●タイの最低賃金が4割増日系冷食工場の収益圧迫
タイでは今年4月から最低賃金が約40%上昇した。日系の冷凍食品工場は労働集約型が多く、数千人規模の労働者を抱える工場が珍しくない。収益は圧迫されるが、日本向け製品の価格に転嫁するのは容易ではないため、機械化による省人化、歩留まり・従業員のスキル向上、省エネなどの自助努力でカバーしているのが現状。冷凍食品記者クラブに加盟する9社が合同で9月27〜28日、日系冷食メーカー4社を取材した。 最低賃金のアップはタイ各県で段階的に進められるが、来年1月からは一律300バーツになる。タイ人だけでなく、ミャンマー人やカンボジア人など外国人労働者も条件は同じになった。 ニチレイフーズとタイの大手チキンパッカーGFPTの合弁会社GFPTニチレイ(GFN)は1日10万羽の生鳥を近くの養鶏場から仕入れ、チキン加工品を生産する超大型工場。工場があるチョンブリ県の最低賃金は196バーツから273バーツにアップした。従業員は3500名。 これについてGFNの柴和之副会長兼上級副社長は「3千名以上のベースが上がったが、省人化・省エネで何とか吸収したい」と語っている。冷食工場はいわゆる“3K”職場でもあるため「これまでと同じでは求人が厳しくなる。福利厚生を良くして、従業員の満足度を高めなければならない」との認識を示している。 マルハニチログループのN&Nフーズ(サムットサコーン県、海部和史社長)はおよそ1千名の従業員を抱える。製品の90%が日本向けのため、労務費の上昇分を価格に転嫁するのが容易ではない。機械化を進め、省人化を図っている。 施策の1つとして、今年7月から日本製の残骨検査装置を導入。主力製品のたこやきに使うたこの異物検査に使っている。これまでは2回に分けて従業員が手で触って検査していたが、機械化により手作業を1回にすることで省人化を図り、同時に検査精度を高めることに成功した。 同じくマルハニチログル―プのキングフィッシャー(サムットサコーン県、池見賢社長)は冷食事業だけで4500〜4600名の従業員を抱えている。7割をえび製品が占め、殻や頭、背わたなどを取り除くのは人海戦術に頼らざるを得ない。 池見社長は「人件費の4割アップはかなりのインパクト。売上げに3%影響が出ると試算していたが、原料えびの価格が下がった分、うまく転嫁できた。当社はミャンマー人の労働者が多く、中期的に見て、ミャンマーの経済が復興すれば、彼らが地元に帰ることも予想される。冷食、缶詰に次ぐ、労働集約型ではない第3の事業を考えなければならない」との認識を示している。 極洋と現地の水産会社ユニオンフローズンプロダクツの合弁会社K&Uエンタープライズ(サムットサコーン県、松本哲生社長)は寿司種、冷凍寿司を生産する。松本社長は「1g刻みのサイズ、形状、見た目は人間の目で確認しなければならず、労働集約型がメイン。売上げに占める労務費の割合は9〜10%だったが、今年4月からは感覚的に13%くらいに上がった。効率化を図り、機械化できる部分を模索したい」と語っている。 |
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