けた需要の創造」といったキーワードが、2016年から連綿と続いている。

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