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今週の一本

●売上げ8割回復は48%、被災地の水産加工調査  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:16/03/01号)

失った販路戻らず

新規開拓で販売増加の例も

 東日本大震災の被災地の水産加工業者は生産能力が回復しているものの、売上げが震災前の8割以上回復したところが半数に満たない――。特に中小企業ほど売上げの回復は遅れている。以前の販路が戻らず、風評被害や人材難などの課題も抱えている。

 大震災発生から5年を経ても被災地の加工業は厳しい経営を強いられていることが改めて浮き彫りとなった。水産庁が青森、岩手、宮城、福島、茨城の水産加工関連3団体に所属する890社を対象に調査した。

 生産能力が「8割以上回復」したのは5県平均で58%とかろうじて過半数となったが、福島は30%、茨城は48%、岩手でも60%と地域差が見られた。

 これに対し売上げが「8割以上回復」したのは5県平均で48%と半数に満たず福島21%、茨城28%と厳しい。岩手61%、宮城60%。

 資本金が5千万円以上の生産能力回復は73%、売上げ回復も59%と比較的進んでいるが、1千万円以下の生産能力回復は49%、売上げ回復39%と遅れが明白。

 復興を妨げている問題点で最も多いのは「販路の確保・風評被害」の44%。特に原発事故の影響を受けた宮城、福島、茨城で指摘する声が多い。販路、風評とも販売店、買い手側の受け止め方が被災地の復興を妨げていることは重要。

 販路回復のために必要と被災地の水産加工業者が指摘するのは新商品開発、新ブランド、展示会参加と前向きな考えの一方で、主力商品に特化、地元での販売強化と守りの考えもある。

 販路、風評被害に次ぐ問題点として挙げられたのは「人材確保」と「原材料の確保」、ともに20%。

 人材を確保するため待遇改善、宿舎確保などを図っているが「募集しても集まらない」という声もある。

 原材料問題は水揚げの回復の遅れ、水揚げ地・時期の変化、原材料価格の高騰などが挙がった。一方で商品の絞り込み、新規営業開拓などにより販売増加につなげた成功事例も8例紹介している。

 調査は昨年11月12日から今年1月31日まで、全水加工連、全蒲連、全珍連加盟の890社を対象に実施した。回収は30%(268社)。大震災後3回目。

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