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今週の一本

●放流ウナギは天然に勝てない/中央大ら  松田陽平 (週刊水産タイムス:22/07/11号)

養殖過程で競争能力低下

 中央大学を中心とした研究グループは効果的なウナギの放流手法を検討するため、天然ウナギと放流されるウナギの関係についてこのほど研究を行い、その結果を2つの論文として発表した。研究結果によると、日本で一般的に放流されている養殖ウナギは飼育の過程を通じて種内競争の能力が低下しており、そのことが放流後の生き残りや成長に悪影響を与えている可能性があることなどがわかった。
 ニホンウナギを増やすことを目的に、日本各地でウナギの放流が行われているが、放流効果の検証は進んでいない。中央大学研究開発機構の脇谷量子郎機構助教(現在は東京大学大気海洋研究所特任研究員)、青森県産業技術センター内水面研究所、鹿児島県水産技術開発センター、神戸大学、水産研究・教育機構、福井県農林水産部水産課、中央大学法学部の海部健三教授からなる研究グループは、天然ウナギと放流されるウナギの関係について「行動観察」「混合飼育」「標識放流」の3つの手法を通じて研究した。
 「行動観察」では、ほぼ同じサイズ(全長差5%未満)の天然ウナギと養殖ウナギを1個体ずつ小型水槽に入れ、噛みつき行動とパイプ(隠れ場所)の占有率を基準に行動を解析した。その結果、天然ウナギの1時間あたりの噛みつき回数(5.7回±3.1回)は、養殖ウナギの回数(0.44回±0.45回)を大きく上回った。パイプ占有については、観察した839回のうち、666回(79.4%)で天然個体が占有していた。

パイプを設置した水槽に
ウナギを入れて観察した
混合飼育した養殖ウナギの生存率4割

 「混合飼育」では、ほぼ同じサイズの天然ウナギと養殖ウナギを約2年間、同じコンクリート水槽で混合飼育した。その結果、天然ウナギと混合飼育した養殖ウナギの生存率(40%)は、養殖ウナギのみで飼育した場合の生存率(90%)よりも有意に低い値を示した。また、成長速度(1日あたりの体重増加量)は養殖ウナギのみで飼育した場合よりも、混合飼育した養殖ウナギで有意に低い値を示した。
 「標識漂流」では、天然ウナギの生息密度が異なる4つの河川で養殖ウナギを用いた標識放流調査を行った。その結果、天然ウナギの生息密度の高い河川では、放流ウナギの成長が遅いことが示された。放流したウナギの個体数は2年間で94.9%減少した。
 一連の研究から、飼育を通じて養殖ウナギの種内競争の能力が低下し、天然ウナギに対して劣位となることが明らかになった。このことから、天然ウナギが生息する水域に養殖されたウナギを放流することで、放流効果が低下する可能性が示された。

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