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今週の一本

●マルハ・ニチロ来年10月統合  井出 万寿男
(週刊水産タイムス:06/12/18号)

売上高1兆円を視野に
双方の機能を共有・補完

 マルハグループ本社(五十嵐勇二社長)とニチロ(田中龍彦社長)が来年10月に経営統合、連結売上高で1兆円の巨大水産会社が日本に誕生する。11日開いた両社の取締役会で「株式交換による両社の全面的な統合を対等の精神で行うこと」を決議。基本合意書を締結した。
 水産物のグローバルな調達と商事に強みを持つマルハグループと、食品の開発、製造に強みを持つニチログループが一体となることで、規模の拡大と機能の相互補完を行いながら、生産や販売体制の効率化を図る。開発から調達・製造加工・販売・物流保管までの一貫体制(サプライチェーン)の強化も目的の一つで、両社では「強みとする分野に重複部分があまりないことから、充実した商品ラインナップを構築できる」(五十嵐社長)としている。

 経営統合に伴い、持株会社であるマルハグループ本社は「マルハニチロホールディングス」に社名変更。同社を継承会社として、ニチロと株式交換することで、新たな両社統合持株会社とする。代表取締役会長に田中龍彦ニチロ社長、代表取締役社長に五十嵐勇二マルハG本社社長が就く。
 株式交換を経て、事業再編による事業統合を行い、新企業グループとなる。新統合持株会社と主要4事業会社(水産、食品、畜産、物流保管)、共通機能会社の体制を計画している。2010年をめどに売上高1兆円、営業利益300億円(売上高営業利益率3.0%)を目指す。
 新統合持株会社化は対等の精神で行われるが、2007年10月1日付で完全親会社をマルハ本社、ニチロを完全子会社とする株式交換を行う。また、新統合持株会社はグループ企業を統括し、グループ全体の経営戦略、財務、その他の横断的機能を持ち、事業ポートフォリオ経営によりグループの企業価値の最大化を図る。
 株式交換比率は第三者機関の評価を踏まえ、両社協議の上で決定。マルハ本社は「マルハニチロホールディングス」として上場を継続、ニチロは19年9月までに上場を廃止する予定。「マルハニチロホールディングス」の水産事業部門の売上高は約6400億円。両社が目指している水産加工をさらに推し進め、収益アップを目指す。水産商材のフルライン化とシェアアップで、グローバルな漁業・養殖、加工、販売および海外調達の機能強化を図る。
 食品事業部門は売上高約2700億円。商品ラインナップの拡充による業容拡大を図るとともに、生産部門と販売部門の再編により収益アップを目指す。研究開発、製造技術の交流により新商品開発力の向上を図る。
 畜産事業部門は売上高約500億円。原料買付、販売から加工品の製造販売までのサプライチェーンが確立でき、北海道から九州までの全国販売ネットワークが構築できる。
 物流保管事業部門は売上高は約220億円。保管能力は総トン数59万tで、ニチレイグループ、横浜冷凍に次ぎ業界3位となる。集荷数量の増加を目指すとともに、効率的な事業運営を目指す。
 このほか管理部門は、両社の重複機能の効率化により、本社部門を中心とした管理コストの削減を図る。シェアードサービス会社の充実・活用、人材の最適配置を図る。また、研究開発や品質管理については統合によるノウハウの共有により、一層の強化を期待。おいしさ、簡便さへの追求や、食の安心・安全や環境問題に対応した品質の高い新商品の開発力を向上させる。

記者会見における質疑応答

――経営統合は、いつ、どちらから持ちかけたか。

五十嵐 一緒になったらどうかという考えはもともとあった。6月の株主総会を終わったら打ち合わせをしようということになり、7月下旬から協議してきた。双方の担当役員をキャップに2人ずつの担当者を含めた計6人でプロジェクトチームを作り、経営統合の効果をデータ的に調べ、検討してきた。

田中 「以心伝心」であり、お互いに煮詰まった段階で動き出した。

――社員に動揺はないか。

五十嵐 社風が違うといえば違うわけで、何らかの問題は出てくると思うが、乗り越えられると思う。社員には今日(11日)、メールで送った。

――シナジー効果は本当にあるのか。

五十嵐 水産商事でのマイナスはあり得ない。販売面での効率化が期待できるだろう。少なくとも現状の販売力は継承できる。

――人員削減はあるのか。

五十嵐 事業拡大による雇用確保は先決で、人員削減は考えていない。

――業界再編はかねてから言われていたが、なぜ今、経営統合なのか。

五十嵐 機が熟したということ。市場が成熟・飽和状態にある中で、国内市場でのシェア拡大は難しい。国内は新商品の開発による拡大しかない。経営統合により事業拡大を手っ取り早くできる。

――2位の日本水産をさらに引き離すことになるが。

五十嵐 日水さんは上期の業績も好調で、マルハにはないものを持っている立派な会社。決して楽観はしていない。

田中 追撃態勢はできた。日本市場はこれまで強かったが、市場のグローバル化の中で、プレゼン力が弱まるとサプライソースが離れていくことも懸念され、不利な立場になる。

――今後、価格交渉力は強まるか。

田中 100円の切り身が経営統合によって150円で買ってくれればいいが、それはあり得ない。価格交渉力に変化はないと思うが、提案力は増すだろう。

――ブランドに変更はあるか。

田中 プロジェクトチームを中心に検討していくが、「マルハ」「あけぼの」とも歴史があり、変えるつもりはない。新商品については別途検討する。

――ニチロは来年100周年だが、記念事業はどうするのか。

田中 大げさなことをするつもりはなかった。100周年といっても通過点の一つであり、その後の20年、30年が大事。100周年を経営統合という形で迎えたことを前向きに捉える。

――財務体質は改善するのか。銀行との関係は。

五十嵐 両社とも脆弱だが、処理すべき大きな問題はなくなっている。今後の収益力アップでさらに改善を加速したい。サプライチェーンの担い手として荷受に強くなってもらいたい。金融機関は両社で重複しており、銀行との関係性は今後も変わらない。

――海外事業の収益が悪化していないか。

五十嵐 前年はスリミが良すぎた。今期も昨年ほどではないが、例年からみればまずまず。海外エビ合弁事業は漁獲量の減少とEUへの輸出規制で苦戦したが、全体としては悪くなったと思っていない。日水の海外事業は4〜5年前の投資が果実となった。今回の経営統合に関して外資からの防衛意識はない。

機は熟した 業界再編へ大同団結

 マルハG本社五十嵐勇二社長、ニチロ田中龍彦社長は11日の記者会見で、経営統合の背景や目的、統合効果について語った。

マルハ五十嵐社長

 世界的な水産物需要の拡大と国内市場の飽和感、小売・中間流通の集約化・大型化などの流通再編を考えたとき、水産・食品業界においても大同団結が必要であり、経営統合が不可避と判断した。
 マルハグループは強力な海外ネットワークを基盤とした圧倒的な調達力を背景に、荷受事業再編による国内販売網の強化、海外販売・加工への積極投資などを通じた水産事業の成長が最大の戦略目標であり、ニチログループも事業の重点を食品事業、中でも冷凍食品に置き、現在まで蓄積された生産技術、商品開発力を生かし、規模を拡大するとともに、収益力の向上が最大の戦略目標。両者の社風は似ており、違和感は少ないと考える。
 マルハは魚肉ハムソーなどの水産ねり製品、ニチロは冷凍食品に強く、現状では水産缶詰以外に重複部分があまりないことから、充実した商品ラインナップを構築できる。冷食では業界3位、缶詰は2位になる。水産・食品事業をコアとした、世界の食へ貢献する水産食品企業グループ、21世紀のエクセレントカンパニーを目指す。

ニチロ田中社長

 環境認識は五十嵐社長と全く同じ。食品メーカーに対する要件・要求が年々厳しくなっていく中で、求められる商品開発力、技術力、原料調達力も高度化している。水産事業も世界的な水産物需要の拡大で、原料調達、販売市場もグローバル化していかないと生き残れない。
 ニチロは売上高3000億円、経常利益100億円を目指してきたが、3000億円規模になれば新たな時代の中で盤石な体制といえるかどうか。マルハとの経営統合によって、パズルの小間がしっくりいくように、強い企業体の構築が実現するものと期待する。

コメント

切磋琢磨を --- 日本水産
 水産・食品いずれの業界にとってもインパクトのある出来事。それぞれの業界が活性化することを期待している。両社と当社とビジネスモデルが異なっており、当社の経営方針に変更はない。今後は切磋琢磨しながら、よきライバルとして水産業界のプレゼンスを高めていきたい。

経営方針変更なし --- 極洋
今回の両社の経営統合により、当社グループの経営方針に変更ありません。


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