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今週の一本

●中国内陸部、業務用が有望  去石誠一 (週刊冷食タイムス:10/05/11号)

三全食品 陳董事長
本紙「冷食セミナー」で中国の冷食市場を語る

冷食セミナーで講演する
三全食品の陳董事長
 中国の調理冷凍食品トップメーカー、鄭州三全食品の陳澤民董事長は「中国の冷凍食品産業は新たな成長期に入った」として、「生産技術や品質のさらなる向上をめざす」考え。水産タイムズ社が先月26〜27日都内で開催した第38回春季冷食セミナーの特別講師として来日し、同社の発展の経緯を交えながら「中国の冷凍食品市場」の現状と課題について語った。陳董事長は「中国の農村部にも大型スーパーの進出が相次ぎ、冷凍食品の消費はまだまだ拡大する」としながらも、「今後は業務用市場の開拓が大きな課題になる」と話した。

 陳董事長は、中国の冷凍食品業界について「(人海戦術による)手作りから、機械化による量産化と生産性向上に伴うコスト削減に向かっている」と語る。08年の世界金融危機では中国もその影響を免れず、冷凍食品の伸び率はそれ以前の3分の1までダウン。生産性を高めて、コストを圧縮する必要が生まれた。
 こうした逆境下、中小メーカーが淘汰されたのに対して、上場している大手は安定した融資を背景に「こぞって生産性の高い新工場の建設を決断、明暗の別れ時となった」という。

農民の収入増で冷食需要も拡大

 さらに政府主導の農村部の経済振興策により「農民の収入が増えたことも冷凍食品業界にとってはプラスに作用した」という。農村部にも大型スーパーが相次ぎ進出、電子レンジや冷蔵庫の普及で「冷凍食品の需要は確実に拡大」した。
 こうした内需の急速な拡大により、かつては対日輸出に意欲があった現地メーカーも、「今は活発な内需に対応するだけで手一杯」だという。
 陳氏は「冷凍食品は他の加工食品と比べて発展のスピードが速い」と指摘。インスタント食品が97年対08年で約4倍(147億元→635億元)の伸び率なのに対して、「冷凍食品は11倍(20億元→220億元)も伸び、缶詰を抜き加工食品のトップに躍り出た」と具体的に数字を示した。

色濃く残る食のし好性と地域性

 また近年の大きな傾向として「食事の季節感が年々薄れている」という。「かつて白玉団子の需要は祝祭日に集中していたが、今は日常的に食べられている」。ただし食のし好については「地域性が色濃く残っている」。例えば水餃子は「西北地区は豚肉が入っていないものが好まれ、南の福建省は海鮮具材、東北地区は酸味のある野菜入りが好まれる傾向がある」。よって「全国同一の商品開発ではなく、地域性を考慮した規格変更が重要になる」。

メモ

 三全食品は1992年に河南省鄭州市で創業。陳澤民董事長は「中国の伝統的な食品を家庭で気軽に楽しめるようにしたい」という発想で、冷凍湯圓(白玉団子)の開発からスタート。この工業化、量産化に取り組んできた人物で、冷凍食品を河南省の柱産業のひとつに育成してきた功労者として知られる。陳氏は第10回、第11回中国全国人民代表大会の河南省代表の他、中国農業産業商会会長、中国食品科学技術学会常務理事、中国冷凍冷蔵食品学会副理事長など多数の公職も務める。43年1月8日生まれ、67歳。

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