この人に聞きたい:第982回
(週刊冷食タイムス:25/05/20号)
今や成長戦略の主役に
(株)M&A総合研究所 企業情報第五本部第一部 マネージャー 山本 皓陽氏
(やまもと・こうよう)中央大学法学部を卒業後、SMBC日興証券で相続の資産運用などのソリューション営業に携わる中で事業承継問題の深刻さを目の当たりにし、M&A総合研究所に入社。水産関連会社のM&Aを複数担当している。27歳。
中小企業で増えるM&A
M&Aと聞くと年齢によっては昔の「乗っ取り」を連想する人もいるが、近年は毎年件数が増え続け、企業成長戦略に欠かせないものになっている。
――食品業界でも増えている?
山本 そう感じます。物流などコストが高騰し単独では戦えない中小企業が大手と提携したいというケースが目立ちます。
――後継者不足が主因では?
山本 それもありますが、地域に細かく対応したい大手流通が地域流通会社を買収したり、スーパーをメインとする企業が自社製造機能を持つために中小製造業を買収したりするケースもあります。
――ウィン・ウィンが目的と。
山本 実際に手掛けた事例では、独自の技術を持つ地域水産加工会社が大手食品メーカーの傘下となって販路が劇的に広がり、買い手側は商品のラインナップが増えました。中小水産加工企業の場合、水揚げが減って不安定な原料価格が大きな問題ですが、それも大手傘下に入れば仕入れ価格の平準化ができます。東日本大震災で被災した会社のマッチングも担当しましたが、地域の活性化に貢献できたと自負しています。
――どのように相手先を?
山本 当社から声をかけるケースもありますし、相談される場合など様々です。海外M&A先を求めるケースも少なくありません。昨年10月にはシンガポール法人を開設しました。当社初の海外拠点でアジア全般を見ています。アジアでも後継者不足がけっこう大きな問題になっています。
――同業のマッチングが多い?
山本 スーパーがコスト改善のためにさばの一次処理会社をM&Aをするような異業種間の事例もあります。
――うまくいかなかった事は?
山本 基本的にミスマッチはほとんどありません。稀にですが、互いに自社の良くない部分を隠したまま踏み切ってうまくいかなかったという事はあるようです。
――相手が見つからない事は?
山本 それはエリア的な問題がほとんどです。当社の場合、譲渡企業様は完全成功報酬制ですから、M&Aが成立するまでは料金が発生しません。
――M&Aの仕事をしていて今まで一番おもしろかったことは?
山本 ECを手掛けている会社と冷凍食品の技術を持つ会社のマッチングです。意外な組み合わせですが、EC企業が仕入先に技術コンサルできるようになり、より高品質で低価格な品揃えができるようになりました。
――買収のイメージは変わった。
山本 中小企業のM&Aは戦略の1つになったと思います。