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今週の一本

●北関東、有力問屋が群雄割拠  越川宏昭 (週刊冷食タイムス:13/04/02号)

業務用は乱戦、書き換えられる勢力図

 食品問屋の勢力図がこのところ大きく塗り替えられつつある。量販店やコンビニエンスストアを販売対象とするのは超大手問屋であり、バックとなる大手商社を巻き込んだ陣取り合戦の様相をみせている。ここに中小の市販用問屋が入り込む余地はほとんどない。片や業務用市場においては、隣接地域の同業者との競争が激化、そこへ大手問屋の参入が相次ぐなど生き残りをかけた厳しい競争が続いている。いま、中小業務用問屋の競争が激化する背景には地方の人口減や少子高齢化があり、対象市場のなかで、大きな需要増が望めないところから問屋間の摩擦が増えている。生き残るためには、他業態への進出、あるいは隣接地域への販路拡大などを図らざるを得ない。激戦区のひとつ、北関東市場にスポットを当て、業務用問屋が直面する問題を探った。

販路求めて他業態・隣接地へ

 北関東を商圏とする有力業務用問屋はまさに別業態への展開、隣接地域への販路拡張などの真っ最中にあり、いわば競争激化する全国各地の業務用業界の縮図ともいえそうだ。

 北関東といえば茨城、栃木、群馬の3県を指す。ときにはこれに埼玉を加えることもある。上記3県の人口は約700万人、埼玉を加えた4県だと1400万人の大市場となる。

 この北関東に本拠を置く有力業務用問屋は別表の12社である。売上高は合計で600億円、最大で90億円規模。総加算売上高を12社で割った単純な1社売上高は50億円となる。地域密着度の高い、地域でよく健闘している問屋各社だといえる。

 主たる商圏は各県庁所在地周辺、各社も大体がそこに本社を構えている。

 茨城県水戸市にはウルノ商事と三和。給食に強いウルノと外食中心の三和が業態別に住み分けている図式である。

 栃木県宇都宮市では外食がメインの昭和食品と集団給食を得意とするニッカネがしのぎを削る。群馬県高崎市では今のところ給食主体の関東食品が圧倒的な強みを発揮している。

 概観は以上の通りだが、各社の越境的な販売進出や支店・営業所の展開が盛んに行なわれている。最大の要因は地元の既存市場に伸びる余地がないこと。だから外食中心の問屋が給食を、給食中心の問屋が外食市場を攻める。空白状態だった病院や老健施設への展開も活発化する。これまでほかの地域から遠くまで足を伸ばしていたのが、現地に支店・営業所を開設し、市場を深耕拡大する動きも増えている。

道路網整備後押し

 北関東の競争を促すきっかけになっているのが道路網の整備である。東京を起点に東北道、関越道、常磐道と縦の道路網が伸びる。水戸から宇都宮を抜けて高崎へと通じる北関東横断道が横串として開通したのも大きい。これにより縦軸と横軸が整備され、営業車は北関東市場を縦横無尽に走ることができる。

 ニッカネは宇都宮を起点にして北は仙台・福島・郡山、那須、さらにつくば、前橋、埼玉川口、千葉稲毛と網を広げ、4月下旬には新たに新さいたま営業所をさいたま市見沼区に開設する。水戸の三和は県南支店に加え年内にも宇都宮に進出する計画。

 サトー商会は郡山営業所から足を伸ばしていたが、昨年末に宇都宮支店を開設、本格的な市場攻略の姿勢を明確化した。3千坪の用地のうち当面は半分を利用するが、最終的には現状の倍の規模まで拡張する構想。卸販売とキャッシュ&キャリーの展開をめざす。

 埼玉県桶川市に本拠を置く関東食糧は従来の埼玉県下の販売から栃木県へと北上の構え。昭和食品がトーホーグループに入って同社主宰のNCFを脱退したことから栃木県市場への攻略姿勢を強めている。

 北関東に本拠を置く問屋に加えて、全国ネットの高瀬物産、トーホー、ユーシーシーフーヅ、尾家産業、さらには近年勢いをつけている西原商会などの動きも目が離せない。中でも高瀬物産は宇都宮、高崎、水戸、さいたま、熊谷に営業拠点を配置、外食市場に密度濃く攻め入っている。社員による営業と自社便による配達という顧客密着型の営業に徹する同社の存在は地の利を誇る地元問屋にとっても脅威であろう。

 このほか、本業の酒販に食品卸を加えた群酒大成食品(北群馬郡吉岡町、萩原哲夫社長)、(財)栃木県学校給食会(宇都宮市、高田實理事長)なども専門分野で実力を発揮している。

 北関東の業務用市場は今後ますます問屋間の競争を激化していくだろう。競争は避けて通れない道である。そこで勝ち残るためには今まで以上に品揃え、受発注の精度、配達、メニュー提案、新商品の紹介など問屋の機能を磨き上げ、顧客にとってより一層役立つ存在になること。つまりは当たり前のことを着実に行っていくことに尽きるといえよう。

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