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今週の一本

●コスト増加が利益を圧迫  井出万寿男 (週刊水産タイムス:19/02/11号)

売上げ健闘も各社減益

水産大手5社の第3四半期

 大手水産各社の平成31年3月期第3四半期業績が出揃った。極洋が横ばいだった以外は各社とも売上げは前年を上回っているが、原料高や労働コストの増加でいずれも減益となっており、通期の行方が注目される。

マルハニチロ

 マルハニチロは、売上高が前年比1.0%増の7152億円、営業利益が8.8%減の200億円だった。

 漁業・養殖事業が重なる台風の影響で養殖クロマグロの出荷やカツオの取扱が減少。マグロ・カツオの魚価安も利益率を低下させた。

 水産商事は、主要魚種の多くが高値圏にあるなか、売上高は前年並みとなったが、魚価高や円安による調達コスト増加の影響で減益。荷受は台風の来襲など夏場に天候不順が続き、鮮魚の取扱高が減ったほか、冷凍魚の魚価高を売価に転嫁できなかった。

 海外ユニットは、タイでのペットフード事業、ニュージーランドでの操業漁船1隻追加が売上増に寄与したものの、ニュージーランド・豪州で主要魚種の漁獲が振るわなかった。

 北米ユニットは、アラスカのマスは貧漁だったが、助宗スリミ・フィレの効率的な生産と日欧米主体の順調な販売、エビ・タコなどの欧州での販売拡大により、増収増益となった。

 家庭用加工食品は、消費者の健康志向を背景にさば・さんま・いわしなどの青魚缶詰の需要増で増収。

日本水産

 日水は売上高5433億円で6.1%増収、営業利益は199億円で2.5%の減益となった。

 南米の鮭鱒養殖事業で、前年の稚魚のへい死の影響で販売数量が大幅に減少したが、生産コストの低減で減益幅を抑えた。

 加工・商事事業はスリミや飼料油飼の販売が好調に推移したものの、鮭鱒の販売数量の減少、エビの販売価格下落などにより増収減益となった。北米はカニの取扱いが減少したが、スリミや助子の販売価格上昇や労務コスト削減効果もあり増益となった。ヨーロッパも販売エリアが拡大した。

 食品事業は、冷凍食品の米飯や野菜、練り製品を中心に販売が伸長したが、スリミなど原料価格の上昇があった。

 チルド事業は、コンビニエンスストア業界の再編による供給店舗の増加に加え、おにぎり・麺・弁当類の販売が伸長した。

 ファイン事業は乳児用粉ミルクに添加するDHAなどの機能性原料の販売が国内外とも堅調に推移した。

 物流事業は営業再開した冷蔵庫もあり売上げは増加したもが、労務費や電力料などのコストが増加し、前年同期並みの利益。

極洋

 極洋は、売上高1978億円で前年比0.3%減、営業利益は32億8000万円で15.1%減となった。冷凍食品セグメントが増収、常温食品セグメント、物流サービスセグメントが増益。

 主力の水産商事セグメントは第3四半期で前期を上回る利益を計上したが、苦戦を強いられた上期の業績を補うまでに至らず、売上げ・利益ともに前年同期を下回った。

 冷凍食品セグメントは、水産冷凍食品事業で煮魚などの個食サイズの販売が伸長。調理冷凍食品事業ではカニ風味かまぼこや白身フライの販売が順調に推移。

 常温食品セグメントは珍味が貢献し増益。物流サービスセグメントは減収増益。

 鰹・鮪セグメントはクロマグロなど脂物製品やマグロタタキ、カツオ加工品の取扱いを伸ばした。養殖事業は完全養殖クロマグロをはじめ、安定出荷に努めた。海外まき網事業は売上げ・利益とも前年を下回った。

 通期は、売上高2670億円(前年比4.8%増)、営業利益48億円(同18%増)、経常利益46億円(同3.7%増)、当期純利益32億円(同0.3%減)を見込んでいる。

ニチレイ

 ニチレイは増収減益となった。売上高は主力の加工食品事業や低温物流事業が堅調に推移し、4456億円で前年比2.4%増となったが、加工食品事業の海外関係会社の業績影響などを吸収しきれず、営業利益は237億円(前年比7.3%減)にとどまった。

 水産事業は収益性に配慮した買付に徹したため減収。「えび」「貝類」の利益率は改善したものの「たこ」「魚卵」の調達コスト増加を吸収できず減益となった。

 低温物流事業は増収となったが、荷役作業コストなどの上昇で営業利益は前年を下回った。

東洋水産

 東洋水産は、売上高が3061億円で前年比2.2%増加したが、営業利益は198億円で11.2%減となった。

 水産食品事業は売上高231億円(前年比5.4%減)、セグメント利益2億5100万円(同29.2%減)の減収減益となった。鮭鱒、魚卵、サバなど海外魚種の継続的な魚価高騰、日本近海のサバやイカの漁獲不振が影響。鮭鱒・魚卵・マグロ製品を中心に販売数量が減少した。

 冷蔵事業は、昨年3月に操業を開始した平和島冷蔵庫が順調に稼働していることに加え、積極的な営業活動で冷凍食品を中心とした取扱いや通関・運送など付帯業務が堅調に推移したが、人件費が増加し、増収減益となった。

 海外即席麺事業は売上高が7%増増加したが、セグメント利益は19%減少した。

 国内即席麺事業はカップ麺「マルちゃん赤いきつね」の発売40周年プロモーションが奏功。

 低温食品事業は増収減益。原材料の高騰が響いた。

 加工食品事業は増収となったが、セグメント損失5億9000万円(前年はセグメント利益3億2700万円)を計上。新工場稼働に伴う減価償却費が増加した。

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