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今週の一本

●中国の冷食業界 久々活気取り戻す  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:11/11/15号)

生産量2〜3割増に

新工場の建設が進む泰安の
佳裕食品
懸念強まる求人難
 中国の冷凍食品業界が久々活発な動きを見せている。震災後の需要拡大が続く日本向けが大きく伸びて冷食工場の生産量は前年に比べ軒並み20〜30%増。これにタイの洪水被害が拡大するにつれて中国への発注が増加し、年末の作りだめ時期とも重なって生産が間に合わないほど。しかし人件費高と人手不足も深刻化している。

 残留農薬、メラミン、天洋事件などが相次いだため中国産冷凍食品の対日輸出はしばらく低迷し、現地の輸出向け工場は稼働率が悪化していた。
 しかし昨年末から日本でテレビの情報番組が冷凍食品を相次いで取り上げた頃から状況は一変。今年年初から操業度が確実にアップした。これに震災後の備蓄需要、夏場の節電対策効果、台風・集中豪雨、激しい気温変化などによる生鮮高なども需要を後押しし、中国の冷食工場は軒並みフル稼働となった。
 さらにタイの洪水被害が拡大したのと同時に、発注先を中国にシフトする動きが顕著となり、中国の工場にはメーカー、流通、小売、外食など需要筋がいま殺到。商談が進められている。
 ただ中国の冷食工場は年明けの旧正月休暇を前に作りだめの時期。しかも従業員の人件費は今年さらに2〜3割アップしているのに加え「給与を上げても人が集まらない」と、人手不足が一段と深刻化している。
 需要増を背景に何としても製品の安定確保を図る日本側と、労働者不足と原料高に悩む中国側の厳しい交渉がいま行なわれている。

北海食品、対日輸出を3年ぶり再開

 冷凍いんげん事件で対日輸出停止が続いていた煙台北海食品(中国山東省莱陽市、藍明徳総経理)の出荷が認められ、北海食品は今月はじめ日本向け冷凍野菜の出荷を開始した。同社は凍菜の対日輸出最大手。日本の凍菜需要拡大を背景として、同社の日本向け出荷量は今後確実に増えると考えられる。
 都内に住む主婦がスーパーから買った中国製冷凍いんげんで、しびれなどの健康被害が08年10月に発生。保健所の調べでは基準値の0.2ppmを大幅に超える6900ppmという、原液に近い濃度の有機リン系殺虫剤ジクロルボスを検出。厚労省は「食べないように」と消費者に呼びかけるとともに、出荷元の北海食品からの輸入を停止した――というのが発端。
 ところが、殺虫剤の混入の疑いを含めて警視庁も捜査を始めたが、農薬の検出は1袋からのみ。工場段階の事故ではなく、事件性が高いことが当初から指摘されていた。しかし日中間の食品、衛生行政と公安当局との相互調整が進まず、処分はその後約3年間も保留の状態が続き、業界関係者からは「不自然」、「理不尽」などの指摘があった。

原材料は充分、新工場も建設

 北海食品は冷凍野菜の対日輸出企業として最大手。日本側の指導を受けて、中国の凍菜工場としてこれ以上の品質・安全管理ができるところはないという最高レベルの管理体制を整備しており、同社を視察した日本の流通、販売店からも高い評価を得ている。同社の対日輸出停止が仮にこれ以上長引けば、他の凍菜工場にも影響を与えかねないという段階に至っていた。
 この間、藍総経理は日本の行政当局を何度も訪れて事情を説明し、輸出再開の理解を求めてきた。煙台北海食品が日本向け凍菜の輸出再開を認められたのは今年8月。ただちに工場内部の点検、再整備作業を行なうとともに、日本の主力取引先の監査を受け、出荷準備を進めてきた。
 出荷停止中も対日以外の業務は認められていたため、原料を保管し、グループの莱陽恒泰食品(山東省莱陽市)など凍菜加工工場向けに供給を継続。このため輸出再開を受けてすぐに現場の作業を再開できた。
 北海食品サイドでは「この3年間は非常に長く、辛い日々だった」としながらも「対日輸出再開を機に、これまで以上に品質・衛生管理の徹底を図り、日本の需要家に安心安全な商品を届ける」と語っている。
 同社はリスク分散と商品の安定供給を図るため、山東省泰安市に合弁で凍菜の新工場を建設している。

調理ほうれん草の輸入も解禁

 厚生労働省は中国産冷凍調理ほうれん草の輸入自粛を解除し、4日付で検査命令を各検疫所に通知した。中国側の管理体制が示されたのと、これまでの検査実績を踏まえ決定した。既に乾燥・冷凍ほうれん草は輸入自粛が解除されている。
 ただし輸出できるのは指定業者の製品に限られている。

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