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この人に聞きたい:第333回
(週刊水産タイムス:12/03/19号)

冷蔵施設再開が復興の鍵

大日本水産会 会長  白須 敏朗氏

 

水産物輸出拡大も視野

 あれから1年がたった。東日本大震災は水産業にも大きな傷跡を残した。今も漁港周辺の水産加工場や冷凍施設の復旧が遅れており、水揚げしても買い受け態勢が追いつかない状況だ。だが、被災地の実情に合った新たな国の支援事業も始まり、漁業の復興にようやく光が差してきた。大日本水産会の白須敏朗会長に今後の展望を語ってもらった。

 ――三陸の水産業も水揚げを再開するなど復興へ走り出しているが、今後の課題は。
 白須 水揚げを本格再開するには漁港はもちろん、加工施設や冷凍冷蔵庫が必要だ。加工場はまだ仮設がほとんどだし、漁港などの本格かさ上げもしないといけない。これらを同時並行でうまく進めていくことが今後の課題だ。
 平成23年度の第3次補正予算で、漁港区域の土地のかさ上げ事業が水産庁の漁港整備事業として実施できることになった。さらに、中小企業庁の施設復旧事業として、被災した中小企業のグループが工場を再建する際に費用の4分の3を国と県が補助することになった。これは復興を後押しする大きな成果だと思う。
 石巻漁港では、製氷施設は5割ぐらい復旧しているが冷蔵倉庫が2〜3割しか復旧していない。そうすると、どうしても水揚げが制限されてしまう。つまり、加工団地が100%復旧しないと水揚げ量も元に戻らない。だから、漁港施設の岸壁のかさ上げに加え、特に冷蔵冷凍庫の復旧を同時に行っていかなければならない。加工施設、冷蔵倉庫の復旧が三陸の水産業の復興のカギともいえる。
 
 ――福島第1原発事故による水産物の風評被害もいまだに尾を引いている。
 白須 水産物の輸出は数量ベースで4月から12月まで対前年比3割減と、大幅に減少している。時間の経過とともに本来の姿に戻っていくと思われるが、水産物の輸出が拡大傾向にあっただけに残念だった。
 
 ――被災地が復興するためにも、水産物の需要を増やしていかなければならない。
 白須 そういう意味でも、水産物の海外輸出拡大は需要アップの大きな切り札だ。昨年度の水産物の輸出金額は1950億円だが、昭和60年初頭は3000億円を超えていた。政府は農林水産物全体の輸出額を2020年までに1兆円に伸ばす目標を掲げている。風評被害を乗り越え、中国やヨーロッパの輸出需要を高めていかなければならない。そのためには国内の供給能力アップも必要だ。
 EUや米国などは食品製造施設にHACCPという衛生管理システムを導入しており、輸入する食品も外国の製造工場に同様の衛生管理システムを要求している。日本のHACCP対応は遅れている。水産食品について、特にEUにも対応できるHACCP施設は米国で約1000施設、中国でも500施設以上あるにもかかわらず、日本国内ではわずか27施設にとどまっている。
 食中毒による死者数は他国に比べきわめて少ない日本の衛生基準が劣っているわけではないが、HACCP施設はタイやインドネシアなど途上国と比べても大きく遅れをとっているのが現状だ。
 いずれにしても今後は、加工施設のHACCP認定を増やしていくことはもちろんのこと、高度衛生管理に対応したHACCP型の漁港も整備していく必要がある。だから、気仙沼や石巻など被災した各漁港、荷さばき施設も単に元に戻すのではなく、海外輸出の本格展開を視野に入れ復興すれば、ピンチをチャンスに変えていけるはずだ。
 
 ――需要増に対応するためにも、三陸の早期の復興が急がれる。
 白須 三陸の水産業で特徴的なのは、水揚げと水産加工がセットになっていて、漁港の背後に巨大な水産加工の集積地帯があること。被災3県の水揚げ量・金額は全国の1割程度のシェアだが、水産加工に占めるウェイトが高いことなどで、震災で受けた打撃は全国の3割ぐらいが失われたようなイメージだ。
 三陸沖、常磐沖は世界の三大漁場の一つ。資源の有効利用という意味でも、水産業を早急に復興させ、国民に安定供給することが重要だ。日本では「魚離れ」が懸念されるが、もっと魚を食べてもらえるよう消費拡大にも取り組みたい。
 海外への水産物輸出拡大と国内の消費拡大をセットで推進していくことで、日本の水産業はさらに未来を切り拓いていけると考える。

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