この人に聞きたい:第591回
(週刊冷食タイムス:17/06/06号)
「永続と繁栄」図り、社会に貢献
日東ベスト(株) 代表取締役社長・営業本部長 大沼 一彦氏
6割占める肉カテゴリーをさらに強化
日東ベスト(株)の大沼一彦氏は社長に就任して丸4年。それまで生産畑一筋で営業面の経験は皆無、いうなれば「営業は右も左も分からない状態」の滑り出しだった。しかし、根っからの明朗闊達、果敢な行動力、温厚篤実な人柄が信頼され、今ではすっかり全国の取引先と関係を築き、業界での存在感も増している。推されて業務用有力メーカーの集まりである「学校給食用食品メーカー協会」の会長も務める。本紙にとって初めての単独インタビューだが、企業理念に始まり事業現況、将来展望へと余さず語ってくれた。なかでも、前期の業績が減収増益で終わった事について、減収したのは営業の力不足だと指摘、今期は「必ず増収する」と覚悟のほどを示した。
――社長歴4年、どういう会社をめざしているのですか。
大沼 わが社のめざすところはまさに社是に謳っており、それを順守するのみです。すなわち「食品産業の分野において広く社会に貢献し永続と繁栄のもとに企業を構成する人々の理想を実現することにある」。
――永続と繁栄を図ることにより社会に貢献し、理想を実現すると。
大沼 企業が社会にとって必要なものであるという存在感が重要なのです。存在感があれば社会に貢献できるはず。ただ、企業は永続し繁栄することが重要。そのためには成長し続け、適正な利益を上げなくてならない。いずれも理想を実現するために必要条件なのです。
――つまりは市場環境の変化に対応していかねばならない。
大沼 環境対応力のない企業は滅びるのみです。人口減で国内の消費マーケットがシュリンクしていくのなら、生き残るために海外に目を向ける必要がある。そうでないと永続性を保つのは難しい。
営業面、前期の反省と修正に力減収増益の「減収」重く受け止め顧客に密着し、売上げ増へ提案を
――日東ベストの強みは?
大沼 まず、肉カテゴリーです。全体の60%が肉関連であり、原料調達に始まり商品、技術面の強みがあると信じている。ただし、強みは磨き続けることでさらに強みとして維持していけるわけで、肉加工の総合力を一層強化していくべきと考えている。
――業務用一筋に歩んだのも強みにつながっているのでは。
大沼 創業以来、冷凍食品は業務用一筋で歩んでおり、業務用市場で築いてきた得意先との信頼関係の絆はとても強いものがある。そして当社がオーナー性をもった会社であることも、生販の一体感が強いといういい面で発揮されている。
――業務用はつねに取引先との提携のもとに開発や生産が行われることが多い。
大沼 つねにユーザーのニーズにきめ細かく応えた商品の開発、販売に努めるのはもちろんだが、安全安心が最優先に担保されなくてはならない。そのために当社では研究開発部門に100名ものスタッフを配置しているのです。
――前3月期は減収増益だった。
大沼 売上高が減少したことを重く受け止めている。利益は原料調達面でフォローの風が吹いた部分があるが、売上げ減は当社の営業努力が不足していた証であり、反省し修正しなければならない。
――売上高は連結で4.0%減、冷凍食品売上げだと2.2%減だった。
大沼 減収は、つまりは顧客の支持が得られなかったことに尽きる。お得意先がどういう商品を求めているのかもっと的確にとらえ、提案行動につなげていかなければならなかった。的を射た営業活動や提案をしっかり行った結果が売上げであり、その結果を重く受けとめなければいけない。
――今回の営業幹部の交代も要因はそこにあったのですか。
大沼 営業本部長、副本部長は定年退職したので、私が営業本部長を兼務する。副本部長は各々東日本と西日本地域を統括する。心機一転、お客様の声を反映した販売を徹底するよう求めていく。会議も営業は営業だけでなく管理も加えて横断的な会議を行い、お客様情報の共有化を進めること、そして行動のスピードアップを求める。
――人手不足が問題化しているが。
大沼 雇用問題や働き方改革が問題化しているが、もっとも大事なのは一人ひとりの力を引き出すこと。生産部門の全体会議には県内工場を中心に協力社員以上の従業員約1000名が一堂に会して、小集団活動の発表を行う。やってよかったことは情報共有するのがねらい。皆が働く喜びを共有して目標達成を図っていく。一人ひとりが意識改革をして成長していく、それが会社の繁栄につながればいう事ない。
――働く意識を変え、働き方を変えるということですか。
大沼 時代は変わり、労働市場は買い手市場から売り手市場になった。当社が応募者を選ぶのではなく、応募者が会社を選ぶのです。働きやすい快適な職場を提供しなければならない。山形工場は敷地内に芝生や樹木がたっぷりあって気持ちを和ませくれる。食堂も広くて眺望に優れ、快適性が高い。採用してやるという上から目線でなく、働く人の満足、働き甲斐のある環境整備が必要です。
――高齢化対策は。
大沼 60歳定年でも65歳までモチベーションを維持して働ける人には働いてもらいたい。だけど先輩風を吹かせたり、厄介者になるのは困る。支店長の経験者だったら一歩退いて支店長をバックアップする、もっとお客様のほうを向いて営業しようよ、展示会はこういうことを準備してとか、豊富な経験を活かして役立つことがいっぱいある。
――面子やプライドでなく、率直なアドバイスができれば現場から喜ばれますね。
大沼 現場の連中も年寄りは邪魔だ、やりにくいと言ったら何も新しい道は拓けない。女性の活用にしても「営業に女性は要らない」と突っぱねたのでは何も生み出せない。営業の教育に3年かかるのに、3年経つと女性は結婚だ、やれ出産だと辞めてしまうから困ると。すべてネガティブにとらえたらダメ。工夫して何とか1年で戦力化できないか。固定観念にとらわれず発想を変えることで道は拓けてくると信じている。
――社長が営業本部長を兼務している。元々生産畑で営業の経験は皆無だった。
大沼 工場の再編成、建屋の老朽化への対応、フロン対策など大きな問題は方向性を示していくが、生産部門のポイントは「生産がコストセンターだよ」ということ。コスト競争力をつけるのが生産の役目だ。機械化するのに機械に明るい人材が不足しているのなら設備に明るい人材を中途採用で採ることも考えたい。
営業は素人だけど素人だから見えることもある。利益を上げるのは大事だけど売上げを減らした縮小均衡は駄目。営業たるもの、得意先の問屋さんがいかに売上げを伸ばし利益をだせるか、そのために生産的な提案をどれだけ出せるか、それが足りなかったから前期は減収になったし、今期はそれをしっかりやって増収させる、そういう営業マンになってほしい。営業本部長として何よりも増収という目標達成に全力を傾注していく。