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水産タイムズ社
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今週の一本

●水産タイムズ社65周年記念対談  井出万寿男 (週刊水産タイムス:20/10/19号)

多様で持続可能な水産業に

ポストコロナの新たな社会へ

 日本を代表する大手水産会社の社長を務めた垣添直也氏(日本水産)と久代敏男氏(マルハニチロ)。現在、垣添氏は(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会の会長、久代氏は(一社)日本食品認定機構の理事長として、長年にわたる経験や知見をもとに「車の両輪」として日本の水産業界の底上げに尽力している。「水産エコラベル」「輸出認証」の必要性や価値観を社長時代にどう感じていたか、コロナ禍の下で水産業界が生き残り、活路を切り拓くためには何が必要か――などを率直に語り合ってもらった。

(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会
垣添直也会長

(かきぞえ・なおや)1938年11月生まれ。大阪府出身。日本水産で1999年から13年間社長を務め、2016年マリン・エコラベル・ジャパン協議会会長。日本冷凍食品協会、日本冷蔵倉庫協会でも会長を務めた。東京水産大学(現東京海洋大)卒。
(一社)日本食品認定機構
久代敏男理事長

(くしろ・としお)1947年9月生まれ。島根県出身。中央大学法学部卒業後、大洋漁業入社。マルハとニチロの「世紀の合併」を実務レベルで支え、合併後は新会社の社長として経営の舵取りを果たした。日本缶詰協会(現日本缶詰びん詰レトルト食品協会)会長などを歴任。

力を合わせて業界の底上げを

対談を前に挨拶する
本社佐藤巳喜夫社長
「MELとHACCPは車の両輪」と話す
垣添氏(右)
 久代 お久しぶりです。MELの会長として精力的に活動されていますね。お元気そうで何よりです。
 垣添 社長時代は団体の会合などで顔を合わせることがありましたが、対談という形でゆっくり話をするのは初めてではないでしょうか。楽しみにしていました。
 久代 垣添さんがMELの会長になって4年。当初の目標としてきたGSSI承認を果たし、少しは肩の荷が下りたのではないですか。
 垣添 水産エコラベルでは世界で9番目。アジアでは初です。承認を得るまで苦労しましたが、今後は継続するための審査をクリアする必要があります。これがなかなか簡単ではありません。
 久代 苦労は続きますが、世界に通用する水産エコラベルとなったことは、大きな一歩に間違いありません。その檜舞台となるべき東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルスの影響で延期になったことは残念でしたが。
 垣添 東京オリパラの食材調達基準に照準を当ててきたのは確かですが、GSSIの承認はMELが世界標準のエコラベルとなる上で避けて通れない道でもあります。これまでの取り組みは決して無駄にはなっていません。
 さらに言えば「水産物の輸出促進」「SDGs実現の貢献」という意味からも、MELの使命は今後も何ら変わることはありません。水産物を持続的に利用するという考え方を日本社会に定着させるための活動は、息の長い取り組みであると覚悟しています。
 久代 マルハニチロの社長を辞めて6年半。じっと静かに生活していたのですが(笑)、昨年12月に大日本水産会の白須敏朗会長からJFCOの話をいただきました。一度はお断りしたのですが、「少しでも長年お世話になった業界への恩返しになれば」との思いで、お引き受けすることにしました。
 日本の水産業界の底上げのためには、日本水産とマルハニチロが力を合わせ、手を携える部分が必要であることは社長時代から感じていました。業界のためにと、MELで精力的に動いておられる垣添さんを見るにつけ、「私も頑張らなくては」と意気に感じた次第です。
 垣添 それは嬉しいですね。
 久代 4月に事務所を開設しました。新型コロナの影響で動きは制限されましたが、徐々に事業は動き始めました。MELに比べれば、ようやく緒についた段階ですが、日本産水産物の輸出促進と拡大のため、これから本格的に動き出したいと思っています。
 垣添 MELもHACCPも社会的に大きな使命がある。「車の両輪」だと思いますよ。
 久代 新型コロナの感染状況、その後の影響についての見極めは難しいですが、輸出拡大の必要性、食品衛生法改正に伴うHACCP制度化などで、HACCP認定のニーズは高まっていくに違いありません。
 大日本水産会のHACCP講習会や現地指導と連携し、認定施設のさらなる拡大に取り組むつもりです。現在、米国を対象とした登録認定機関として認定を受けていますが、EUをはじめ、他の地域についても登録認定機関としての登録を進めたい。そのためにも審査員の拡充など、組織体制の整備に取り組む必要があります。

社会と消費者に役立つ「出発点」

 垣添 MELは昨年、FAO(国連食糧農業機関)のガイドライン、GSSIの基準に適合していることが承認されましたが、GSSI承認が目的ではありません。MELが認証取得者、社会と消費者のお役に立つための出発点であると思っています。
 今後は消費者を含めたステークホルダーが広くネットワークでつながる仕組みを構築しなければなりません。豊洲市場の有力仲卸やイトーヨーカドーといった国内を代表する量販店にもMEL認証が広がっています。小売業、外食業の業界団体と協働して、小売りや外食事業者への浸透を図っていきたいと思います。

底力と可能性持ち合わせる

 久代 これからは新型コロナとどう向き合っていくかも避けて通ることのできない大きなテーマとなりますね。
 水産業界に長年、身を置いてきた率直な実感ですが、この業界は純朴で地道、真面目な人が多い。
 マルハニチロは今年で創業140年を迎えました。その歴史は決して順風満帆、安泰であったとはいえません。水産業界もそうです。戦争、200海里と、幾度となく厳しい現実に直面しつつも、一つひとつの難局を乗り越えてきた結果としての今日があります。
 今は世界的にも新型コロナによる大きな影響を受けており、今後もさらに厳しい試練が待ち受けているかもしれません。しかし、それを乗り越えるだけの底力と可能性を日本の水産業界は持ち合わせていると確信しています。
 人類にとって食を欠かすことはできません。水産業は決して衰退産業ではありませんし、そうさせてはならない。
 垣添 いかなる国や地域においても、時代の流れを無視することはできません。新型コロナが我々人類に厳しく迫ったのは「如何にして生き残るか」であり、人の命はもちろん、生活、産業、社会のすべてにおいて、これまで当たり前と思っていたことが、決してそうではなかったという現実です。
 ポストコロナ社会は「個」の主張や安全・安心とともに、ダイバーシティ(多様性)、サステイナブル(持続可能)、リジリエンス(復元可能、順応性)が求められる。その意味からも「多様で持続可能な水産業」は、ポストコロナの新しい社会を支える重要なカギになると思っています。とてつもない大きなテーマですが、人類は、この新たな課題と向き合っていく必要があります。
 久代 MELとHACCP。まだまだ頑張らなくてはなりませんね。
 垣添 そうですね。これからも宜しくお願いします。

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