●クロマグロ漁獲枠122t追加水産庁が14都道府県に配分 国際合意で日本に配分された太平洋クロマグロの小型魚の漁獲量が上限を超えた問題で、資源の減少を懸念する欧米は管理の強化を、国内漁業者は増枠を求めている。6月までの今期の漁について、水産庁は来期の漁獲枠から差し引くことを前提に、枠を追加し当面の漁業活動が滞るのを回避したが、JF全漁連は2年以内に現行の漁獲枠の見直しを強く要請。欧米の規制強化圧力と国内漁業者の間で、同庁は国際交渉と国内調整の難しいかじ取りを迫られそうだ。
同庁は8日、国際機関で合意し日本に割り当てられた漁獲上限を突破した太平洋クロマグロ小型魚について、青森や長崎など14都道府県に対し、合計122.2tの漁獲枠を追加配分したと発表した。他の魚種を狙った釣り漁などで混獲してしまうことや、定置網による避けられない漁獲に配慮したため。 県内で地区別に細かく漁獲枠を配分している場合、県単位で漁獲上限を超過し操業自粛要請に至っていても、地区単位では上限に達していないケースもある。こういった地区に追加分を充当して操業継続を認め、不公平感を解消する狙いもある。 今回の追加枠は6月までの今期分。追加枠まで消化した場合には、7月以降の来期分から差し引かれる。 追加対象と量は次の通り。 ▽北海道(太平洋側5.2t、日本海側4.6t)▽青森県(太平洋側3.6t、日本海側18.7t)▽宮城県4.6t▽新潟県4.8t▽富山県7.5t▽石川県5.7t▽東京都0.8t▽福井県1.9t▽京都府1.8t▽兵庫県0.2t▽鳥取県0.1t▽島根県6.4t▽長崎県56.2t▽佐賀県0.1t 全漁連「2年以内に増枠を」 想定外のクロマグロの豊漁と、意図しない混獲で枠の管理に四苦八苦している国内の沿岸漁業者からは、不満が噴出している。これを受け、JF全漁連が動いた。岸宏会長らは9日、水産庁の佐藤一雄長官を訪ね、日本に割り当てられる太平洋クロマグロの漁獲上限について、2年以内の増枠を要望した。 「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で2年以内にクロマグロの漁獲枠が見直されるよう、(日本が)資源評価の精度向上に取り組み、科学的根拠に基づいた強力な姿勢で交渉に臨み成果を上げてほしい」と申し入れた。 特に、定置網にマグロが入る混獲がある程度は避けられないことなどから、沿岸漁業の漁獲割当量の増枠を求めた。 さらに、クロマグロの資源管理の一環で休漁する沿岸漁業者に対して、所得の補償措置を講ずることも強く要請した。 これらの要望に対し、佐藤長官は「この問題は生産者だけでなく行政や団体など業界が一緒になって考えていかなければならない。情報交換など連携を密にしていきたい」と答えた。 北太平洋まぐろ類国際科学小委員会(ISC)が昨年7月に公表した太平洋クロマグロの資源評価によると、初期資源(漁業がなかった場合の理論上の資源量)の2.6%まで減少している。この数字に衝撃を受けた欧米などは、初期資源の20%まで早期に回復させるべきと訴えている。 今後の国際交渉は、日本にとっていばらの道が続く。 |
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