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今週の一本

●海苔が記録的不作  後藤美緒 (週刊水産タイムス:23/02/06号)

海の栄養塩不足で50億枚割れも

 今シーズンの海苔養殖が記録的な不作に陥っている。栄養塩不足や海水温の上昇などで品質が低下するとともに、生産枚数が減少し価格が高騰している。ニコニコのり(大阪市)の白羽清正社長は「このままでは海苔の消費が減少し、日本の伝統食品産業である海苔が失われかねない」と、危機感を募らせている。

白羽社長
ニコニコのり白羽社長「伝統産業の危機」

 同社は春季新製品発表会を1月30日に都内で開き、新製品についてPRするとともに、今シーズン(2022年12月〜)の海苔養殖の状況を説明した。
 記録的不作の要因の一つは、有明海における10月以降の降雨が平年の3〜4割と非常に少なかったために海の栄養塩が不足したこと。さらにシーズンの早い段階で赤潮が発生して栄養塩不足に拍車をかけた。
 加えて今シーズンは海水温の高い状況が続き、海苔の品質が低下するとともに、植物プランクトンが増殖して海の栄養分がさらに減少する悪循環を生み出している。
 これを背景に、1月末までの海苔の生産枚数は昨年同期比4割減の14億4400万枚にとどまっている。1枚当たりの平均単価は16%増の16円だが、「これまでは処分されてきたような色落ちした海苔にも値段がついている」(白羽社長)ことから、昨年と同じグレードの海苔で比較すると7円〜15円も高くなるという。
 2018年以降、4期連続で70億枚を割り込んだ海苔の生産枚数だが、今シーズンは50億枚を割り込む可能性も見えてきた。

韓国産原料の海苔製品を拡充

 ニコニコのりでは「国産海苔だけでは賄えない」と、他社に先駆けて韓国産原料を使用した海苔製品を拡充してきた。今後も安定的な製品供給をめざして原料確保に取り組んでいく。
 併せて、2023年は@社会課題の解決(「魚庭(なにわ)の海」再生プロジェクトに協力)A産学連携(大阪芸術大学と3年間の包括連携協定を締結)B中食事業の展開(笑屋(にこや)2号店を開店)――に取り組み、「日本の海苔産業を絶やさないよう努めていく」(白羽社長)。

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