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この人に聞きたい:第230回
(週刊水産タイムス:10/03/01号)

築地市場卸トップに聞く

中央魚類 社長  伊藤裕康氏

 

トンネルの出口は自らの手で
マグロ、サーモンに続く第3の魚を

 3月に入り、今期の業績もほぼ見えてきた。東京・築地の市場卸各社もリーマンショック以降の消費低迷から抜け出せないまま、数量減・単価ダウンのダブルパンチに見舞われている。卸売市場の存在意義が改めて問い直されている中で、荷受会社のトップはどのようなビジョンを掲げ、どう活路を開こうとしているのか。各社の社長にインタビューした。

 ――一般的に数量が減れば単価がアップするというのが市場原理。なのに、この不況下にあって「数量減かつ単価安」というダブルパンチに直面している。
 伊藤 上半期の不振をかなり引きずっている。在庫を思い切って減らすなど、全体的に健全な形になってきたが、いかんせん物が売れない。しかも高値商材ほど動かない。取扱数量が落ち込んだままというのがつらいところ。年末商戦という最大のヤマ場を過ぎ、まだ第4四半期があるにしても、非常に厳しい1年だったと総括せざるを得ない。

 ――在庫の減少など、努力の跡は見られるのだが。
 伊藤 70億円あった在庫が30億円になれば当然、違ってくる。確かに前年に比べ利益率はよくなった。会社としていい方向にはあるのは確かだが、3月末の段階でどこにこぎつけられるかが問題。ただ、意図的に売上げを作ってみたり、ごまかしたりするようなことはしない。いかなる状況になろうとも真っ当な商売に徹していく、この基本姿勢は崩さない。

 ――あちらこちらで「デフレスパイラルからの脱出」が叫ばれたものの、実際にはトンネルの出口が見えてこなかった。
 伊藤 走っていれば通り抜けられるような類いのトンネルではない。出口を自分で掘り出す以外に、このトンネルから抜け出す方法はない。今は様々な意味で変革の時。当社としては3月末に予定されている「卸売市場を中心とした水産物流通のあり方研究会」の最終的なとりまとめも踏まえ、市場卸のあり方を根本的に見直した上で新中期経営計画の策定作業に入ることになる。そこではトンネルの出口となるべき具体的な取り組みを明確に盛り込みたい。

 ――商売の仕方も変化してきた。
 伊藤 卸売市場法の改正以来、当社においても並存してきた委託販売による手数料と買付け販売の差益が逆転し、買付けが6割以上を占めるようになった。これまでの“手数料商人”から“買付け差益商人”へと実態は変わりつつあるものの、基本的には委託体質のまま。いずれ差益体質となれば経営の舵取りの仕方を変えていかなければならないだろう。委託販売は本来の姿として大事にするが、買付け比重の拡大によって、既に在庫に対する考え方も大きく変わってきている。

 ――生産者から加工・流通業者、小売業者まで、どこも良いところがない構造的な問題。魚が売れないといっても最終的には売り方に問題があるのでは。
 伊藤 指摘されたいことは分かる。それぞれのレベルで魚食普及活動に取り組んではいるものの、動きがバラバラで成果が出ていない。オール水産を挙げた取り組みが必要で、この点は大日本水産会にぜひ音頭をとっていただきたい。

 ――具体的に需要を創出することがトンネルの出口ではないのか。
 伊藤 日本人にとって、食事のメインディッシュたりえるのは肉か魚のどちらか。対面販売を重視し、「お魚アドバイザー」を配置するなど、売り場での対応一つで活性化された鮮魚小売チェーンの成功例もあるが、一方、センター加工を主体に徹底して人を減らす作戦で、利益を出そうとする小売業者もある。

 ――大量生産、大量消費ではない時代に、全くの逆だと思うが。
 伊藤 需要創造という観点で成功例として挙げるなら、古くはマグロ、近くはノルウェーサーモン。マグロは一心太助の時代、あまり見向きをされなかったが、今では立派な魚の王様に位置づけられている。マグロはともかく、ノルウェーサーモンは政府を挙げて、きちっとマーケティング戦略に取り組んだ結果だ。マグロ、ノルウェーサーモンに続く第3の魚を育てなければならない。

移転問題は現実論で

 ――ところで築地市場の豊洲移転問題が再び暗礁に乗り上げたが。
 伊藤 まだ「見通し」の域まで到達していない。24日からの都議会で豊洲の土地買収を含めた予算案の審議が始まった。築地での再整備を求める人の気持ちも全く分からないわけではないが、現実論として約1万人が働きつつ、同時並行で市場整備を進めるのは不可能。そう考えると引っ越すことになるが、いずれにしても政治論議に巻き込まれるのは残念であり、前向きな議論と一日も早い結論を切望している。 

 ――中央魚類グループ以外に、全水卸会長をはじめとする多くの公職を兼務し、体がいくつあっても足りないと思うが。
 伊藤 今年は卸売業界にとって「改革元年」と宣言した。時代の変わり目だから特にそうだが、考えること、考えなければならないことがいっぱいある。このことはある意味で幸せなことだと思っている。

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