●堅調な魚価 業績支える 大手水産5社の第2四半期決算が出揃った。水産事業は堅調な魚価に支えられ、日本水産は3ケタの営業利益。食品事業も原料高を背景にしながらも値上げ効果などで概ね順調な業績で折り返しとなった。 マルハニチロ マルハニチロ(東京・豊洲、伊藤滋社長)は4月の6社統合後、順調な滑り出しを見せた。加工食品や物流部門は苦戦したが海外事業が好調に推移。 漁業・養殖は海外まき網が単価下落と不漁で不振だったが、養殖でカンパチ・ブリの価格が堅調。 水産ユニットはエビをはじめとする主要冷凍魚全般の相場が堅調に推移するなか、需要が落ち込み、円安や海外相場の上昇で仕入価格が高騰した。荷受は減収も経費削減で増益。戦略販売は鮭鱒・エビ・ホタテなど原料価格の高騰が続いたものの、加工の高度化や不採算事業の見直しで増収増益となった。 海外事業は大幅な増収増益。水産原料の日本からの輸出増加、タイで製造している欧米向けペットフードの販売が好調。北米ユニットは米国産助子の販売増加、鮭鱒の適時買付に加え、昨年資本参加した欧州水産物販売会社も堅調な販売。 もう一つの柱である加工事業は減収減益。市販用冷凍食品の販売は順調だったが、アクリフーズ農薬混入事件の影響と畜肉事業の原料価格高騰が響いた。 物流事業も減収減益。水産物の入庫減と、川崎市東扇島の新設センターの償却費、電力料金の値上げなどが要因。 日本水産 日本水産(東京・西新橋、細見典男社長)は、水産物市況が総じて高値で推移したことに加え、南米の鮭鱒養殖会社で在池魚の評価益が増加するなど海外事業が好調に推移した。 食品事業は円安の進行による輸入原材料や海外加工製品などのコスト増加があったが、円安による為替差益や投資有価証券の売却益もあり、営業利益、経常利益、四半期純利益とも予想を上回った。 注目されるのが前期は無配だった配当の有無。現段階では「未定」としている。 水産事業は売上高1302億円(前年比159億円増)、営業利益40億円(同31億円増)で大幅な増収増益。 南米の鮭鱒は生残率が低水準で推移し原魚コストが上昇したが、販売価格の上昇に加え在池魚の評価益が大幅な増益につながった。 加工・商事事業も増収増益。鮭鱒は北米での豊漁や高値が続き、魚価の軟調傾向がやや見られたが、ロシアの禁輸措置などから総じて高値で推移。北米はスケソウダラの漁獲が好調、スリミも販売価格が上昇、助子の生産量も増加した。 食品事業は加工食品、チルドとも増収増益。 ファインは減収減益。薬価改定、政府主導による後発品(ジェネリック)使用促進策の影響を受けた。 物流事業は電力料金や運送費などのコストが増加したが、保管料収入が増加し増収増益。 極洋 極洋(東京・赤坂、多田久樹社長)は増収も海まき事業の苦戦で減益。厚生年金基金代行返上益の特別利益があった。 冷凍食品は増収増益。「だんどり上手」シリーズを中心とした骨なし切り身、焼魚・煮魚などの加熱用商品を医療食及び事業所給食向け、寿司種を中心とした生食用商品を大手回転すしチェーン向けに拡販。市販ブランド「シーマルシェ」商品を中心とした家庭用冷凍食品も導入店を増やした。 常温食品は、価格改定や規格変更等のコストアップ対策に取り組み増収増益。 物流サービスも増収増益。子会社、キョクヨー秋津冷蔵が8月に城南島事業所を開設。 鰹・鮪の海外まき網事業は、漁獲量が前年同期を上回ったものの、魚価が昨年と比較し大きく下落。入漁料や燃油価格の高騰など経費増もあり、収支が悪化。 ニチレイ 水産は、相場が全般的に高水準で推移する中、寿司ネタなど中食・外食向けに最適な加工度で商品を提供する取り組みが奏功し、売上げ・利益ともに前期を上回った。供給不足により価格が高値圏にあるエビの需要が減退したものの、円安を背景にした国内産品の輸出や販売価格が上昇したタコが収益に寄与した。 加工食品は円安による原材料・仕入れコスト上昇の影響を受けたが、増収効果や生産性の改善・前年度の価格改定などのコスト吸収策の継続効果で増益。 低温物流は、前年度に稼働した東扇島2期棟・北九州TC(通過型センター)や既存顧客の取り扱いが拡大したTC事業がけん引し増収。一方で、車両調達コストや電力料金のコスト上昇が響き減益となった。 東洋水産 東洋水産(東京・港区港南、今村将也社長)は増収となったが、主力の麺類がコスト高と競争激化で苦戦し、営業利益は23%減の106億円にとどまった。 水産食品事業はタラコ・明太子の販売が好調に推移。6.6%の増収となったが、主要魚種の販売で原料価格上昇分を製品価格に十分に転嫁できなかったこと、アジ・サバなどの近海魚の不漁が響き前浜事業が不振だったため、セグメント損失8100万円(前年はセグメント損失800万円)を計上した。 |
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