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この人に聞きたい:第340回
(週刊水産タイムス:12/05/14号)

震災復興 正念場の年に

大日本水産会 会長  白須 敏朗氏

 

世界に冠たる豊穣の海を守れ

漁港背後の加工機能復活がカギ
 未曽有の巨大津波が三陸沿岸の水産基地を次々と飲み込んでいった東日本大震災から1年2カ月。復興に向けた予算措置は講じられているものの、被災地の水産業はどこまで“回復”しているのか。今後の取り組みも含め、大日本水産会の白須敏朗会長(東日本大震災対策本部長)に聞いた。
(本紙社長・越川宏昭)

 ――東日本大震災から1年が過ぎました。これまでの復興への取り組みと、今後の見通しはどうなっていますか。
 白須 いうまでもなく、被災状況が特にひどかった三陸沿岸は「水産」で成り立っている地域です。漁業・養殖業をはじめ、漁港、魚市場、水産加工場、さらに造船、流通、運送、販売、観光、土産物など、何らかの形で水産業と密接にかかわっており、水産業に関連した多くの産業が地域住民に就労の機会を創出しています。その意味から、被災地域にあっては「水産業の復興なくして真の復興はありえない」といっていいでしょう。

 ――とりわけ三陸の海は「魚の宝庫」というイメージが強い。
 白須 三陸沖、常磐沖の北西太平洋海域は世界の三大漁場の1つで、まさに「魚の宝庫」「宝の海」です。残り2つの北東大西洋海域、北西大西洋海域ですが、アメリカ東海岸の北西大西洋海域は乱獲による資源の枯渇が懸念されており、その意味では世界で最も生産性の高い海域が三陸沖であり、世界最大の漁場となっています。

 あの震災にもかかわらず、気仙沼は昨年も15年連続で「生鮮カツオ水揚げ日本一」になりました。同じように甚大な被害を受けた女川もサンマの水揚げでは本州一。主要な魚種で水揚げ日本一を誇っている漁港が多いのも三陸の特徴でしょう。

 ――それだけに本格的な水産業の復興が急がれます。
 白須 しかし残念ながら、まだまだ遅れていると言わざるを得ません。水産庁の資料(3月7日現在)によれば、全国で約2万9000隻が被災した漁船については、大半が沿岸の小型漁船であり、国による共同利用漁船への助成などで今年3月までに8400隻以上が復旧しました。沖合・遠洋漁船も水産庁の「がんばる漁業」「もうかる漁業」などで建造の動きが始まっています。最大の問題は、水産加工場や冷蔵倉庫施設の復旧の遅れです。

 ――三陸の水産業で特徴的なのは、漁港の背後地に冷蔵倉庫を含めた広大な水産加工団地があること。漁業生産から水揚げ、加工、保管、流通と消費地までのサプライチェーンが一体として形成されています。
 白須 例えば気仙沼はカツオたたきやフカヒレの加工が盛んであり、水産缶詰の主要パッカーも三陸に集中していますが、震災の津波で水産加工施設や冷蔵倉庫が壊滅的な被害を受けました。水産業が本格的な復興を果たすためには漁業生産だけでなく、漁港施設、加工施設がともに回復しなければなりません。

 せっかく漁獲物を水揚げしようとしても水産加工場や冷蔵倉庫といった“受け皿”がなければ、背後に受け皿を抱える他の漁港に流れます。水揚げされた水産物を食卓まで届けるサプライチェーンの復活が地域復興の条件となります。
 また、フカヒレなどもそうですが、加工生産がストップすれば、独自の加工技術の伝承にも支障が生じることも懸念されます。

 ――漁港に関しては、岸壁の応急カサ上げ工事が行われ、一定の水揚げは可能となりましたが。
 白須 加工場、製氷・貯蔵施設、冷凍・冷蔵倉庫などの復旧はこれからが本番となります。そうした漁港の背後施設が一体となって復旧してこそ、漁港本来の機能を果たせるわけですが、実際には土地利用計画の調整問題などで遅れていいます。

 荷捌場を含む魚市場、加工施設の整備に向けた本格的なカサ上げ工事は第三次補正予算とともに「漁港区域であれば、そこに立地する漁港、荷捌場のみならず、加工施設、加工団地に至るまで、全て一体として漁港予算でカサ上げする」との方針が水産庁から出され、復興に向けて大きく前進しました。

 ただ、具体的にカサ上げの高さや道路、排水溝の位置など、事業者の意見・調整に時間を要しています。こうした事業を円滑に進めるためには国の事業との調整、事業者の調整と意思統一、県や市町村との調整役となる強力なコーディネーターの存在・機能が不可欠なのです。

 ――復興に際して、これを機に「新しい時代にふさわしい漁港に」との考えも当然出てきますね。
 白須 単に原状復旧するだけでなく、将来を見据え、より高次の整備を実施することが望ましいという考えもあります。漁船でも省エネや、小型船であっても共同利用することで生産性を高めるとか、将来を見据えた形で進んでいますが、これからは水産物の輸出を促進していくためにもHACCP対応の高度衛生管理型の漁港や魚市場への整備が求められます。

 ――復興への取り組みを急ぐとともに、同時並行で消費拡大にも力を入れなくてはなりません。
 白須 漁業生産、水産加工、流通が復活しても「輸出が伸び悩んでいる」「若者や子供たちに魚離れが進んでいる」といった状況では何のための復興か分かりません。三陸沖は世界に誇るべき豊穣の海。また三陸に限らず、日本は好漁場に恵まれています。

 こうした水産資源を生かし、持続的に利用していくための努力は、これまでもしてきたし、今後も続けていかなければなりません。

 ――大日本水産会では昨年、「魚食普及推進センター」を設置しましたが。
 白須 日本には卸売市場や水産会社、自治体、漁協、業界団体、市民グループなど、様々な形で魚食普及活動に取り組んでいるグループがあります。大日本水産会でもこれまで魚食普及事業、水産物消費拡大事業を実施してきましたが、魚食普及に向けた様々な取り組みを、点から輪にして、ネットワークを形成し、コラボレーションを図りつつ、より効果的な水産物消費拡大としていくため、新たな組織を結成しました。

 時代の変化や消費者のニーズを踏まえ、従来の魚食普及の取り組みを見直し、今年は結成2年目として動きを本格化させていきます。

 また、それと同時に、魚の消費拡大、販売促進を支えるツールとして、消費者に安全・安心を届ける高度衛生管理(HACCP)の普及や、環境にやさしい漁業を推進するためのマリンエコラベル(MELジャパン)の普及にも、これまで以上に強力に取り組んでいく方針です。

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