この人に聞きたい:第1021回
(週刊水産タイムス:26/03/09号)
現場の人手不足は極めて深刻
自民党物流倉庫振興推進議員連盟 井林 辰憲事務局長
自民党物流倉庫振興推進議員連盟の井林辰憲事務局長(衆議院議員、自民党物流調査会長)に人手不足対策として期待される外国人の特定技能・就労育成制度の冷蔵倉庫分野の追加や、改正物流効率化法の施行後の状況、60年ぶりに改正された標準寄託約款など、物流倉庫業界の課題や将来の展望などについて話を聞いた。
――今年度の物流関連の予算及び課題について。
井林議員 自然冷媒機器の導入支援の予算については、前年と同じ70億円を確保した。冷媒の交換に注力していくのは良い流れと言える。予算があれば新設についても支援していくが、まずは設備の更新をしっかりすることが重要。建屋の建て替え計画も冷媒の交換と性質が近いため、設備の更新と合わせて建て替えについても支援をしていくべきだ。
人手不足対策を含めて官公庁の色々な補助金があるが、上限額をもう少し増やしてもらい、自動化を拡充していく必要がある。
私の地元の話であるが、超低温冷蔵庫になると自動倉庫はかなり金額が高くなる。予算の上限を引き上げて、しっかりと自動化を進める必要がある。外国人の活用も重要だが、自動化・省力化で生産性を上げることが求められる。
すべての労働に対価を/商慣習見直しが必要
――外国人の特定技能・就労育成制度の冷蔵倉庫分野の追加が1月に閣議決定された。
井林 人手不足問題については、外国人の活用を私が言い出してから約10年経過するが、日本冷蔵倉庫協会や日本倉庫協会の尽力が非常に大きいと考えている。現場の実態をふまえると大手から活用するものと想定しているが、ゆくゆくは中小企業にも広がっていくと思う。ただし、外国人の受け入れに先立って、まずは自動化などのDX化が進められている事業者から始めることが好ましい。
他方で外国人のドライバーが増えてくると、今まで当たり前のようにサービスでやっていた荷積み・荷下ろしを、冷蔵倉庫側で請け負うのか、物流業者が請け負うのかを明確にすることが求められる。すなわち、費用負担を倉庫側がするのか、トラック側がするのか、それをどのように荷主に求めていくのか、そのようなことがより一層明確化される必要がある。
サービス的労働はなくなり、すべての労働に対価を支払うことを前提に業界の商慣習を作る必要がある。最終的には荷主の理解も得なければならない。
自民党の物流調査会長も務めているが、トラックだけ良くなれば良いとか、倉庫側だけ良くなれば良いということではなく、それぞれが良くなるような形で、かつ、物流全体としてシームレスに連携していくよう議論をまとめていきたいと思う。
――商慣習の見直しについて。
井林 標準寄託約款がまさに改正されると聞いており、これにより責任の所在が明確になってくると考えている。今まで荷積み・荷下ろしを倉庫が対価ももらわずにやらされていたケースもあるが、標準寄託約款の改正では、そのような役務を明確に位置づけ、本来の倉庫業務とは別に対価をもらえるという新たな取引関係をつくりだすことができる。
――自動化については予算の額を大きくすれば対応ができるようになるか。
井林 大手と言われる冷蔵倉庫をいくつか見せてもらったが、上場企業系の子会社のような冷蔵倉庫は自動化、パレット化などかなり進んでいる。それ以外の中小規模の冷蔵倉庫は自動化がそこまで進んでいないのが実情。「自動化」イコール「標準化」なので、標準から外れた部分を手作業でやると非常に効率が悪くなる。標準化することがまず重要。少なくともパレット化は規格標準化していかないと今後大変になると思う。
――規格標準化しないと自動化はできないということですね。
井林 逆に言うとパレットに載っている荷物と載っていない荷物の料金を分けるといった世の中になる可能性もある。荷主にその分を負担してもらう世界が間違いなく来るのではないか。
物流施策大綱で位置付け/冷蔵倉庫は重要プレイヤー
――改正物流効率化法の施行からもうすぐ1年経過するが、進捗についてどう考えていますか。
井林 良い方向に動いているし、業界全体としても緊張感が高いと思う。今年4月以降、基準を超える物流・倉庫会社は特定事業者の対象になるが、それを避けるための不当な分社を許さないようにしなくてはならない。
対象となるのは保管量70万t以上の冷蔵倉庫会社や、車両保有台数150台以上の運送会社など。例えばトラックを200台保有している会社が、分社して100台ずつの会社になることで特定事業者の対象から外れることになる。そのようなことが起こらないようにしなければならない。
――税制特例について。
井林 税法の対象となる倉庫が物流拠点施設に拡大された。今後は物流不動産も対象になってくるので、物流不動産がどのように活躍できるのかについて注視していきたい。既存の営業倉庫を侵食するような存在ではなく、今でもすみ分けができていると思うので、物流会社を支援していく必要があると思う。
――2030年度に向けて「総合物流施策大綱」が検討されているが、重要なポイントは何か。
井林 前回の総合物流施策大綱の概要には「倉庫」という文言が出てこなかった。今般の大綱の概要においては、倉庫・冷蔵倉庫というフレーズがきちんと位置付けられる必要がある。物流においては倉庫・冷蔵倉庫というのが非常に重要なプレイヤーであるということをしっかりと示していかなければいけない。
将来的にタクシーやトラックの自動運転の実装化が進んでくる。その時、どのようなことが必要になるのか、一度実証実験をしておくべき。最初は拠点間配送を自動運転でやっていくことになるだろう。その場合に冷蔵倉庫側でどのような対応が必要になるか。「自動運転はドライバーがいない」となると、少なくとも積荷の荷下ろしはやることはない。その場合、自動運転トラック対応の倉庫としてはどのような設備を準備する必要があるのかなど、そろそろ検討していく必要がある。
環境にやさしい物流へ
――今後5年で自動化などが進み、物流業界が急激に変化すると思うが、どのような点に期待をしているか。
井林 期待もしているが、危機感の方が大きい。やはり実際の労働人口が急激に減少していくので、物流・倉庫の現場での人手不足は極めて深刻な問題になる。給料を上げれば人が来るという時代、週休2日であれば人が来るといった時代ではなくなってきているので、非常に深刻な問題と言える。しっかりと向き合っていかなくてはならない。
――冷蔵倉庫業界に向けたメッセージはありますか。
井林 様々な社会インフラの老朽化が問題となっている中、冷蔵倉庫の老朽化、電気設備の老朽化なども課題となっている。そのため、環境問題への取り組みも含めて、各冷蔵倉庫や工場に太陽光発電と充電用バッテリーを設置してほしい。環境対策に向けた設備投資として、冷媒のノンフロン化を含めて、色々な補助金があるので、しっかりとそれらを活用して頂き、停電などに対しても備えられる冷蔵倉庫にしていくことが必要だ。そのようなことを今後数年で重点的にやっていくべき時代が来つつある。
再び環境問題を重視する時代が来るので、その時に日本の物流が環境にやさしくない物流であると、日本の農林水産物輸出にも影響が出る可能性がある。今のうちにしっかりと環境問題に対応した設備投資を支援していくべきだ。