この人に聞きたい:第681回
(週刊水産タイムス:19/04/01号)
卸の共同事業で経費削減に成功
中央魚類(株) 代表取締役会長兼CEO 伊藤 裕康氏
――東洋水産創業者の森和夫氏と、極洋の志水廣典元社長のポートレートが会長室に飾られている。
伊藤会長 私が敬愛するお二人です。若い頃、冷凍部に所属していましたが、直属の上司と森氏が親しく、私もかわいがって頂きました。雲の上の存在でしたが、挨拶に行くと昔話をしてくれました。中央魚類の株主になって頂いたり、後年豊海の冷凍工場を譲り受けたりお世話になりました。
極洋の志水さんにも大変お世話になりました。サケの仕事でアラスカへ旅した際、偶然ご一緒になり、アンカレッジ、ジュノー、シアトルを2日間、二人旅をさせていただいたものです。
――築地市場の移転問題には長年取り組まれてきた。2年遅れで豊洲市場が開場したが。
伊藤 私も荷受業界に入り約60年経つが、そのうちの50年近くは市場移転の問題に関わってきた。最初の計画から見ると、長い歴史があります。
先頭に立って取り組み始めたのは、東都水産の関本幸也氏の後を引き継いでから。
――豊洲へ移転しそろそろ半年が経過する。
伊藤 移転後の状況はまずまず。ひと落ち着きしたところ。
市場荷受は基本的に競争原理の下で商売していますが、豊洲移転では水産卸7社が共同で冷凍機や食堂、会議室、ろ過海水装置などを設置するなど、株式会社を作り共同事業をだいぶ行った。数字的に結果が出つつありますが、各社バラバラにやっていた時と比べて経費削減もなり、今までにない取り組みができたことが一番の収獲となりました。
――豊洲市場の今後の課題は。
伊藤 おおむね上手く機能している。移転してひと区切りつきましたので、豊洲市場を今後どう活用し、仕事を広げていくかが課題となっています。夢だけは前向きに持つようにしています。
職場環境としては快適。外から見ても市場とは思えない建物。温度管理や衛生管理にもだいぶ皆が慣れてきました。
――水産流通の将来像はどのように思い描いているか。
伊藤 RFID(ICタグ)の活用やキャッシュレス化が広まりつつありますが、卸売市場においてもその波が来る可能性があり、市場決済も変わるでしょう。
情報システムが急速に変化しています。5年後、10年後に水産流通がどのように変化しているかわかりませんが、このような激動の時代に生きていることは幸せだと思います。
水産業界で60年。貴重な人生を過ごしています。
――新規格となったマリンエコラベル(MEL)を取得した。
伊藤 MELの認証を取得したのは当然の流れ。MSCも認証取得した。MELには創立の時から関わっています。