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今週の一本

●存在感増す水産EC  松田陽平 (週刊水産タイムス:20/08/03号)

食品ECサイトの草分け、販売依然好調

 2001年4月に設立された食文化(東京都中央区、萩原章史社長)は、食品ECの黎明期でもある01年8月に「うまいもんドットコム」(以下「うまいもん」)、04年4月に「築地市場ドットコム」(現・豊洲市場ドットコム)の運営をそれぞれ開始し、20年目を迎えている。コロナウイルスの影響で食品関連の通販の売り上げが好調に伸びる中、同社運営の2つのサイトも例に漏れず販売は好調に推移している。

食文化の
八尾昌輝シニア産地プロデューサー
 コロナウイルスの影響について、同社豊洲市場ブランド推進部Eコマース課の八尾昌輝シニア産地プロデューサーは「4月末から5月中旬までがピークで、売上高は前年同期の約5倍に増えた。7月に入り勢いはピーク時と比べて衰えたが、前年同期の約2倍を維持している」と説明する。
 「うまいもん」「豊洲市場ドットコム」ともに水産物だけでなく、青果・果物、畜肉などを販売している。コロナウイルス感染拡大以前の売上げの割合は、青果・果物6割、水産品3割、その他1割だったが、現在は青果・果物4割、水産4割、畜肉2割になった。
 水産品が伸びた一番の要因は、業務用の箱うにがかなりの数量販売できたため。
 「安くなっているとはいえ、1枚あたり約6000円(定価は約1万円)の箱うにが4月3日〜25日の約3週間で3000箱も売れた」(八尾氏)。きっかけは市場で流通が滞った食材を販売していた「豊洲市場ドットコム」がテレビで取り上げられこと。SNSなどで情報が拡散し、サイトがパンクするほど閲覧が増えた。
 箱うに以外では、マグロ(サクやブロック)やウナギ蒲焼き、鮮魚詰め合わせセット、塩いくら(1s)、業務用スモークサーモン、活伊勢えびなどが良く売れたという。

供給量が少ない食材も扱うのが強み

 「うまいもん」「豊洲市場ドットコム」の他のECサイトとの違いについて八尾氏は「供給量が少ない商品でも扱うことと、スピーディーに扱うところ。例えば、おいしくて価値があるのに10個しか採れないリンゴがあった場合、通常の流通には乗らないが、当社サイトでは販売する。必ずどこかにほしい人がいるから。そういった食材を楽しみにサイトを訪れる人も多い」と説明する。
 他では扱わない食材を発掘するのが同社の強み。ゼロからブランディングした成功事例が、究極の蜜入りりんご「こみつ」(青森県産)。 
 以前は50箱しか売れなかったりんごが、今では1万箱以上売れるヒット商品になった。
 「豊洲市場の中に拠点があるため、卸・仲卸や生産者、メーカーから様々な情報が集まってくる」(同)。
 高所得者層を主なターゲットにしている「うまいもん」の現在のユーザー数は約30万人(50〜60代の男性中心)。豊洲市場に集まるこだわり食材を提供する「豊洲市場ドットコム」のユーザーは約20万人(30〜40代中心、男女ほぼ半々)。「コロナの影響で注目が高まり、約2カ月で直営の2サイトのユーザー数が合計で数十万人増えた」(同)。

メールマガジン活用、魅力伝える

 「うまいもん」「豊洲市場ドットコム」の特徴は、仲卸が目利きしたこだわりの水産物などを豊富な品揃えで提供しているところ。
 「市場人のおすすめやこだわり、食材の魅力を様々なコンテンツで紹介し、魚市場で買い物をしているような非日常感を楽しめる」。
 産地情報や生産者のこだわりを伝えるために活用しているのが、ほぼ毎日ユーザーに配信しているというメールマガジン。
 「メールマガジンを活用することで、産地情報や食材のストーリーを伝えることができる。リピーターも多く、一度気に入って頂くと何度も購入して頂ける」。
 オリジナル商品なども開発している。「うまいもんドットコム」で毎年販売し、すぐに売り切れる人気商品が、1尾1sもある巨大な三陸産マサバを原料にしたオリジナル・サバ缶詰。缶詰にしてから、1年間熟成させている。3缶入り、税込4280円。

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