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今週の一本

●日本のスリミ業界は静観  松田陽平 (週刊水産タイムス:13/01/21号)

米国スケソウ漁業スタート

円安、需要減退など状況一転
 米国アラスカ・ベーリング海のスケソウダラ漁業Aシーズン(抱卵期)の操業が20日スタートした。今年の漁獲枠は124万7000tと前年対比約4%増えたが、日本のスリミ需給の状況は1年前と一転している。静観する日本の動向を米国のスケソウ生産者は注視している。

 昨年は堅調な需要と円高を背景に、日本市場向けのスリミ生産が増えた。

 2011年は震災による日本市場の混乱に加え、Bシーズンに漁獲枠の獲り残しが発生し、スリミの生産が大幅に減少した。11年12月末のスケソウスリミの国内在庫は前年同期比15%減の2万8700t、その他スリミを合わせた在庫は5万8500t(前年比17%減)と低水準での年越しとなった。

 2012年は、1ドル80円前後の円高を追い風にして、Aシーズン(抱卵期、1〜4月)、Bシーズン(非抱卵期、6〜11月)ともに日本向けのスケソウスリミの価格が上昇。生産意欲の強まったスケソウスリミの年間生産量は16万7000tと前年対比13%増えた。その一方で、ここ数年堅調を維持してきた欧州向けのフィレの需要が若干弱まったこともあり、フィレの生産は18万4000t(ミンス含む)と7%減。スリミ対フィレ(ミンス含む)の生産比率は48対52(2011年は43対57)となった。

スリミ在庫約7万t、末端にあせりなし

 2013年Aシーズンはどうなるか。前年対比で漁獲枠はほぼ前年並みといえるが、マーケットの状況は一変している。

 昨年11月末の日本国内のスリミ在庫はスケソウスリミが3万8570t(前年同期比143%)、その他スリミが3万2499t(同100%)、合計で7万1069t(122%)。2010年11月末の在庫(7万293t)とほぼ同じ水準ではあるが、2011年末のような需給がひっ迫した状況でないことは確か。エンドユーザーであるねり製品メーカーにもあせりはなく、静観している状態だ。

 米国のスケソウ生産者も日本のスリミ需要が強くないことを把握している。しかし、「日本向け価格は気がかりだが楽観的に見ている。ただ、過剰反応はしないでほしい」「中間流通段階での在庫は多いが、末端の在庫はそれほど多くないのではないか」(米国生産者)と比較的冷静だ。

 新政権発足以降の円安も今シーズンのスリミ価格を決める重要なポイントとなる。昨年Aシーズンの為替は1ドル78円前後。単純に昨年Bシーズンと同じスリミ価格(円価)だとしても、現時点の為替(1ドル88円前後)では、ドル価が10%下落する。米国の生産者にとっては魅力のある価格とは言えなくなる。Aシーズンに価格が下がった場合、スリミの生産意欲が弱まる可能性は十分にある。

米国のフィレ需要は堅調、欧州は不透明

 スリミと競合するフィレ市場の動向も米国と欧州では若干異なる。在庫の少ない米国市場の需要は堅調を維持。一方で、欧州市場は景気低迷に加えて、ロシア産スケソウダラのMSC認証取得の動きなど、読みにくい要素が多い。「昨年買い控えているため、フィレの在庫は多くない」と見られているが、こちらの価格交渉も難航しそうだ。

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