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●大手水産の株主総会
(週刊水産タイムス:08/06/30号)
マルハニチロ 計画との乖離で厳しい追及 日本水産 来年の配当を心配する人も ニチレイ 「最強の冷凍食品」に拍手 極洋 活発質疑で例年にない長丁場
大手水産会社の株主総会が25〜26日と相次いで開かれた。前3月期の決算が今一歩だったことから、事業環境や業績動向について突っ込んだ質問が目立ち、これまでに比べると長時間に及ぶ総会となった。
マルハニチロHD マルハニチロホールディングスは25日午前10時から東京都千代田区の砂防会館別館で開催。約300名の株主が出席、活発な質疑応答が続き、午後12時20分に終了した。 五十嵐社長が議長となり議事進行。質疑応答では「過去3カ年の経常利益計画が実績と大きく乖離(かいり)しているのはなぜか」という質問に対し「世界的な魚価高や輸入コストの上昇を販売価格に転嫁できなかった」と回答。 また、商品開発に関する質問には坂井道郎取締役が「ライフスタイルの変化を的確に捉えることが大事。加工食品については簡便・健康・安心にポイントを置き開発。今春、マルハの原料調達力、ニチロの加工技術を生かした『ちくわの天ぷら』を開発するなどのコラボレーションもスタートしている」と説明した。 天洋食品事件に伴う影響については「マルハが販売していたレトルト商品2品、128万食を回収。1億6500万円の費用がかかった。市販用冷凍食品への影響も大きく、『あけぼの』ブランドと、子会社アクリフーズの2社で30億円強のマイナス。市販用冷凍食品は今も前年の88%で推移しており、完全回復はしていない」とした。 このほか、「利益をあげ増配を願う」「介護食を手掛けているが、まず未病段階の食事から取り組んではどうか」「缶詰の自販機があると便利」などの意見や要望が出され、為替差損の状況や、元社員の不祥事に対する質問もあった。 決議事項の余剰金処分、取締役13名選任、監査役1名選任は満場一致で承認された。
日本水産 日本水産は26日午前10時から東京・日本橋蛎柄町のロイヤルパークホテルで開いた。用意した800席はほぼ満席。前3月期の業績で営業利益が大幅に落ち込んだことから、日水グループの現状に鋭く切れ込む、核心をついた質問が目立った。3人の新任を含む取締役17人の選任に関する決議を了承、1時間46分で終了した。引き続き、日水製品の試食会も行った。 12人の株主が質問に立った。地震や魚病の被害を受けたチリのサケ養殖事業、不振が続くインドネシアのエビ養殖事業が大きな損失を招いたことに対し、責任を問う声が出たが、垣添直也社長は「チームで経営するとの考えを持っており、担当役員だけを辞めさせればいいとは考えていない。チリは前年まで好業績を上げており、我々の手が及ばないところで予期せぬ事態となった。インドネシアのエビ養殖に対する検討も大詰めを迎えている」と説明した。 「売上総利益に占める営業利益が低すぎる」との指摘に対しては「食品産業と他業種とでは単純比較できない。営業利益率5%をめどに事業の高度化、高収益化を図っていく」と説明。株価に関するコメントは差し控えた。 配当は1円増配の10円となったが、株主は「固定資産の売却分で得た利益。本業で配当できる状況になく、来年が心配」と質問。「長期的な視点で配当を決めた。来年は固定資産を売却しなくても配当できるようにする」(佐藤泰久専務)と応じた。取締役17人は多いという指摘について垣添社長は「次の世代の経営者づくり、世代交代を常に考えており、ある程度の糊代(のりしろ)がないと、ダメージが大きい場合もある」と答えた。 最後に、魚秀とマルハニチログループの神港魚類によるウナギ産地偽装事件に関して、女性株主は「日水は絶対にしないでもらいたい。そうでなければ株を手放さざるを得なくなる」と要望。垣添社長は「社長として最も心を砕いているところ。@嘘をつかないAごまかさないB自分の役割から逃げない――という指針を貫き、“正しい仕事”を続けていく」と力説した。
ニチレイ ニチレイは25日午前、東京・大手町のパレスホテルで開いた。約600名が出席。前期業績を画像とナレーションで事業報告。議長を務めた浦野光人会長が対処すべき課題として、特に冷凍食品事業の回復策と低温物流事業の今後の方向に絞って詳しく説明。「中国天洋事件で落ち込んでいる冷食市場を立て直し、徹底した品質管理で生産した中国製品を正しく説明しながら“最強の食品”である冷凍食品の価値を高める」と強調し、株主から拍手がわいた。 株主9名から様々な発言が出た。海外事業の展開方針については、村井利彰社長と相馬義比古取締役専務執行役員(ニチレイフーズ社長)、長谷川寿同専務執行役員(ニチレイフレッシュ社長)が説明。相馬氏は中国、豪州の基盤に加え、欧米、アジア進出のため市場調査していると報告。長谷川氏は中国に合弁で販売会社を近日中に設立することを明らかにした。山東省日照市に会社を置き、香港、中国南部を中心に水産品を販売する。 同社の冷凍食品、カロリーコントロール食などを評価する発言や、今後の事業展開に期待を寄せ、激励する株主の発言も多かった。 取締役10名の選任など全議案を承認し、約2時間で総会を終了。引き続き別室で同社品の試食提案を兼ねた懇親会を行った。
極 洋 極洋は26日午前10時から東京の銀座ラフィナートで開催。「役員賞与支給」に関して株主から反対動議が出たが、大多数が原案に賛成したため可決し、動議は否決された。株主100名弱が出席、活発な質疑応答が続き、1時間52分と例年にない長丁場となった。 福井清計社長が前3月期決算報告を約40分間説明。株主から、25日明らかになった他社のウナギ偽装事件に関する質問がでたが、「当社の福岡支社が2年前から事件当該企業の魚秀と取り引きがあることがわかったが、扱いブランドが異なり偽装の事実はない」(石川泰久専務)と回答。「本社以外からの仕入れには充分注意するよう、各支社に再度通達した」ことを説明した。 また「燃油価格の高騰で近海漁業も遠洋漁業も厳しくなっているが、ぜひ養殖事業に取り組んでほしい」という要望も出て、「昨年から高知でマグロの養殖事業をスタート。1万尾の幼魚が4000尾弱残っており、8kg程度まで成長している。獲る漁業から育てる漁業にも力を入れている」(福井社長)と説明した。 このほか、「ホームページ上で投資家向けの情報が掲載されているが、数字の羅列だけでなく、様々な情報発信がほしい」、「力を入れているという冷凍寿司を試食したい」、「BtoCビジネスの感覚がない」、「受付に自社製品を展示したり、試食できるような工夫がほしい」などの意見も登場した。
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