●品質向上への近道
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相馬社長 |
進藤社長 |
食の事件・事故をきっかけに、昨年下期からの金融恐慌が追い討ちとなって、冷凍食品の需要は回復に時間がかかっているが、冷食大手メーカーを中心に「いまこそ品質、価値アップを進め、業界収益構造を改革しよう」という捉え方が強くなっている。生産性を追求した大量生産が安売りにつながり、業界体質を悪化させている、という反省から「つくり過ぎない」考えも注目されている。
価値高め収益率アップへ
「無理につくり過ぎたことが冷食業界の様々なひずみを生み出してきた」。
これまで冷凍食品業界は工場の操業度を上げることで生産性を高め、そのコストダウン効果により生産利益を確保する構造だった。
「それが逆に廃棄物を生んでロスとなり、大量生産が安売りを生み出す根源になっていた」とニチレイフーズの相馬義比古社長も、味の素冷凍食品の進藤大二社長も同様に指摘する。
大量生産を実現するために購買部門は無理して原材料を大量に調達することになるが、それが安全安心品質を確保する上で管理不充分の懸念要因となり、生産性アップに伴い発生するロスは廃棄物の拡大につながり「原料を大切に扱うというメーカーの使命に反する」(相馬社長)。
廃棄物の増加は収益性悪化となり、また「食料資源不足に反し、地球環境保全にも反する」(進藤社長)と両社トップの考えは同じ。
さらに生産性アップにより、逆に品質低下の懸念も多くなっていた。操業度アップのために残業が増えれば「むしろコストアップ」(進藤氏)となり、深夜勤務は生産性も落ちる。
そこで「いまこそていねいなモノづくりで冷凍食品の品質アップに取り組み、商品の価値を向上させることで、生活者の信頼感を獲得すべき」と相馬氏は捉え、進藤氏は「新しい価値とともにそれに見合った新しい価格を業界は訴求すべき」と強調する。
特に天洋食品事件の強い逆風を受けて、冷凍食品市場は浮上するまで予想以上に時間がかかっているが、ニチレイFと味の素冷食は大量生産の弊害に疑問を打ち出し、その反省から事業の軸足を「品質と価値」に昨年の早い時期に切り換えた結果、苦しみながらも両社は前期、収益構造を改善し、利益を伸ばした。
収益体質のぜい弱さ、安売りの弊害などは以前から業界の共通問題だったが、史上最悪の事業環境を機に業界体質を改革する方向に進みつつあると言える。