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業界交差点

この人に聞きたい:第124回
(週刊冷食タイムス:08/01/08号)

「新菱食の創造」に挑戦

菱食 副社長 中野 勘治 氏

顧客の悩み、課題解決通じ革新
チルド1000億円の実現

 2007年を振り返ると、冷凍食品業界には活力が失われていると思う。端的な例が春・秋の新商品だが、これといって見るべきものがない。業界をけん引し、障害を切り開いていくバイタリティあふれるリーダーも不在だ。多少荒削りでも他の業界に先んじて冷食業界を引っ張っていこうという気概にあふれる人がいなくなったのは寂しい限り。かつては風を切って先頭を突っ走るリーダーがいた。それを批判するもよし真似をするもよし、少なくとも業界がヒートアップしたのではないか。いまの冷食業界には熱が感じられない。
 閉塞感のある現在、「事なかれ」は駄目、「事あり」であるべき。むしろ火中の栗を拾う位のダイナミックさが欲しい。従来の流れを変えるために身体を張って頑張っている人が見当たらない。

 新菱食がスタートして1年が過ぎたが、昨年はアンシャンレジューム(旧制度)から脱皮して新しい時代の中間流通業に向けた「衣替えの年」だったと思う。廣田正相談役の慧眼どおり、いわゆる「21世紀型の中間流通」へと大きく舵取りをした年だ。
 消費トレンドが常温からフレッシュへ、鮮度重視へと動いている。その流れを受けて菱食は低温、フレッシュに強いアールワイフードサービスとの合併を決断した。今年から後期3カ年計画がスタートするが、いよいよチルド流通へのダイナミックな事業展開を進める。ショップ99やローソンとの取り組みを柱にして1000億円規模のチルド流通を実現したい。こういった挑戦はアールワイだけでは無理であり、新菱食だからこそできることだ。
 いわばフルラインへの挑戦。当社ではこれを「フルライン・イノベーション」と位置づけている。どのカテゴリーにも応えられる、顧客からみて「使いやすくなった菱食」となれればねらいは成功。12月には酒類を一本化して、ますます取引先にとって使い勝手のいい菱食になった。
 フルラインは大手問屋ならどこもがめざすところだが、菱食は他社と決定的にどこが違うのか。20世紀はモノ中心だったが、21世紀になってモノが有り余っている。そういう中で選ばれる店はどこか、商品は何か。「ソリューション・プロバイダー」(解決策の提供者)というか、顧客の悩み、課題探しをしてあげます、そして解決策を提供しますというのが中間流通業者のあるべき姿だと思う。

 当社は(モノでなく)ソフトを売るために40〜50名のスタッフを抱えるフードコーディネート本部を設置している。顧客にとってメリットのあるソフト探しを追求する中で新たな革新性が生まれるのだと思う。
 零細な外食店に食材を直販するリクエ事業などもソリューション・マーケティングのひとつ。大手はもちろん中小問屋といえども相手にしない、いわばザラ場の店を対象にしたものだが、2年たち、10億円近い売上げになって、それまで関心が薄かったメーカーも注目し始めた。今から同業他社が追随しようとしても容易に真似のできる仕事ではない。これぞ革新性への挑戦のひとつだ。先行投資が続き、苦しみ抜いた末に何とかこれだという手応えをつかむことができた。

 経営者にとってもっとも大事なのは、志をもつことだと確信している。高い志があれば難事業であっても貫徹できる。これはニチレイ時代の金田幸三さん(元会長)、菱食では廣田さんに学んだこと。
 我々経営陣に課せられた使命は菱食を21世紀型の中間流通業に生まれ変わらせ、次世代にバトンタッチすること。私はかねてから「ライフスタイル・マーケティング」を標榜している。あらゆる業態と接する中間流通だからこそ、生活者のライフスタイルに合わせた食の提案ができる。各業態で得られる生活者の情報を、ソフトとして翻訳するのが重要な仕事だと思う。
 たとえば「ロハス」はいまや手垢のついた流行語になっているが、その意味するところの「ライフスタイル」「ヘルシー」「サステナビリティ(持続性)」を表記すれば、まさに時宜を得たキーワードになる。実例を挙げると、米国の小売業の中でウォールマートはNBを中心に低価格を売りにしている。一方、ホールフーズはロハスを体現した店だ。環境を重視し、地産地消をモットーにしている。どちらがいい悪いでなく、価値観をどちらに置くかが問いかけられている。後期3カ年計画は量から質へ、定量的なものから定性的なものへと軸足を置き換えたものになる。

 値上げ問題についてだが、中間流通業も販売管理費が増えて大変厳しい状況にある。値上げの是非は、言い換えれば生活者から支持してもらえる価格かどうかである。外せないポイントは安全安心やトレーサビリティの確保。でもこういったことをしっかりやればやるほどコストがかかる。メーカーはそういう説明を怠ってきたと思う。もっと自信をもって語り続け、消費者に理解してもらわなければならない。
 安全安心は空気みたいなものと言われるが、水道水は安価なのに、安くもない飲料水を買う時代だ。食品だって安全安心が担保され、生産履歴をトレースできる商品は多少コストがかかることを分かってもらわないといけない。
 冷凍食品の安売りについても、目先の売上げ、利益を追うばかりで当事者に志がないから、いつまでたっても脱却できない。経営トップが志をもち、「売上げが落ちてもいい」と宣言し、新しい方向性を示せば、安売り地獄から脱出できるはず。トップが断固たる姿勢を示して方向転換することに成功した事例は他業界にもある。
 その意味で新・加ト吉の誕生は閉塞感を破る好機として私は大いに歓迎している。グローバルマーケットを知り尽くしている(JTと日清食品の)両社が新しいルール作りに挑戦してくれるものと期待している。
 受け手である中間流通もうかうかしていられないが、幸い菱食には優秀な人材がたくさんいる。トップが進むべき方向を明確に示し、皆がそれに向けて進んでいけば、後期3カ年計画が終わるまでに新しい菱食が創造できると信じている。

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