●世界初、ウナギの完全養殖に成功水産総合研究センター
同センター養殖研究所(三重県南伊勢町)は02年、人工授精の卵をふ化させシラスウナギに変態させることに成功した。同センター養殖研究所と志布志栽培漁業センター(鹿児島県志布志市)は、この実験室生まれのウナギ稚魚を育成。養殖では、成魚はほとんどが雄になるが、一部は稚魚期にホルモン投与して雌化させ、雌雄の親魚候補として養成していた。 この親魚候補がふ化から2〜5年を経過し、全長45〜70cmに達したことから、人為催熟が可能と判断。2010年初めから約50尾にホルモンの反復投与を行い、雄で4週目から精液を採取、雌で8週目に排卵誘起に成功。3月26日、人工授精によって受精卵が25万粒得た。翌日昼前から7割以上がふ化、4月2日に給餌を開始し、8日に約10万尾が生存しているという。 日本は50年前から完全養殖に挑んできたが、生態に謎が多く、生まれたウナギを親に育てることは難しかった。 志布志栽培漁業センターの主任技術開発員の今泉均氏は「現在与えているサメ卵ベースの餌では、シラスまで成長させるために天然の倍以上の300日以上の期間が必要。今後は、量産化を含めた技術開発として餌の開発が課題である。今回の結果で、いまだ謎の多いウナギのライフサイクルを人間の手で管理する可能性が確認できた」と話した。 生産者ら新技術歓迎の一方、懸念も 日本養鰻漁業協同組合連合会の若林稔参事は、「養鰻に欠かせないシラス資源は減少傾向にあると言われているので、ウナギ完全養殖のニュースは非常に歓迎している。だが一方で、今後、シラスが量産化されると、他のタイやアユのようにウナギも生産過剰に陥り、相場が下落する危険性もある。安定生産が可能となるため、中国や資本力のある大企業が参入し、現在の養鰻業者が太刀打ちできなくなる可能性も出てくる」と、量産化された場合に生産量調整が必要であることを示唆した。 |
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