●水産業の継承へPTAと連携、520人に試食を 国内の水産業は海水面温度の上昇やコスト高騰など様々な課題を抱えている。一方で海外市場の拡大や政府が主導する「さかなの日」の始動など明るい話題も決して少なくない。高い潜在能力を有する国内水産業を次世代に継承するための正念場ともいえる。今年の暑中特集では「水産業の継承」をテーマとし、国内の「魚食普及」「後進育成」「海洋環境の保全」の取り組みに焦点を当てた。水産業を担う後継者を育て、水産業を支える消費者を増やす活動が輝かしい未来を切り開くと期待したい。
水産庁長官任命のお魚かたりべとしても活躍する早武忠利課長は「学生の存在も大きいが、裏方として調理を行ったり、猛暑下での子どもの体調を気遣うPTA役員の存在なくしては500人規模の試食の実現はなかった」と強調したうえで、「PTA行事の企画・運営に苦慮している役員の役に立てる魚食普及プログラムのさらなる充実に注力していきたい」と意気込みを語った。 山瀬センター長は主に座学を担当。日本の漁業や漁獲される魚、身近な水産加工品などについてスライドや動画を活用したり、クイズを交えながら、ていねいに説明した。子どもたちは熱心に説明に聞き入り、講座の後の質疑応答では時間が足りなくなるほど多くの質問を投げかけていた。 座学は学年や社会のニーズに応じて内容を変えており、近年では食育や栄養学、SDGs(持続可能な開発目標)に関する内容も組み込んでいる。山瀬センター長は減少傾向にある天然資源に触れつつ、「魚介類をおいしく無駄なく食べて、資源環境の保全に貢献してほしい」と呼びかけた。 一本釣り体験では実物のカツオと同重量(3s)の模型を使用し、低学年は4〜5人で、高学年は1人で大物の釣り上げに挑戦した。多くの児童が苦戦する中、竿のしなりをうまく利用し単独で成功する女子児童もおり、大きな歓声が上がった。 解剖する魚介類は低学年・中学年・高学年に分けて、イカ・エビ・タイの3種類を用意。包丁を使わずにできる調理法を通して、生態や各組織の役割を紹介した。安全性と簡便性を追求したイカのさばき方に感心するPTA役員もいた。 夏休みの自由研究の題材として どの学年も大いに盛り上がった一方で、「他の学年の魚介類のほうが面白そうでズルい」という意見も多く寄せられたという。魚食普及センターでは、こういった事態も想定して、家庭でも解剖が可能となるオンラインコンテンツを制作してきた。今回の実体験で興味を抱いた児童たちが夏休みの自由研究の題材として魚の解剖を選択してくれることが期待される。 【魚食普及推進センターとは?】 魚食普及推進センターは「おさかな普及協議会事務局」として1977年に発足。講演会や料理コンクール、メディアでの宣伝、料理冊子の作成や魚食普及貢献者表彰などを実施してきた。2011年6月に現在の名称に変更。明確に事業内容を掲げた部署として体制を固め、「おさかな学習会」を主軸とした魚食普及活動を展開している。オンラインイベントの企画・支援、各種イベントへの出演・出展、魚の生態が学べるぬりえの製作なども手掛ける。近年はより効率的に魚食の魅力を広めるため、専門的な知識を有した指導者なしでも学べるコンテンツの制作にも力を入れる。 |
||||||||||||