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今週の一本

●どこまでいくのか低価格化 第2弾
小売業の視点「PBの敵はPB」  越川宏昭 (週刊冷食タイムス:09/06/02号)

NBは価格以外の何で競争するのか

 本紙5月12日号で「どこまでいくのか低価格化」と題してオピニオンを掲載した。「安売り常態化、PB商品台頭」の見出しのもとに、冷凍食品業界が低価格化の荒波にさらされている現状、とくにスーパーやCVSにおいてNB商品より二割以上安いPB商品が増えている状況を示し、「これはPBによるNBへの挑戦ではないか」、さらに有力メーカーがPB商品の生産委託を受けていることをからめ、「NBをもつメーカーの自縄自縛といえないか」という主張を述べた。これに対して大手小売チェーンの幹部から「PB戦略は対NBではなく、ライバル小売業への対抗策、利益の確保策である」との意見が寄せられた。そこで「どこまでいくのか低価格化・第2弾」では小売業の見方も斟酌しつつ、業界の課題について考察してみたい。

安全・おいしさ・便利・健康の追求を
 全品特売はながらく冷凍食品業界の最大難問だった。これについて、本紙をはじめ業界の大勢は、量販店のバイイングパワーを要因にしてきた。確かに当初はそういう部分があった。しかし、現在は全品特売を小売業のせいとばかりはいえない。確かにメーカーは「当社はお付き合いできません」という抜け駆けを許されない。ただ、前回も指摘したように「長いものには巻かれろと安売りを黙認している」、あるいは「安売りを利用して工場稼働率の向上を図っているのが業界の現状だ」というのは事実である。
 なぜならば、全品特売に対して体を張って抵抗したメーカーなど聞いたことがない。自らの首をかけて抵抗した社員や幹部も皆無だ。逆にメーカー側から特売を仕掛けたという話はいくらも耳にしている。メーカーは「売りたい」、「量産効果を出したい」、「市場シェアを高めたい」という営業マンなら当たり前の欲望に従って行動しているだけだと思う。
 そして小売業はそこに付け込んでいる、というと小売業への非難、攻撃に聞こえるが、言い換えればメーカーの潜在的なニーズに小売業が応えたともいえる。この点ではメーカーと小売業の利害は一致しているのである。
 小売業は同業者との競争に日々晒されている。小売業にとって「毎日の来店客数と売上げが通信簿」というようにライバル店に勝つためにどう差別化するかに知恵を絞る。NB商品だけでは売場をどう工夫しても差別化の余地が少ない。できるのは価格差による差別化だけだ。
 そこで独自のPB商品により他社との差別化を図ろうとするのは自然の成り行きである。PBなので当然、小売業の利益もとりやすい。
 「PBはNBへの対抗策というより隣の店との差別化であり、売上げ・利益確保への戦略なのです」という小売業幹部の言い分は理解できる。
 オーバーストア(過剰店舗)といわれる中で店舗間の競争はますます激化するだろう。そこで冷凍食品などの加工食品が安売りの対象にされるのは目に見えている。
 ならばNBはどう生き抜けるべきなのか。小売業だって安売りするのは本意ではないはず。要は客が納得する価格と価値とのバランスである。コストパフォーマンスの高い商品に仕上げるために、メーカーは最大限の努力をすべきである。そして冷凍食品への関心や好感度、優れた商品機能へのリテラシー(知識)を高めていく努力に力を注ぐべきである。
 PBがNBより安さを追うのはわかる。ただ、低価格化志向に従うのはほどほどにすべき。価格の安さを追い求める先に何があるのか。消費者は食に安さだけを求めているのではない。安全でおいしく、楽しい、健康にいい、便利で利用しやすいといった利点をもっと磨き上げることこそ重要である。
 これはPBもNBも同じだと思う。ただ、メーカーは自らの矜持にかけて、この点ではPBよりも優位性を確保すべきである。それでこそ冷凍食品の未来に明るさが見えてくるのではないか。

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