●中国の冷凍食品事情
|
三全食品の新工場の一部 (写真奥が立体自動冷蔵庫) |
08年1月30日に発覚した天洋食品事件の影響から、中国に進出する日本の冷凍食品メーカーは旧正月(2月7日)入りと前後して生産を休止。例年ならば旧正月明けから殺到する日本からのオーダーが実質的にストップした。日本国内の需要も冷え込んだままで、しばらくの間は生産調整が続いた。
3月中旬、中国各地で検査業務を担う政府機関CIQ(中国国家質量監督検験検疫総局)から、輸出工場の検査基準を強化する旨の連絡が入り、現地での生産再開は大幅に遅れた。CIQの通知内容が地域によって異なったことや、検査の強化で従来の2倍以上も出荷に時間がかかり、日本の在庫が品薄になるなどの混乱も各地で発生した。
4月になってようやく回復基調が見え始めてきたものの、5月に鶏肉から合成抗菌剤ニトロフランが検出され、中国からの鶏肉加工品の輸出が再びストップ。8月8日の北京オリンピックという国家レベルの一大イベントを控え、必要以上に慎重な対応をとられたことで、動き出したのは五輪開会式の後だった。
続いて9月、乳製品へのメラミン混入が明らかになり、中国の食品産業は大混乱。乳幼児の健康被害が報道されると、中国の消費者の食品に対する不信感は絶頂に達したという。「メラミン事件に関しては中国の方が日本よりも大騒ぎになった」と日本の駐在員は口を揃える。これに世界同時不況が追い打ちをかける形となった。
日本への輸出に頼る日系冷凍食品工場の大半は「失われた08年」と表現。09年の目標を「本来は08年達成の計画だった数字の取り戻しが第一」と答える。
中国トップ2社が新工場建設
中国で調理冷凍食品の2大企業と言われる三全食品と思念食品(ともに河南省鄭州市)は元気一杯だ。両社とも中国国内で販売する市販用冷凍食品が主力商材。餃子やワンタン、湯圓、粽、中華饅頭などが主要都市の大規模店舗には必ず商品が並んでおり、2社の市場占有率は50%前後と推測される。さすがに、「中国も経済不況の影響はある」と認めるものの、両社とも08年売上高は「二ケタの増収」という。
三全食品は本社近隣に約3億5000万人民元(約52億5000万円)を投じて餃子と湯圓の新工場を建設中で2010年完成、年間10万tの生産能力を持つ。本社工場が手づくり中心なのに対して「新工場は機械化を進め生産効率をアップ」(同社)。併せて大規模な立体自動倉庫も建設中だ。
思念食品も2012年完成をめざして新工場の建設をスタートする。やはり原料処理から、餃子の包餡、包装まで自動化する計画。また2万5000t規模の保管能力をもつ立体自動倉庫も併設する計画で、考え方は三全食品と一緒。
両社とも欧米への輸出は5%程度あるが、対日輸出の実績は実質ゼロ。ただし以前から対日輸出許可の申請を続けてきた三全食品は「4月に日本の農水省が検査に来る予定だ」という。
この大手2社が今後の課題として掲げているのが、「業務用ルートの開拓」。既にホテルやレストラン、ファストフーズなどの業務用分野も手掛けてはいるが一割にも満たない規模。両社とも「日本における冷凍食品発展の歴史をみれば、今後中国市場で大きく伸ばすには業務用市場の開拓が不可欠だ」と声を揃える。