この人に聞きたい:第1000回
(週刊冷食タイムス:25/09/30号)
改良剤で冷食を下支え
理研ビタミン 代表取締役社長 望月 敦氏
(もちづき・つとむ)1985年入社。国際事業部長、国際事業本部長、第2生産本部長、加工用食品グローバルマーケティング部長、国際営業統括部長を歴任。22年取締役、23年常務、今年6月24日付で現職。東京都出身。1962年3月生まれ、63歳。東京都出身。
海外売上げ比率10年後35%に
理研ビタミンに入社以来、国際事業畑。代表取締役社長に6月就任した望月氏は「食品、食品用改良剤、ヘルスケア」の3つをコア事業として挙げる。冷凍食品との関連を聞いた。
――冷凍食品市場をどう見る。
望月 国内外でさらに拡大すると捉えています。その中で冷凍食品メーカーは差別化やコスト削減、原料の安定調達といった様々な課題が出てくるはず。個々の課題に対し当社は食品(調味料等)と食品用改良剤の両面でアプローチし、作りたてのおいしさ、品質の持続、生産性向上、歩留まりアップといったところで貢献できると自負しています。当社中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」のもと、多様化する冷食業界の課題解決につながる提案を強化します。
――食品・改良剤・ヘルスケアを3つのコア事業として挙げている。ヘルスケアで冷凍食品とつながる取り組みの可能性は。
望月 比較的不安定な物質をマイクロカプセルの中に入れて安定化させる技術を当社は持っており、それを活用いただける可能性があるのではないかと考えています。マイクロカプセル技術を冷凍食品で応用いただけるようになれば、バラエティが広がるはず。
――例えば。
望月 肉製品で香辛料の匂いをふわっと出したいという場合、マイクロカプセル技術を使うと、食べた時に口の中でカプセルが壊れて香辛料の匂いが出てくる。そういったことで差別化ができると思います。
――冷凍食品メーカーからよくあるリクエストは。
望月 乳化剤や色素などの食品改良剤やエキスを使い、味や食感などを保持・補完するといった要望はよくいただきます。ニーズに沿い、相対で仕事を進めております。
――海外売上げ比率は現状25%、10年後35%をめざす目標を掲げている。冷食の取り組みで関連することは何か。
望月 衣、肉、米飯などの質を高める改良剤の展開が冷食分野で重要な取り組みになると考えています。
――海外の改良剤製造拠点は。
望月 マレーシアと中国天津の工場です。マレーシア工場は中国に先立ち1991年に設立した、当社初の海外拠点です。食品用改良剤のひとつである乳化剤は水と油の両方に馴染む性質を持ちます。乳化剤を作る際の原料で、汎用性が高く経済的なものがパーム油。パーム油の産地となるとマレーシアかインドネシア。91年当時はマレーシアの方が進出しやすかったため、世界屈指の規模を誇る工場をマレーシアに建設することにしました。
――マレーシアと聞くとハラルを連想するが、中東、アフリカ等にも展開はありうる?
望月 そこまで手を広げる考えは現時点ではありません。持続可能な事業展開を念頭に、スポットでビジネスを作るのではなく、顧客とタイアップしながら一緒に発展していきたいと考えています。日本、中国・アジア、北米などのユーザーに使っていただける改良剤の技術やアイデアを当社は持っていると自負しています。
――北米でのトピックスは。
望月 米国カリフォルニア州トーランスにある北米販売拠点内にアプリケーションセンターを新設し、昨年春に稼働しました。ベーカリー分野用の設備を備えることで、食品用改良剤を使用した試作品を現地で作ることを可能にし、主にベーカリー分野の顧客の課題解決と、北米での売上拡大を図ります。また、オクラホマ州の冷凍ポークエキス工場「ガイモン・エクストラクツ」の製造能力を26年度から年間約2000tとします。これは現在の生産量の約1・5倍相当。成長している北米ラーメン市場の需要に対応します。販売会社Riken Vitamin US‐Aと卸店を通じて、ラーメン店や日本食レストランなどにポークエキスを販売しています。
――北米のアプリケーションセンターは千葉のアプリケーション&イノベーションセンター(A&Iセンター)と同じ機能か。
望月 機能は同じですが、現状では対象をベーカリーに絞っています。開発機能の拠点は上海、シンガポールにもあります。千葉A&Iセンターには冷菓、冷食、水産、畜肉など業態ごとに分かれた試作室と基礎研究を行う実験室を整備しています。日本国内市場は食品用改良剤と共に、調味料や海藻いった食品の両輪で攻めていく考えです。機能性油脂も日本では食品と言えます。当社は改良剤、調味料といったものを併せて提案できるのが強みです。
――社長いち押しの自社の冷凍食品は。
望月 冷凍海藻シリーズです。当社ならではのラインナップだと思います。オンラインを中心にBtoCでも広げていけたらいいと思っています。某大手ホールセールストアでは冷凍わかめを既に取り扱っていただいています。