この人に聞きたい:第880回
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「おふろcafe 白寿の湯」 施設内の養殖場 |
鎌田氏はプロジェクト立ち上げ当初から養殖事業に関わり、対象魚種としてサバを提案したのも同氏。21年10月の養殖開始以降はいくつものトラブルを経験しながら試行錯誤を繰り返してきた。亜硝酸中毒による大量死で事業が振り出しに戻ったこともあった。
新規事業の立ち上げや一次産業に対する興味・関心はあったものの、水産業そのものに対する熱意はそこまで高いものではなかったという。しかし、鯖やグループが和歌山県串本町で養殖する「うめぇとろサバ」を生で食べた時、あまりのおいしさに衝撃を受けた。現在は6月の本格出荷開始に向け、全力で養殖に向き合っている。一匹でも多くのサバを施設内の食事処で提供したい考えだ。
「海なし県である埼玉でサバの生食を提供することに意味がある」
そう強調する鎌田氏が実現したいのは「サバ食文化の改革」であり、養殖魚生産者としての事業拡大が目的ではない。海なし県で高品質な生食サバの提供を実現することで、国内外の広い地域にインパクトを与え、取り組みの輪を広げる狙いがある。地元企業からの視察依頼にも積極的に応じている。
また、「海なし県にも美味しい魚を」の合言葉のもと、全国の市場から取り寄せた旬魚を捌いて提供する「海の幸さばき会」にも注力している。これまでにも、マグロやブリ、イカといった海産物の価値を内陸の温浴施設から発信してきた。「自律自走」を信条とする鎌田氏は同じ水産女子PJメンバーと連携したイベントも既に手掛けており、さらなる連携強化に意欲を示す。
「消費者との接点を持つ温浴事業の強みを生かし、水産事業者と協業することで相互発展を図りたい」