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●新工場計画 各社進める
佐藤巳喜夫
(週刊冷食タイムス:11/09/13号)
これからの生産体制模索
老朽化対策、喫緊の課題
| マルハニチロ九州は新ラインを 相次いで敷設している (写真はテスト稼働中の 冷凍茹で麺ライン) |
冷凍食品メーカーが工場の新・増設を相次いで計画している。冷凍食品事業に多くのメーカーが参入したのが1971年(昭和46年)前後。それから40年が経過して工場はそれぞれ老朽化しており、建て替えの時期にある。これに大震災の発生に伴って生産体制の見直しが迫られていること、フロン対策も工場投資を後押ししている。しかも大震災後、冷凍食品の需要は明らかに増大している。国内生産の要望も強い。新工場は業界に共通する喫緊の課題となっている。
大震災後の再編も後押し
マルハニチロ食品は被災の影響が比較的少なかった石巻工場の第3工場を再建したが、供給力不足をカバーするため、マルハニチロ九州に新ラインを敷設し、人気商品「白身&タルタル」を生産するほか、新たに麺製品にも取り組む。併せてグループ生産体制の再編計画を進めている。 日本水産は女川工場の生産品目をグループ工場にシフトしたが、需要増加に対処し安定供給を確保するため、新工場ははずせない案件。ヤヨイ食品も九州に第2工場を建設したが、さらに新工場計画は不可避。 テーブルマークはケイエス冷凍食品などを含めグループでフロン対策を進めるが、四国の工場の老朽化対策と併行して取り組む。 味の素冷凍食品、ニチレイフーズ、明治なども事情は同じ。 キユーピーは省エネ、生産性向上、自然環境、労務環境改善などを含めた次世代型工場づくりにグループで取り組みを開始した。 冷食工場のあり方が大きく変わろうとしている。 味の素(現味の素冷凍食品)、明治乳業(現明治)、雪印乳業(現アクリフーズ)など日本の食品業界の有力企業が冷凍食品に相次いで参入したのは昭和46年前後。大手食品メーカーの冷食事業開始と同時期、水産系大手メーカーも冷凍食品事業に本腰を入れはじめ、工場を相次いで整備した。 それから40年。メンテナンスや、機器の入れ替えは重ねているものの、メーカーの主力工場は明らかに老朽化が進んでいる。 加えて冷凍食品の市場環境、事業基盤も大きく様変わりしている。かつて郊外に建設したはずの工場は、周囲に住宅が建ち並び、騒音、異臭、排水処理などに従来以上に配慮を求められる。消費地までの物流環境も変わった。 「40年たてば工場立地環境が一変するのは当然。どこで生産し、どの地域に供給するか。原料資材の調達、サプライチェーン、あるいは海外生産の位置付けなども含め、工場の再編は各社共通の課題だろう」と大手メーカー役員も認める。 しかもこれまでは国内市場だけを見て事業構造を構築してきたが、これからは海外市場を含めた展開となる。必然的に事業の全面的見直しを迫られることになるため、次世代型の事業像をいま各社模索している。 社長交代が今回相次いだのもその流れの一環。メーカー大手の新社長は自らのミッションを「次の時代の事業構造を練り上げ、必要な手を打つこと」と同様にコメントしている。 大震災の発生が新工場計画、工場投資を後押しした。沿岸部の工場は津波で大きな被害を受け、製造品目を他の工場にシフトせざるを得なくなったが、昨年来のテレビ番組効果と震災後の需要増大で多くの冷凍食品工場は商品供給が間に合わないほど順調な操業を続けており、急な増産や品目追加は簡単にいかない。 主力品に絞るなど緊急対策で需要になんとか応えようとしてはいるが、供給体制の不安は解消されていない。そこで投資計画を前倒しで工場建設、ライン増設などに各社取り組もうとしている。工場建設はフロン対策を同時に進めるチャンスでもある。
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