●水産タイムズ社65周年記念対談多様で持続可能な水産業にポストコロナの新たな社会へ 日本を代表する大手水産会社の社長を務めた垣添直也氏(日本水産)と久代敏男氏(マルハニチロ)。現在、垣添氏は(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会の会長、久代氏は(一社)日本食品認定機構の理事長として、長年にわたる経験や知見をもとに「車の両輪」として日本の水産業界の底上げに尽力している。「水産エコラベル」「輸出認証」の必要性や価値観を社長時代にどう感じていたか、コロナ禍の下で水産業界が生き残り、活路を切り拓くためには何が必要か――などを率直に語り合ってもらった。
力を合わせて業界の底上げを
垣添 社長時代は団体の会合などで顔を合わせることがありましたが、対談という形でゆっくり話をするのは初めてではないでしょうか。楽しみにしていました。 久代 垣添さんがMELの会長になって4年。当初の目標としてきたGSSI承認を果たし、少しは肩の荷が下りたのではないですか。 垣添 水産エコラベルでは世界で9番目。アジアでは初です。承認を得るまで苦労しましたが、今後は継続するための審査をクリアする必要があります。これがなかなか簡単ではありません。 久代 苦労は続きますが、世界に通用する水産エコラベルとなったことは、大きな一歩に間違いありません。その檜舞台となるべき東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルスの影響で延期になったことは残念でしたが。 垣添 東京オリパラの食材調達基準に照準を当ててきたのは確かですが、GSSIの承認はMELが世界標準のエコラベルとなる上で避けて通れない道でもあります。これまでの取り組みは決して無駄にはなっていません。 さらに言えば「水産物の輸出促進」「SDGs実現の貢献」という意味からも、MELの使命は今後も何ら変わることはありません。水産物を持続的に利用するという考え方を日本社会に定着させるための活動は、息の長い取り組みであると覚悟しています。 久代 マルハニチロの社長を辞めて6年半。じっと静かに生活していたのですが(笑)、昨年12月に大日本水産会の白須敏朗会長からJFCOの話をいただきました。一度はお断りしたのですが、「少しでも長年お世話になった業界への恩返しになれば」との思いで、お引き受けすることにしました。 日本の水産業界の底上げのためには、日本水産とマルハニチロが力を合わせ、手を携える部分が必要であることは社長時代から感じていました。業界のためにと、MELで精力的に動いておられる垣添さんを見るにつけ、「私も頑張らなくては」と意気に感じた次第です。 垣添 それは嬉しいですね。 久代 4月に事務所を開設しました。新型コロナの影響で動きは制限されましたが、徐々に事業は動き始めました。MELに比べれば、ようやく緒についた段階ですが、日本産水産物の輸出促進と拡大のため、これから本格的に動き出したいと思っています。 垣添 MELもHACCPも社会的に大きな使命がある。「車の両輪」だと思いますよ。 久代 新型コロナの感染状況、その後の影響についての見極めは難しいですが、輸出拡大の必要性、食品衛生法改正に伴うHACCP制度化などで、HACCP認定のニーズは高まっていくに違いありません。 大日本水産会のHACCP講習会や現地指導と連携し、認定施設のさらなる拡大に取り組むつもりです。現在、米国を対象とした登録認定機関として認定を受けていますが、EUをはじめ、他の地域についても登録認定機関としての登録を進めたい。そのためにも審査員の拡充など、組織体制の整備に取り組む必要があります。 社会と消費者に役立つ「出発点」 垣添 MELは昨年、FAO(国連食糧農業機関)のガイドライン、GSSIの基準に適合していることが承認されましたが、GSSI承認が目的ではありません。MELが認証取得者、社会と消費者のお役に立つための出発点であると思っています。 底力と可能性持ち合わせる 久代 これからは新型コロナとどう向き合っていくかも避けて通ることのできない大きなテーマとなりますね。 |
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