●日本水産、マダコの完全養殖に成功量産化へ一歩、事業化めざす 日本水産は、これまで困難とされてきたマダコの完全養殖の技術構築に成功した。昨年4月に同社の研究センターでふ化した成魚由来の卵が今年4月にふ化して、数万尾のマダコ幼生が得られた。日水では「今後も、最終目標である天然資源に依存しない完全養殖マダコの安定供給体制の構築を目指す」としている。
タコ類は国内で年間7万〜10万tが流通しており、全量が天然の漁獲物。40〜50%が国内産、残りは輸入品が占めている。食品としても非常に身近な水産物だが、養殖の技術は確立されていない。 天然のマダコは、卵からふ化した幼生が海中を浮遊したのち海底に定着し、成魚のマダコと同じ姿形の稚ダコに成長する。マダコを養殖する場合、浮遊幼生が着底できずに死滅してしまうことが多く、着底段階に到達した国内での成功例は数件が報告されているにすぎない。 海外では、完全養殖の成功例が2004年に一例のみ報告されているが、再現することが困難な模様で、その後の進展は報告されていない。 ニッスイ中央研究所大分海洋研究センターは以前から、@親ダコから安定的に採卵する技術Aふ化幼生を飼育する環境の適正化B稚ダコの飼育に適性のある餌料の開発――に取り組んできた。その結果、2015年に少数ながらも稚ダコの人工種苗の生産に成功。さらに16年4月にはふ化した浮遊幼生数千尾のうち数十尾が7月に稚ダコとなった。 稚ダコの段階に入ると比較的安定して飼育でき、ふ化から7カ月で1kgを超え、高成長性が確認された。ニッスイによると、ふ化後9〜11カ月で、交尾や産卵する複数の個体が見られたという。 こうして、16年4月に同研究センターでふ化した成魚由来の卵が今年4月にふ化して数万尾のマダコ幼生が得られ、極めて困難とされるマダコの完全養殖が成立した。 完全養殖マダコの実用化技術を構築するには、浮遊幼生から稚ダコまでの間の生残性の向上や、稚ダコ初期の育成技術の向上などにも大きな課題が残されており、事業化にはまだ研究が必要とされている。 そうした中で今回の成功は、最も難関とされる浮遊幼生から稚ダコまでの飼育特性を把握することや、短期間で完全養殖技術を構築し、マダコの優れた養殖特性の一端を明らかにすることができたことで完全養殖マダコの量産化に向けた大きな一歩となる。 |
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