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●コロナ禍で水産は苦戦 　 （週刊水産タイムス：20/11/09号）

大手水産５社の上半期業績

　大手水産５社の今年度上半期業績（４〜９月）が出揃った。新型コロナウイルス感染拡大の影響などに伴い各社とも水産事業が苦戦した。食品事業は外出自粛でホテル・レストラン需要に影響が出た一方、家庭用食品には追い風が吹いた。コロナ発生から半年以上が過ぎ、当初未定としていた通期の業績予想もコロナの影響を見込んだ上で発表に踏み切っている。

海外・加工が増益 マルハニチロ

　マルハニチロ（東京都江東区、池見賢社長）は海外事業、加工事業が増益となった。
　海外事業は売上高が減少したものの、営業利益４７億円で前年同期比５５.０％増。タイのペットフード事業、オーストラリアの漁獲が好調だった。コロナの影響で欧州は減収も、米国でカニカマや鮭缶詰の量販店向け販売が好調だった。
　漁業・養殖事業は、まき網事業のカツオ漁獲減、コロナ禍による養殖魚の販売減少と相場下落などで減収、営業損失となった。
　商事事業も苦戦。水産商事は第１四半期を底に回復基調にあるものの、マグロやホタテなど主要魚種の外食・業務筋向け販売が伸び悩んだ。荷受も活魚などの高級商材が不振だった。
　物流事業は減収ながら増益。コロナ禍で荷動きが鈍化し、輸配送事業が減収となったが、冷蔵保管事業で大都市圏における旺盛な保管需要を取り込んだ

養殖事業が苦戦　日本水産

　日本水産（東京都港区、的埜明世社長）は国内マグロ、南米の鮭鱒養殖事業が単価下落や減産で減収減益となった。
　水産事業は外食・観光需要が急減し、ホテル・レストラン向け水産品の販売が減少した。養殖マグロは台風被害で原価高となり、南米の鮭鱒養殖はコロナで生産体制に制約を受けたほか、付加価値品の生産が減少。養殖成績が低いイケスが水揚げ対象となったことも業績悪化の要因となった。
　食品事業は家庭用食品（冷凍食品・チルド商品）の販売が堅調で苦戦する業務用食品をカバーした。チルド事業は緊急事態宣言解除以降、回復傾向が見られたものの、在宅勤務の増加や観光需要減少で人出が大きく減り、コンビニエンスストア向け商品の受注が減少した。
　当初は２０２１年度を初年度とする予定だった次期中期経営計画はコロナの影響で１年間の準備期間を置き、２２年度からスタートする。

水産商事の利益率改善　極洋

　極洋（東京都港区、井上誠社長）は水産商事の利益率が改善し、減収増益となった。
　水産商事セグメントは外食・業務筋向けの需要減で、エビの国内販売やホタテなどの輸出販売が低迷したが、鮭鱒の原料及び加工品の取扱量が増加して利益率は改善。減収増益となった。
　冷凍食品セグメントは売上高、利益ともに前年同期を下回った。常温食品セグメントは増収増益。物流サービスセグメントも売上げ・利益ともに前年同期を上回った。
　鰹・鮪セグメントは売上高が増加したものの、海外まき網事業の収支の悪化が響き、わずかながら営業損失を計上した。

低温物流がけん引　ニチレイ

　ニチレイ（東京都中央区、大櫛顕也社長）は、外食向け販売の減少などで減収となったが、利益面では低温物流事業が伸長して増益となった。
　低温物流事業は、物流ネットワーク事業のＴＣ（通過型センター）事業が好調に推移。増収効果と経費抑制で営業利益も増加した。
　輸入貨物の搬入をはじめ入出庫物量が全般的に減少に転じたものの、巣ごもり需要が継続したことでＴＣ事業や家庭用冷凍食品などの保管貨物の取扱いが好調に推移した。業務革新のモデルセンターと位置付ける新設の名古屋みなと物流センターも安定稼働した。
　水産事業は、生協・量販店向けの販売拡大に努めたものの、主力の「えび」を中心に外食・中食向けの販売が減少したことで減収減益。加工食品事業は中食需要が引き続き好調。５.６％増と大幅に増えた。外食は３０.６％の大幅減。一般外食は３１.１％減、寿司は２０.７％減。

営業利益５５％増　東洋水産

　東洋水産（東京都港区、今村将也社長）は増収増益。営業利益が５５％増加した。
　セグメント利益は海外即席麺事業で７８億円（前年同期比４９.８％増）、国内即席麺事業で倍増近い６０億円（同９３.２％増）を計上した。
　水産食品事業は減収増益。コロナによる外出自粛などで一部スーパーマーケット、食品宅配事業向けの販売が伸長したが、コンビニ、外食、ホテル向け需要が減退した。主力商品の鮭鱒は市況価格が下落した。前年の棚卸資産評価見直しや適正価格での販売、在庫圧縮に伴う保管料減少が増益要因。

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