●活発な質疑、大手水産が株主総会 大手水産4社の定時株主総会が24〜26日、行われた。各社とも前3月期の決算はまずまずだったが、冷凍食品の農薬混入や缶詰の容器腐食など、予期せぬ事件が発生し、株主からはその対応や業績への影響を問う質問が目立った。 マルハニチロ、アクリの影響―― 伊藤社長は「対処すべき課題」について「グループの信頼回復に向けて取り組んでいる」と強調。具体的に、4月1日付で社長直轄組織として設置した「危機管理再構築委員会」で、@グループガバナンスの強化A食品安全・フードディフェンスの再構築B品質保証体制の再構築C危機管理体制の再構築D労務問題の改善――を進めていることを説明した。また成長路線への転換については、今年度スタートした新中期4カ年経営計画を策定し、@成長路線の遂行Aグローバル領域での収益拡大B財務体質の改善――を進めていくことを説明した。 株主16人から質問が出た。「水産資源の争奪戦が激しくなっている状況をどう捉えているか」という質問には、伊藤社長が「グローバル戦略の推進で、ニュージーランド、オーストラリア、インドネシアなどで水産資源の確保に動き、(日本国内に限らず)世界の中で成長を図っていく」と回答した。 日本水産、復配見通し―― 日本水産は26日午前10時から東京・日本橋蛎殻町のロイヤルパークホテルで開いた。細見典男社長が議長となり、質疑応答の後、取締役10名選任(1名増員)、買収防衛策継続の決議事項が承認された。閉会は11時41分。終了後、新任取締役の関口洋一、大木伸介の2氏が紹介された。 会の冒頭で、中間配当に続き、期末配当金も無配となった点について細見社長が陳謝した。「誠に不本意ながら無配となり、株主の皆様に心よりお詫び申し上げる。早期復配に向けてまい進する」と述べ、全役員が起立し頭を下げた。 前3月期の事業報告は事務局がスクリーンを使って説明。円安による原材料コストの上昇があったが、水産物市況の回復に加え、海外事業で為替換算による増収効果や、海外の不採算事業からの撤退を進めたことなどにより増収増益となった。 細見社長は「対処すべき課題」について「平成26年度は中期経営計画2014(MVIP)の最終年度。目標数値の達成は難しい状況にあるが、事業基盤の強化に努めている。引き続きMVIPの基本方針、主要事業の戦略を主軸に、今後の成長に向けて次期中計の策定に取り組む」とした。 また昨年末に業界で発生した冷凍食品の農薬混入事件を契機に、@従業員とのコミュニケーションの一層強化A工場内部のカメラ増設B工場内への持ち込み物禁止ルールの徹底C薬剤保管庫・検査室の管理徹底などを、さらに進めているとし、「今後もフードセイフティー、フードディフェンスの両面を強化し、食品の安全・安心に万全を期す」と述べた。 8人が質問に立ち、復配への道筋、株主優待の実施などを質した。業績が改善せず、復配が叶わなかった際の執行部責任など、手厳しい指摘もあった。 無配を招いた点については小池邦彦代表取締役専務が「単体の利益剰余金が足りない。以前は100億円あったが、海外事業からの撤退や東日本大震災などの影響で2012年度は枯渇状態に陥った。今は配当できる状況にないことを総合的に判断した」と説明。復配の見通しは「日水単体の力強さが判断基準になる」と述べた。 極洋、缶詰の回収―― 極洋は24日午前10時から東京・平河町の都市センターホテルで開いた。同社缶詰「さけの中骨水煮」の一部にフタの腐食が見つかり、自主回収している問題について「原因の究明を急いでおり、再発防止に全力で取り組んでいる。皆様にご迷惑をお掛けしていることをお詫び申し上げる」と陳謝した。総会では決議事項全てを可決したが、缶詰の事故に関する安全体制の質問が相次ぎ、終了まで約1時間53分を費やした。 多田久樹社長が議長となって進行。前3月期の事業報告は、約15分にまとめた映像とナレーションで説明した。「対処すべき課題」については多田社長が説明。中期経営計画「パワーアップキョクヨー2015」が最終年度を迎え、「目標達成に向けて全力で取り組んでいる」と報告した。 水産商事セグメントについては「水産物の豊富な経験と国内外サプライヤーとの持続的な関係強化で、質の高い水産物の安定的な供給を維持していく」、さらに「欧米・東南アジアの海外現地法人のネットワーク化により三国間貿易の取り組みを強化し、海外マーケットの深耕を図るなどして、資源調達力およびグループ内の協業体制強化に努める」と説明した。 9人の株主が質問に立った。質問が集中した缶詰の自主回収問題に関する安全安心については、上居隆常務が「フードディフェンス(食品防御)を含めて対策を強化している。国内外の協力工場を含めて定期的な技術研修も実施しているが、今回の事故を受けてさらに徹底していく」と説明。また回収対象の商品が270万缶あるのに対して、「これまで回収できたのは約7500缶」「製造は岩手の協力工場」であることを明らかにした。 多田社長は「これまでに健康被害の報告はなく、自主回収は万全の措置と理解して欲しい」とした上で、「原因を究明して次の措置をとる」と説明。さらに「大きな問題になる前に対処できたと認識しており、業績予想の修正には至らない」との考えを示した。 ニチレイ、水産が好転―― ニチレイは25日午前10時から東京・大手町のパレスホテルで開いた。村井利彰会長が議長となって前期事業を報告。剰余金処分案、任期満了に伴う取締役11名(1名増員)、監査役1名選出の3議案とも提案通り決議した。株主3人から4件の質問が出て、担当役員が説明し、株主の了承を得た。開始から52分で閉会。 前期事業は映像とナレーションで報告した。水産は値頃感からタコの扱いが好調で、外食・惣菜向け販売強化も奏功し増収増益、畜産は調達コストの高騰で減益と報告した。 加工食品は増収ながら円安によるコスト高で減益と報告。低温物流は国内が減益だったが、海外事業のけん引などにより増収増益となったことを説明した。 「対処すべき課題」については大谷邦夫社長が@収益性向上A品質保証体制の維持・向上BCSR視点でのグループ経営基盤の強化C株主還元――の4点を約10分間説明した。 管理部門を担当する田口巧執行役員を新任取締役に、監査役は三田勇太郎氏が退任し、海津和敏ニチレイロジグループ本社取締役顧問が新たに就いた。 質疑では、売上げが各部門とも順調ながら減益を強いられたのは、為替変動リスクが大きい経営体質ではという視点の質問が目立った。 これについては財務・IR部、経理部などを担当する田口巧執行役員(この後の総会議事審議で取締役就任を議決)が「円安は加工食品等の輸入原料にマイナスだが、低温物流の海外事業にはプラス。為替予約などでリスクヘッジを図っている」と説明。 TPPの影響という質問には各事業部門を代表して大谷社長が「輸入原料価格の低減はプラス、低温物流は輸入品の扱いが増えるのでプラス、一方で輸出を増加させるチャンスにもなる」と答えた。 |
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