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●水産苦戦で後半戦へ
(週刊水産タイムス:19/11/11号)
大手水産5社の上半期業績
大手水産5社の2020年3月期第2四半期業績が出揃った。それぞれの事業で多少のバラつきがあるものの、全体では日本水産、ニチレイ、東洋水産が増益。マルハニチロが減収減益で、第1四半期の出遅れをカバーするには至らなかった。極洋は増収減益。相場の下落から水産事業の利益率が低下する中で、第3四半期の天王山に突入する。
マルハニチロ、物流が増収増益
マルハニチロは、水産商事が増収も相場安で減益となった。 マグロ相場が下落し、中国向け高級商材の販売が不振。荷受は鮮魚全般の取扱高が減り、相場安や消費低迷で利益率も低下した。 海外事業は、海外ユニットが18億円の増益、北米ユニットが16億円の減益と、明暗が分かれた。 日本産青物魚の輸出事業が落ち込んだが、ニュージーランドでの漁獲が好調。タイのペットフード事業は設備増強による操業効率の改善で増益となった。 一方、北米はマダラの減枠による取扱数量減、東カナダのカニの取扱数量減、鮭鱒の販売数量減と相場下落で苦しい展開。 家庭用加工食品は、ゼリーの販売が梅雨明けの遅れで伸び悩んだが、缶詰やフィッシュソーセージは価格改定が受け入れられた。 物流事業は、首都圏をはじめとする大都市圏の旺盛な保管需要を取り込んだことで増収。燃料費調整単価の上昇に伴う動力費の増加や労務コストの上昇があったものの、減価償却費が減少した結果、利益も増えた。
日本水産、南米鮭鱒がけん引
日本水産は南米鮭鱒養殖事業など水産事業の大幅な増益で、営業利益が4.9%増となった。減収はチルド事業の取引形態の変更によるもので、「実質的にはほぼ横ばい」(同社)。 水産事業の売上高は前年並みだが、営業利益は43%増の54億円と大幅増加。 南米の鮭鱒養殖事業が一昨年の稚魚へい死の影響がなくなり、販売数量が回復。販売価格も堅調に推移した。南米鮭鱒養殖事業の増益は約30億円となった。 国内の鮭鱒養殖は稚魚の成育不良などで苦戦したが、養殖ブリの販売数量が増えて増収増益となった。 加工・商事では、国内での鮭鱒、ブリの販売が好調に推移し、利益に寄与した。北米の加工事業はスリミやフィレの販売価格が堅調で増収となったが、コスト増で減益となった。 食品事業は国内の加工事業が好調。常温食品以外は家庭用冷食、業務用冷食、農産冷食、ねり製品・ハムソーとも売上高が前年を上回った。北米も業務用冷食を中心に販売が好調。生産性の改善で増収増益。
極洋、増収も水産減益
極洋は、水産商事で鮭鱒・エビ・北洋魚の扱いが伸長したが、鮭鱒が紅鮭・チリ銀鮭の市況下落などで損失を計上した。 冷凍食品セグメント、常温食品セグメントは増収増益。調理冷凍食品はカニ風味かまぼこやエビフライなどの水産フライが伸長。缶詰は、イワシ缶・カツオ缶・サンマ缶の販売が伸びた。原料価格高騰が続くなか、価格改定や規格変更などで利益率が改善した。 物流サービスは連結子会社の会社分割・株式譲渡で売上高は前年を下回ったが、入庫貨物の確保と配送事業の強化で増益。 鰹・鮪セグメントは、カツオタタキ・マグロタタキなど加工品の販売が伸長した。海外まき網事業は魚価が下がって減収となったが、経費削減で前年並みの利益を確保。養殖事業も生育に応じた出荷を進めたことで収支が改善した。
ニチレイ、主力の加工食品好調
ニチレイは、主力の加工食品事業や低温物流事業が堅調に推移。利益面では、バイオサイエンス事業が苦戦したものの、調理冷凍食品の販売が好調に推移した加工食品事業が全体をけん引した。 水産事業はタコの市況悪化で減収減益。「売上げより採算性を重視の販売に切り替えたことや、タコの国内市況悪化が影響した」(大櫛顕也社長)。 加工食品事業の営業利益は31%増の84億円。チキン加工品や米飯類などの主力カテゴリーを中心に、家庭用・業務用ともに販売が拡大。海外子会社の業績も改善した。 低温物流事業は物流ネットワーク事業の売上げが順調に推移。コスト上昇要因が重なるなか、保管事業での高水準の在庫や業務効率化で営業利益56億円(前年比2.6%増)を確保した。
東洋水産、増収増益を堅持
東洋水産は主力の即席麺事業が国内・海外ともに増収増益となった。 海外即席麺事業は、定期的な特売などにより主力商品の袋麺、カップ麺が好調。国内即席麺事業は、6月から価格改定をしたが、カップ麺は堅調だった。 水産食品事業は鮭鱒・魚卵などの市況変動の影響を受けて販売数量が減少。売上高は149億円で前年比2.8%減、セグメント損失3100万円(前年はセグメント利益1億5900万円)を計上した。 加工食品事業は増収となったが、新工場稼働に伴う減価償却費の増加でセグメント損失。 冷蔵事業は、冷凍食品を中心とした取扱いや通関・運送等の付帯業務が堅調に推移した。売上高は増えたが、新冷蔵庫稼働に伴う減価償却費・人件費の増加でセグメント利益は減少した。
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