●鮮魚にQRコード
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QRコードが 産地偽造防止に役立つ |
パック用のQRシール |
水研センター・長崎水試が実施
トレーサビリティ実証試験には長崎県新三重漁協が扱うブランド魚「ごんあじ」を使用。産地で魚1尾ずつ、頭部にある鼻腔に個体識別タグを装着。タグには携帯電話のカメラで読み取ってインターネットに接続し商品の特徴を知ることができるQRコードとネット検索用の通し番号を表記している。海洋水産システム協会のサイト(http://www.j-fish.net/)を通じて消費者は漁獲日、漁獲海域、出荷日のほか「ごんあじ」、漁協に関する情報を引き出せる。
高島屋玉川店(東京・世田谷区)が開いた長崎フェアに合わせ、百貨店内の中島水産でタグを装着した「ごんあじ」を販売。4日から4日間、300尾を流通させる実証試験を行った。今回「ごんあじ」のほとんどが刺身で販売されていたため、QRコードと通し番号はシールに印刷してパックに貼付した。
「ごんあじ」は従来から中島水産が月1〜2t以上を取り扱い、顧客への認知度は高い。今回は試食販売も行ったため、多くの顧客が足を止めた。購入した顧客には、貼付ラベルの説明と履歴システムについてのアンケート葉書を渡し、消費者の反応を調査する。
付加価値アップを期待する 長崎県の蛭子氏 |
長崎県物産流通推進本部の蛭子亮制チーフマネージャーは「(タグ装着で)顧客の品質に対する安心感につながる。将来的には価格アップなどが生じるように展開させたい」と話す。
タグは、洋服についているプラスチックタグと同様のものを使用しているため出荷現場でも簡単に装着できる。捌いて販売する場合に必要なQRコードシール貼付の作業は「それほど手間取らない」(売場担当者)とのこと。
見た目で判断するのが難しい鮮魚の品質を簡単にチェックできるほか、産地偽装防止で鮮魚のブランド力アップも期待される。コストは「試作品のタグ1枚あたり10〜20円、さらに検索先のJ-fishへの運用費用が月額で数万円かかる」(中央水研利用加工部の村田昌一部長)という。
実際に運用すると、これらの費用は生産者や漁協負担になる。魚価安が続いている中、差別化を行うことで確実に価格アップに繋げられるかが課題となる。
今回の取り組みは中央水研の「日本型水産業に対応したトレーサビリティシステムの研究開発事業」(平成21年度2000万円)に基づき、海洋水産システム協会、システムの運用・開発を手がける明電ソフトウェア、タグ取付機メーカーの日本バノックとともに実施した。
中央水研はマグロやウニといったほかの生鮮魚介類にもタグを装着して試験を行ってきた。さらなる実証試験で消費者や生産者の反応を調べ、試験だけでは終わらないよう本格的な導入先を見つける方針。