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●節電で業界懸念広がる
佐藤巳喜夫
(週刊冷食タイムス:11/05/24号)
冷ケース縮小必至 アイテムも削減の方向
供給の仕組み変更迫るか
大震災の発生とその後の原発事故による影響が広い範囲で残っており、引き続き国民は様々な対応を迫られているが、冷食業界にとっては夏の節電が新たな重い課題となりそうだ。震災と原発事故の経験で、安全な食料を安定確保することが重要だという認識が強くなり、冷凍食品は需要が増加しているが、電力不足は冷食業界に新たに大きなダメージを与えかねない。大企業、中小企業、一般家庭ともに節電目標は一律15%と決まったが、生産、流通、販売現場まで電力消費産業である冷凍食品はそれ以上の節電対策の覚悟を迫られそうだ。
節電対策の目玉として、影響が一番懸念されるのが店頭の冷凍ショーケース。 量飯店の中で冷食売場を縮小する考えを明言したところはほとんどないが「店側から、暗に、縮小した場合の対応を求めるニュアンスが出てきた」と複数のメーカー幹部が認める。 食品売場の中でマイナス温度帯の冷食は買い物客にもエネルギー消費が目につくだけに「店側からすれば、節電対策を最も強くアピールできる目玉売場になることは間違いない」と多くの関係者が受け止める。 冷食売場が縮小されればアイテム絞り込みは必至で売れ筋商品を中心としたフェイシングになるという見方が強い。売れ筋主体の売場となれば、新規カテゴリー商品、新製品は真っ先にはずされ、今後の需要創造の芽をつぶすことになる。 一方、冷食メーカーは、津波の直撃を受けた一部を除き、多くの工場で「生産機能は取り戻した」としているが、包材をはじめとする資材類や、三陸産のウエートが大きい水産物など原料等の調達難が続いているため、100%の供給体制には至っていない。 冷食売場が縮小されれば秋の新製品投入が変わり、主力品中心の生産体制を取らざるを得ない。アイスクリームと同じ売場の扱いも出てくると考えられる。 冷食工場自身の節電対策も重要案件。 ニチレイフーズは操業を夜間、土日にシフトするなどの対処策を検討している。生産機能は回復したが「少なくともフルラインで製造できる環境ではない」(池田泰弘社長執行役員)。そこで必要ラインを優先的に稼働し、他のラインは休むなどの調整も想定する。 他社もほぼ同様。最も具体的に打ち出したのはキユーピー。生産は土日や深夜帯を活用、建屋の遮熱対策で空調効率の向上やLED化等で節電を図る。本社はフロアごとの輪番休日や空調稼働時間の制限を図る。 ただ、夜間、休日操業は人件費がかかり、しかも通常の生産量より落ちる、と多くの関係者が指摘する。 しかし国民レベルで取り組む節電対策。それでも値引き販売が行なわれるとしたら、冷食業界の異様な体質が際立つことになろう。
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