冷凍食品(冷食)・冷凍野菜・お弁当の売上・取扱ランキング・ニュース

水産タイムズ社
トップページお問い合わせサイトマップENGLISH
業界交差点

この人に聞きたい:第173回
(週刊冷食タイムス:09/01/01号)

報道の混乱が不信招く

食の信頼向上をめざす会会長  唐木英明氏

※唐木氏は東京大学名誉教授、日本学術会議第二部部長、内閣府食品安全委員会専門委員などを務める。

中国と国産の安全性は同等

違反の程度と危険性示すべき
 2008年は中国産の輸入食品に逆風が吹き荒れた年だった。その影響は冷凍食品全体にまでおよび、食品の値上げラッシュや世界同時不況と絡みながら、メーカー・問屋・流通の収益も左右する結果となった。
 そうした環境下、08年9月に発足した「食の信頼向上をめざす会」の唐木英明会長は、メディアが垂れ流す偏った報道と、それに流される生活者の愚かさに警鐘を鳴らしている。
 唐木氏は「食品を供給する側と、購入する消費者の間に、感情ではなく、科学的な根拠に基づいた『健全な関係』を構築する必要がある」と主張する。唐木氏の講演から、主張の一部を紹介する。

 2001年の中国製ダイエット食品による健康被害の発生、02年の中国産冷凍ほうれん草残留農薬問題などを契機に、中国製品に対する不安感が広がった。これに伴い検査体制が強化され、ポジティブリスト制度が施行した。しかし暫定一律基準の採用で、マスコミが基準値の10倍、100倍の残留農薬が検出されたという表現を使ったことで「輸入食品は怖い」という風潮を形成。基準値違反であっても、健康被害はないということは伝わらなかった。

 中国の食品が特別に危険という事実はない。06年の輸入食品監視統計(厚生労働省)をみても、届出件数に占める中国の違反率は0.09%であり、アメリカ0.12%、タイ0.10%と比べて低い。違反数量の割合も中国は0.37%、アメリカ3.08%、タイ0.36%。こうした情報は無視され報道されない。

 添加物や残留農薬は量が多ければ毒だが、少なければ何の害もない。基準を守れば、一生の間、毎日食べ続けても害はない。10倍や20倍の違反でも害が出ないように基準はゆとりを持って決めている。よってほとんどの基準違反は健康には害がない。農薬の違反が多い原因はポジティブリスト制度にもある。一律基準は3年内に見直される予定で、これで違反は減る。

 「輸入中国食品は危険」というレッテルを貼られた要因は、メラミン入りペットフード事件(北米)、エチレングリコール入りの咳止めシロップ死亡事件(パナマ)と歯磨き粉事件(各国)が恐怖感をあおったことにある。しかし、これらは食品の事件ではない。また中国国内の段ボール肉まん事件などの報道により、不信感を強めた。中国食品の違反がとくに大きく報道され、中国イコール「危険」という印象を強めた。天洋食品事件は犯罪だ。

 人間の判断は「ヒューリスティク(heuristic)」と呼ばれる、少ない努力で直感的に結論を求める方法に頼る傾向が強く、間違いが起き易い。さらに「安心」と「安全」が混同して使われて、食品の産地偽装までが「食の安全を脅かす」存在と誤解されている。
 明らかにテレビや新聞に影響されている。人間は本能的に危険情報や利益情報を重視するが、安全情報は無視する傾向が強い。

 企業はメディアの報道に過剰反応し過ぎる。自主回収、お詫び会見、お詫び広告を見て、消費者は企業不信を強めてしまう。

 【まとめ】(1)輸入中国食品の安全性は、国内食品と同等(2)中国国内食品の安全性は、戦後の日本と同程度(3)報道の混乱が大きい(中国国内と輸出用の違い、違反の程度と危険性、規制違反と犯罪の違い、安全と安心)(4)対策はまず「違反をなくす」こと。またリスク・コミュニケーションを行ない、メディアの誤解を訂正することが大事。

水産タイムス 冷食タイムス
(C) Copyright 2004-2015, Suisan Times Co., Ltd. All Rights Reserved.
当サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。  お問い合わせ |サイトマップ著作権・記事使用・リンク・個人情報の保護などについて>>