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業界交差点

この人に聞きたい:第593回
(週刊冷食タイムス:17/06/20号)

購買行動の変化が顕在化

味の素冷凍食品(株) 代表取締役社長  吉峯 英虎氏

 

“仮説”立てて実行していく時代に

 味の素冷凍食品の吉峯英虎社長は1〜2人世帯の増加や女性の社会進出などを背景とした購買行動の変化が顕在化したことで「何が求められているのか、先を見据えた仮説が立てやすくなった。弁当から主食、ストック買いから要り用買いにシフトした」と見る。家庭用は1品ごとに新たな価値を加えて同質化競争からの脱却を図る必要性を説く。一方、業務用は堅調な伸びを見込んでいるが、さらなる一手を打つ必要性を感じている。海外展開への期待が高まっているが、まずは国内事業をブラッシュアップすることが最も重要だと強調する。在任6年、同業他社のトップマネジメントが若返っている中、「若手に伍していくにはエネルギッシュにやらないと」と意欲満々である。

 ――冷凍食品市場をどう見る?
 吉峯 業務用は人手不足などのニーズで今後も堅調に伸びるでしょう。家庭用は2014〜15年の停滞から16年は回復しました。この間、何があったかと言えば、炒飯や餃子、焼売などが伸びて全体をけん引している。そこにはメーカー各社の努力が背景にあったと考えるべきでしょう。国内は人口が減少し、1〜2人世帯の増加や女性の社会進出などが顕著になっています。こういう構造変化をきちんと捉えていけば、長期的には冷凍食品市場は伸びると見ています。ただ、流通業を含めた冷凍食品に関わる各社の努力が必ず必要です。12〜13年はパスタがけん引したように、さまざまな取り組みを続けなければなりません。

 ――16年に大きく伸びた冷凍炒飯は目新しいアイテムではないが。
 吉峯 今まで冷凍食品を使わなかった新しい層、つまりニューカマーにとって今の炒飯は新製品なのです。2015年度の冷凍炒飯の購入率は25.8%(同社調べ)で、「ザ★チャーハン」を発売したことで3.5ポイント伸びました。25.8%のうち「ザ★チャーハン」の購入率は6.2%で、そのうちの1.5%が今まで冷凍炒飯を食べたことがなかった人なのです。さらに冷凍食品そのものを使っていなかった人は0.3%いました。

 これらが意味するのは、今の人に合うようにアレンジすれば、これまで市場にあったほかの商品にも、もっと伸ばす可能性があるのではないかということです。

 「ザ★チャーハン」の場合、既存商品の改良型ではなく、全く新しいポジションがあると信じて製品開発やパッケージデザイン、CM制作に取り組んだ結果、消費者が「買ってみようかな」と思ったのではないでしょうか。

コンビニでも冷凍食品が売れ出した

 ――何が売れるのか、そこに“仮説”があったと?
 吉峯 5年前に比べれば世の中の変化が顕在化してきました。例えばCVSで冷凍食品が売れるようになりました。10年前のCVSでは冷凍食品の売上げがほぼゼロだったのに対し、今ではスーパー、ドラッグストア、通販などを含む全業態の中での構成比が3%を占めるまでになりました。購入する人や、何が売れているかが見えてきました。CVSでは主菜となるおかずが売れています。弁当のおかずではなく、食卓のおかずが求められていることが分かる。どうもそっち方向に市場がありそうだなと仮説が立てやすくなってきました。

 スーパーでも、都市部の小型店が増え、ある程度売れ筋商品が見えます。はっきりしてきたのは、ストック買いから要り用買いへと購買の仕方が変化しているということです。これまでとは異なる消費行動が見える分、仮説が立てやすくなってきました。

 ――17〜19年度の新中計の基本方針に掲げている「冷凍食品を生活に真に浸透させる」とはどういう意味?
 吉峯 量販店の売場がハイ&ロー(特売価格政策)からEDLP(毎日低価格)に移行したことで、消費者はまとめ買いから1品ずつ吟味して購入するようになりました。単品の商品力を強くし、本当に必要と思われる商品でなければ、他社製品に負けてしまいます。しかも「冷凍が一番」というジャンルの商品に新しい価値を加え、同質化競争から脱しなければならない。

 「ギョーザ」が伸びたのは、冷凍の方がいいという価値が浸透した結果です。冷凍食品ならではの価値を持っていれば、生活に真に浸透していくのではないでしょうか。冷凍食品が今持っている価値は時間(調理時間の短縮)、利便性、保存性、経済性です。これらのほかに新しい価値を付けることができれば、市場はもっと伸びると考えています。

 ――新しい価値とは?
 吉峯 今持っている価値にプラスして、より健康に配慮した食提案、快適な食生活、多様なライフスタイルに対応するといった要素です。そういうキーワードを付加していくことで1品1品が強くなります。

 ――そういう意味では「おにぎり丸」は新しい。
 吉峯 スポーツをしている子どもを持つ母親は、おにぎりの具に何を入れようかと困っているため、肉と野菜がバランス良く入った「おにぎり丸」は、半歩先を行く提案と言ってもいいでしょう。

 ――14〜16年度、味の素冷凍食品の家庭用が市場の伸びを上回ったのに対し、業務用は市場と同レベルで推移した。
 吉峯 もともと家庭用から冷凍食品事業をスタートしたため、業務用は大きな柱商品を持たない中で取り組んできた経緯があります。そこにデザート、ハンバーグ、米飯、チキン加工品、味の素社の強みである点心を加えた5つの柱ができました。
 業務用は対顧客の商売。多品種を少量生産できる工場を持つのは1つの正解でしょうが、当社は大量生産の工場が多いため、もう少し考えないと、ブレイクスルーは難しいと思います。

 ――その中でもデザートは伸びている。
 吉峯 14年に新設した群馬の関東工場はデザートの売上げが60億円の時代に、100億円をめざして建てました。生産コストの削減はもちろん、高い品質や新しいニーズに対応できる生産設備を備えています。デザートはフリーカットタイプから、カットする手間が不要で、果肉をたっぷり使ったポーションタイプがいま評価を得ているところですが、まだまだ伸び代はあります。ただ、製品開発のほかにもやるべきことがあると考えています。

 ――工場の老朽化とフロン対策は業界共通の課題でもある。
 吉峯 当社も同様です。フロン対策は工場の8割方が工事を終えており、2020年には終了させます。近く2基を更新するので、残るは7基です。老朽化とフロン対策を機に、国内工場の再編が促進される可能性がありますね。

海外展開で為替変動に強い事業に

 ――海外事業も意欲的だ。
 吉峯 味の素グループにとっての冷凍食品事業を見た場合、国内だけでは為替変動に弱い。海外の売上げとバランスを取ることができれば、為替が変動しても大丈夫だろうという考えがあります。

 事業の中身としては、国内の冷凍食品事業の品質管理、生産技術、商品開発、きめの細やかさなどは世界で通用すると確信しています。

 北米のウィンザー社を買収した際、現地では小(アメリカ味の素冷凍食品、年商150億円)が大(ウィンザー社、年商750億円)を買ったように見えたかもしれませんが、生産技術や商品開発力を旧ウィンザー社に導入したことで、我々は尊敬されていると思いますよ。単に企業を買収するだけなら足し算にしかなりません。そこに味の素グループのDNAが活きる仕事をすることに意味があります。その点では、国内の冷凍食品事業をどうブラッシュアップするかが一番大切なのです。そして、それを海外に展開する。ウィンザー社の買収以降、製品ではアジアン、メキシカン、イタリアン、チャネルではフードサービス(業務用)のうち、何をどこで重点化するか検討してきました。体制を整え、今年度からさらに伸ばしていけると見ています。

欧州展開は慎重に

 ――欧州はどう攻める?
 吉峯 これまでの業務用に加えて、フランスで家庭用の販売を開始しました。欧州と一口に言っても、北米と違って国ごとに食文化が異なるため、慎重に進める必要があります。生産拠点や販売・物流網、マーケティングをどうするか、骨太なプラットフォームが必要なので、もうしばらく時間を下さい。

 ――経営上で重視する数字は。
 吉峯 やはり収益性です。業界はさきほど述べた冷凍食品が持っている価値のうちの経済性に縛られて生販三層が皆疲弊しているのが現状です。新しい価値を付けて消費者の満足度を高め、その結果収益性が上がり、流通業も潤う、三方良しになることをめざしたいですね。

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