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業界交差点

この人に聞きたい:第36回
(週刊水産タイムス:06/03/13号)

大手水産トップに聞く ニチロ田中龍彦社長
「サケのニチロ」は不変

(株)ニチロ 代表取締役社長 田中 龍彦 氏  

 ニチロは自他ともに認める主力のサケ事業が在庫を抱えたまま赤字という厳しい期末を迎えそうだ。水産事業(単体)の赤字は初めての経験。ショックといえばショックだが、田中龍彦社長は「取り組みが失敗しただけ。歴史的にも“サケのニチロ”は変わらない」とした上で、次の一手をしっかり考えていた。(本紙社長・越川宏昭)

得意の「北の魚」で優位性発揮 付加価値高め、業務用を拡充

――社長になって5年。商売は思い通り行っているか。

田中 厳しいですね。一度は増配で記者会見をしてみたい。つくづく実感するのはニチレイや日本水産との財務基盤の違い。

――ニチロも儲かった時期があったと思うが。

田中 これだという物が残っていない。今でも函館が「ニチロの町」と言われるのは嬉しいが、当の函館市民はどうか。ニチロに愛着はあっても、感謝まではないでしょ。残っているのは顕彰碑くらいかな(笑い)。

――3月も中旬、今期も見えてきた。

田中 一言でいうと、つまずいたという感じ。単体の水産は経常ベースで約1億5000万円の赤字になる。水産事業の赤字はニチロの歴史上、おそらく初めてだろう。

得意のサケでつまずく

――商売だから、いい時も悪い時もあるが、赤字まではなかった。

田中 Pパン(子会社のピーターパン・シーフーズ)などが好調なので連結ではいいが、単体の水産が悪い。市況と為替は克服できない。今年のサケは読みすぎて失敗した。他の魚種がことごとく海外で値上がりする中で、「サケだけが動かないというのはあり得ない」との思いが先に立った。だから低い買い値でこられると「様子を見るか」となり、最終的には在庫が増えた。ここは難しいところだが、かつて久井さん(久井惠之助元社長)は「サケは夏の魚。盆前に半分は売りさばけ」「在庫を持っていても10年に1回くらいしか、いいことはないぞ」と言っていた。

――市況までは動かせない。

田中 思い込みは危険。かつてアラスカサケは魚価の指標になっていたが、そういう構図もとっくに崩れた。ただ、今回のサケ苦戦は仕方がなかった面もある。

水産の赤字で覚醒

 これだけ魚が集めにくい中で、天然物のサケが養殖のギンよりも安いというのは、これまでの常識では考えられないだろう。ここへ来てサケもこじっかりしてきたので、期末は結構残ると思うが、評価減で出してしまえば傷は浅く、このことを良い授業料としたい。

――扱えば儲かるという時代ではない。

田中 赤字というものを知らずに育った人間にとってはショックだが、我々もこれで目が覚めた。今回の赤字を将来にどうつなげていくか。「サケのニチロ」でありながら、最も赤字が大きいのもサケ。「専門」を名乗って赤字では仕方がない。気持ちを切り替える必要がある。今は水産事業の再生プラン(案)を何度も突き返している状態だ。

――各社がそれぞれ得意の魚種に絞るというのも、一つのやり方だ。

田中 マルハが下関、日水が戸畑を淵源としたように、ニチロも函館に拠点を持っていた。歴史的に得意なのは北の魚だ。漁労のルーツを持つニチロには歴史的にも動かせない得意魚種が存在する。

――つまり「サケ」だ。

食材流通部を強化

田中 起死回生策はない。前から言っているようにサケ・マス、カニ、赤魚、カレイなど、素材を絞り込む。シェアで三位以内を揃えていけばニチロの魚種も固まってくる。「お客様から言われればどんな魚種でもやる」というのでは、儲からないし、人も経費もかかる。魚種を絞って、素材部門の人を減らし、その分のスタッフを食材流通部の強化に充てたいと考えている。

――具体的な数字でどう考える。

利益出せる商品を

田中 今期の場合ではいえば、水産物の外売りは580億円くらい、これに対し加工食品部門への水産素材、調理品の供給を含めた社内売りは400億円くらいある。外売り分を減らすことなく、社内売りを500億円まで持っていく。スーパーでも外食・中食でも、水産物を扱いたいという人は実に多い。素材で売ったのでは利幅が薄いが、素材から切り身へ、さらには調理食品となれば利益率が増す。素材だけではなく、ニーズに合わせた加工品を売る。

――利幅は大きいが、取り組むとなると結構面倒な分野だ。

田中 だから、なかなか進まなかった。電話一本で右から左へ流せば2%のマージンが取れるなら、その方が楽だし、いわゆる昔風の営業で済む。こうした違いが長年の水産と食品との対立を生んできた。加工食品は商品開発して、プレゼンして、業務用問屋の意向に沿えなかったらやり直しとか。アイテムも多いし、すぐメニューも変わる。食材の無駄も莫大なものになる。

――商品化するまでに、非常に手間がかかる。

末端はサカナ志向

田中 生協でもCVSでも今後伸ばしたい分野はサカナや野菜だと言っている。水産業界はこぞって苦労しているが、こうした末端の意向にまだ、ニチロとしてもかみ合っていない。居酒屋などの外食産業向けにも出しているが、この分野はアイテムが多く、無駄も多い。業務用1000品目を700品目にしたいが、なかなか絞り込めない。業務用は市販用と違って販促費はかからないが、その分廃棄損が多い。開発過程でロスもある。ユーザーはメニューをどんどん変え、変えた途端に廃棄損というケースも多い。共同開発でも労力はかなりかかる。これが取り組んでいるものの、なかなか進まない理由だ。

開発の余地は十分

――でも、それだけ開拓の余地があり、チャンスもあるということ。

田中 まだまだ取り組むことは多い。この4年間、メーカー志向を訴え続け、品質から出発するという考えが浸透してきた。水産にしても買い付けた瞬間からニチロの商品となる。何が起きてもニチロが保証するという考えを徹底してきた。ニチロにとって水産は本業だし、これからも加工食品との2本柱に変わりはない。確かに環境は厳しいが、水産物に対する需要は今後もあるわけだから。

――やりようはある。

田中 世の中は以前に比べ、流通ルートも食べ方も変わってきた。昔のように、トン単位で扱ってドカンドカン売っていた頃は、利益率なんて概念はなかった。その感覚を今も引きずっていたとしたら、大きな間違い。

海外市場も創出

――ニーズに合わせた商品を出していかないと、マーケットでは受け入れられない。

田中 魚もいわゆる丸物では製品であっても“商品”にならない。取り組み先ベスト企業として、荷受や加工業者とよく話し合って、ニチロの役割を明確にする。これをやらないと今後の水産ビジネスはうまくいかない。今の水産業界は川上から川下まで、どういうスタイルが理想なのか、まだ見えていないと思う。ここに取り組んでいきたい。ニチロの人材は素材としてはいい。欠けていたのは加工品、特に業務用のセンスだ。

――海外事業の展開も今後の課題だ。

田中 原料手当てにあっては、海外にいくつもの供給ルートを持つ。今後も供給元と確固たる関係を維持していくには日本での売りはもちろんだが、それに加え、欧州などの海外マーケットをニチロが創出していくことが大切だと考えている。

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