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今週の一本

●見方分かれるGAP認証  去石誠一 (週刊冷食タイムス:17/06/27号)

農水省は導入を推進

五輪や量販店の取り引き条件に凍菜業界は「当面静観」の構え

 農業生産工程管理(GAP=Good Agricultural Practice)の導入を巡って農産業界のみならず、食品業界にも様々な動きが表れつつある。GAPの認証は2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、選手に提供される食材の調達基準になっている。また最近では大手スーパーが野菜の取引条件にGAP認証を盛り込むなどの動きもある。野菜を原材料に使った加工食品メーカーや、冷凍野菜加工業者の大半は「まだGAP認証した原材料の使用を指定される例はない」とするものの、GAPの普及次第で「ユーザーによっては指定されるケースも考えられる」という見方もある。

GAP導入で生産物の安全確保

 GAPは@生産物の安全A環境の保全B労働の安全を確保するための取り組み状況を記録簿や掲示物によって確認・表示しながら、農産物(食品)の安全を確保し、より良い農業生産を実現する取り組み。

 農林水産省ではGAPの導入により「従業員の自主性向上」や「販売先への信頼(営業のしやすさ)」などの面で経営改善効果があることをアピールしている。農業の分野では「10年ほど前からGAPの存在が知られ始めている」(アジアGAP総合研究所)という。

 同省によれば、日本では約4500生産者(今年3月現在)がGAP認証を取得している。しかし日本全体でみれば、認証生産者は1%程度に過ぎず「約1カ月にわたる五輪大会中に提供する約1500万食を補うには足りていない」という見方が増えている。

残留農薬違反はドリフトが最多

 日本の農業でも残留農薬基準違反は発生しており、その原因トップは「周辺圃場や同一ハウス内の隣接作物からのドリフト」。次いで「適用外使用」、「使用基準違反」、「農薬散布機・タンク・ホースの洗浄不足や不洗浄」で過半数を超える。

 また農産物由来の病原菌による食中毒事故も多々発生している。2012年北海道の「白菜の浅漬け」から腸管出血性大腸菌0−157が検出された事件では患者169人・死亡8人と大きな被害が出た。この事件の汚染原因として「牛糞堆肥」が疑われている。

 野菜への異物混入や、農業による環境汚染、さらに農作業中の死亡事故は全産業平均と比べて高く、減少傾向にある建設業の約2倍に増えていることから、GAP導入を推奨する声が大きくなっている。

6割が取引上の参考にと捉える

 GAPのシンクタンク、認定NPO法人アジアGAP総合研究所のまとめによれば、GAPの取り組みを取引上の参考としている流通・加工業者は6.7%、これに「活用意向がある」55.0%を加えた「6割が前向きに捉えている」としている。

 著名な例では、CVSのローソンが全国のローソンファームでJGAPの導入を進めている他、JAおおいたではGAP研究会を立ち上げてJGAP団体認証を進めている。

 ただし「GAPを知っている消費者は9%とまだ少ない」(アジアGAP総合研究所)のが現状だという。農林水産省では中小企業に対するHACCP(食品製造過程の管理高度化)導入と、どうリンクしていくのが注目される。

 日本で冷凍野菜を扱うある企業はGAPについて、「必要性は認めるが、今後の行方は正直不明。大手メーカーはともかく、日本の7〜8割を占める中小企業にとって、認証取得は経済的な負担になる」と様子見の状態。

 一方、独自の「品質管理基準評価制度」を導入している任意団体、輸入冷凍野菜品質安全協議会は「この評価制度では冷凍野菜の製造工場と圃場に関しても品質、衛生、フードディフェンスまでを包括しているが、全体がどう動くか注視していく」としている。

日本のJGAPは海外でも実績

 日本で普及しているGAPは、一般財団法人日本GAP協会が運営母体の「JGAP」や、ドイツ発祥の「GLOBALGAP」がある。この他、各都道府県のGAP、JAグループのGAP、コカ・コーラグループのSAGPなど独自性の高いものもある。

 普及の進む「JGAP」と「GLOBALGAP」の内容は9割が重複したもので大差はないが、JGAPの方が認証費用は安く、個人経営の農場が導入しやすくなっている。JGAPは日本の他、韓国、台湾、ベトナムでも実績がある。

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