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今週の一本

●師走に「脚下照覧」を
自助努力で難局の打開図れ  越川宏昭 (週刊冷食タイムス:09/12/01号)

安売り常態化、ヒット商品不在
中国製品への不信、低価格化

 先般、大手問屋のトップから「今は定量目標より定性目標に向かって前進すべきときだ」という話を聞いた。これは言い換えると、売上げや利益の拡大よりも商業活動の内容を強化向上するときだといった意味であろうか。業績を問われる経営者が容易に口にできる言葉ではないが、将来への危機感をもてばこそ現在の業績よりも将来へ向けての体質強化を図る。すなわち品質管理の向上、生産・物流コストの低減、商品開発力の強化、そして何よりも人材の育成等々。顧みれば冷凍食品業界はどうか。将来のために生きた布石を打ってきただろうか。昨年より今年、今年より来年にむけて産業(事業)基盤の強化がなされているだろうか。年末を迎え改めて「脚下照覧」である。

 「冷凍食品業界の課題を3つあげよ」と言われたら読者諸氏はどう答えるだろうか。取材相手が洩らす言葉の中からすぐに考え付く候補をあげると、ヒット商品が生まれない、生活者像がよく見えない(ターゲットが掴めない)、類似品が多い、オール四割引など全品特売の常態化、中国製品が売れない、PB商品が増大、低価格化が進行、利益が思うように上がらない、原料・資材の乱高下、人材育成の必要性等。すべてではないまでも、各社とも1つか2つは当てはまるのではなかろうか。
 前述の問屋経営者は自社が置かれた現状に深刻な危機感を抱いていた。時代の変化というか、読み取りにくい生活者のニーズをどうやって掴み、迅速果敢に対応するか。売場への提案力をどう高めるか、情報収集力は十分かどうか、情報を読み解き、具体的な提案を行なうために優れた人材育成を急がねばならない。
 サミュエル・スマイルズの名著「自助論」は実業人の愛読書としてよく知られているが、「将来の利益のために現在の満足を犠牲にする」という一節がある。まさに目先の数字を追わず将来の大成を期して体力の養成に力を注ぐことに他ならない。
 日本冷凍食品協会が発足して今年で40周年。この間、冷凍食品産業は高度成長から低成長、微増微減の数年と勢いの差はあっても定量的に、あるいは定性的に着実に成長してきたといえる。ただ、近年は前述のようにヒット商品の不足、安売りの常態化、中国製品の低迷など、解決すべき問題が山積みである。そして業界にかつての燃えるような情熱をもった立役者がいなくなったとよく言われる。
 寝ても醒めても冷凍食品のことを考え、失敗のリスクを恐れずに新規のテーマに挑戦する人たちがいた。協会創始者の木村鉱二郎(故人)をはじめ中村博一、加藤義和、金田幸三、江頭邦雄(故人)、垣添直也、中野勘治、松村直幹氏らはその筆頭格であろう。
 新規事業だった冷凍食品に過去の成功体験は役立たない、つねに新しい視点で時代を切り開いてきたのである。これは小利口な人ではできっこない、なりふり構わぬ熱中人でないとやれない仕事である。
 かつて冷凍食品はメーカーにとって本業から外れた仕事、「冷や飯軍団」と呼ばれた。それでも冷凍食品の可能性を信じ、果敢に挑戦した結果が今日の姿である。
 2010年、世の中はどういう社会になるのだろう。そして冷凍食品業界は。
 前述の「自助論」には「道なくば道を造る」、「後世へのたいまつとなる勇気ある人生」といった名言が随所にちりばめられている。また、副題には「天は自ら助くる者を助く」と謳っている。これらの言葉を冷凍食品業界に敷衍すれば、未来への道を切り開くのも、そして混迷する現実を打開するのも誰ならぬ業界人自身であることは明白。
 このことをしっかり肝に銘じて事業の改革に着手しなければならない。

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