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今週の一本

●水産白書、食料安全保障に焦点  後藤美緒 (週刊水産タイムス:23/06/05号)

ロシア・ウクライナ情勢、急激な円安で脆弱な供給体制浮き彫りに

 水産庁が2日公表した令和4年度水産白書では、水産業における食料安全保障について特集している。ロシアによるウクライナ侵攻や急激な円安により、輸入に頼る日本の脆弱な食料供給体制が顕在化したことを背景に、良質なたんぱく源としての水産物の重要性と食料安全保障の強化が急務であることを記している。

日本の水産物輸入先国・地域
日本漁業とロシアの関係を解説

 特集の第1節では日本が国内で消費される魚介類の多くを輸入に頼っている状況を明らかにしている。中国、チリ、ロシア、米国、ノルウェーの5カ国に依存している構造を転換し、輸入の安定化や多角化、国内生産の増加が重要としている。
 そのうえで、ロシア・ウクライナ情勢下での日本の水産業について、ロシアからの水産物輸入の現状とロシアへの制裁、ノルウェー産生鮮サーモンの輸入減少や輸入水産物の価格上昇、燃油や養殖用配合飼料の高騰といった動きを整理。併せて、価格上昇に対する国の支援策も示した。海外産のサケ・マス類から国産原料に切り替えた王子サーモンの取り組みを事例として紹介している。
 北西太平洋における日本漁業とロシアの関係についてもていねいに解説した。ロシア・ウクライナ情勢下でも、水産資源の適切な管理や日本の漁業活動に係る権益の維持・確保のために、戦略的に対応していく必要性を記述した。

食料安全保障強化へ制度整備

 第2節では水産物の食料安全保障に向けた新たな動きをまとめた。食料・農業・農村基本法と水産基本法に規定されている食料の安定供給の確保について説明するとともに、農林水産省が公表している食料の安定供給に関するリスク評価を示している。
 今後、水産基本計画に基づき資源管理の徹底と成長産業化に取り組み食料自給率の向上を図ること、昨年6月に改訂した「活力創造プラン」や12月に策定した「食料安全保障強化政策大綱」のもと、必要な施策を推進することを記した。

コラムに「速筋タンパク」「さかなの日」

 令和3年度以降の我が国水産物の動向については▽需給・消費▽漁業・養殖業の生産や経営、就業者、技術開発、漁協、水産物の流通・加工の動向▽水産資源と漁場環境▽国際情勢▽漁村づくり▽東日本大震災からの復興――について、事例やコラムを織り交ぜながらまとめた。漁村づくりの項目では漁村活性化に向けた取り組み「海業」について解説している。
 水産物の健康効果としてニッスイの「速筋タンパク」の取り組み、消費拡大に向けた水産庁の「さかなの日」をコラムに取り上げた。そのほか、巻き網漁業の船団操業の効率化や、漁業者による海難救助活動など、漁業者による取り組みにもスポットを当てている。

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