●通期の減益は決定的
(週刊冷食タイムス:08/12/02号)
原料高、予想上回る 売上げは回復基調 値上げしても逆ザヤ
冷凍食品の有力メーカーは下期の売上げ回復を期待する一方、営業利益は多くのメーカーが上期以上に悪化すると懸念している。天洋食品事件に続く様々な安全安心問題の影響を引きずっているだけでなく、下期は原料高の影響を予想以上に受けると見ており、値上げ効果を上回る原価高を多くのメーカーが見込んでいる。有力メーカーの上期の冷食事業と下期の予想、通期見込みなどをまとめた。
ニチレイは原料高の通期の影響を当初見込みの77億円から108億円に変えた。これに対し値上げ効果は101億円で当初見込みを上回るが、逆ザヤ。 引き続き好調な業務用を軸に増収を図り、通期の冷食は3.2%増1683億円と見込んでいる。中国産いんげん事件で売上げ30億円、営業利益で4億円の影響を織り込んだ。 味の素冷凍食品は国内の事業展開を下期さらに強化し、通期で利益確保を図る。「ギョーザ」が着実に上向きを続けており、業務用も中食、惣菜向けを中心に引き続き売上げ好調。製品価格改定の効果も加え、通期で収益改善につなげる。 加ト吉は詳細を公表していないが、親会社日本たばこ産業の上期食品事業は天洋事件の影響を大きく受けたものの、加ト吉グループを連結したことにより売上げは53.5%増(814億円増)の2334億円となった。しかし経費増、原料高騰と加ト吉連結に伴うのれん償却があり、営業56億円の損失。 マルハニチロ食品は冷凍食品の通期連結売上げを1200億円、営業利益49億円と見込んでいる。 原料高と、価格改定が天洋事件に伴い6月にずれ込んだため上期の冷食利益は17億円だったが、下期は倍の32億円を見込む。
日本水産は冷凍食品を含む通期の食品売上げを前期比89億円増の2607億円、営業利益は前期比16億円減でゼロの厳しい見通し。北米の水産調理冷食事業が苦戦した。
大冷は中国産調理品の不振で上期売上高は3.8%減127億6700万円と減収を余儀なくされた。 骨なし魚は3.5%増で上期ほぼ40億円を確保した。下期から新開発商品の販売を強化し通期目標を確保したい考え。
味のちぬやは国内生産の強みを発揮し、上期の5%増に対し下期は16%増、通期でも二ケタ増の122億円を見込んでいる。ただし原料高などにより利益は厳しいと見ている。
ケイエス冷凍食品は通期で売上げ6.2%増108億1200万円と増収だが、原料高の影響を見込み利益は6.8%減2億1300万円と減益を予想する。
不二製油の冷食を含むたん白食品事業は大幅な利益改善が進んでいる。
アクリフーズは下期に「おいしいにっぽんシリーズの導入促進、年末需要期に向けたピザ・グラタン類の拡売」(同社)に取り組み、市販用で7%増、業務用で10%増を見込んでいる。これにより通期で市販用は前年並、業務用は5%増、合計前年並を計画している。
日本ハムデリニューズは下期に「好調な国産原料使用商品の拡販、シェフの厨房シリーズの定着、おかずカテゴリーの強化」(同社)で24%増を見込む。
日清フーズの上期市販用は本紙推定で2%増。「個食タイプのパスタが元気に伸長したのに対し、弁当ナポリをはじめとする弁当商材が不調。値上げに伴う消費者の生活防衛意識の高まりが影響している。半面、二極化という要素も大きく、高価格帯パスタのファインセレクションを強化する」(同社)方針。
極洋は下期に「直系工場を中心とした国内工場生産品の販売に軸足を置き、コストパフォーマンスの優れた商品の開発・販売に注力する」。 水産・加工品は「量販惣菜の拡販効果により、すしえび、すしいかが好調。中国の切身、焼魚、煮魚は不調」。下期は「得意とするすしネタに加え、ロイン、フィーレなどの刺身製品の加工を強化。また国内自社工場への集約、強化に注力する」方針。
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